Last Updated on 2025年10月4日 by 勝
自社商品の回収について質問です
倒産の事実が判明してから、自社が納入した商品を先方の倉庫から、先方の社員の了解を得て回収してくることは違法でしょうか。
納入した商品を、倒産の事実が判明してから、先方の社員の了解を得たとしても、回収してくる行為は、法的なリスクを伴うので、避けるべきです。
特に、取引先が破産手続開始決定を受けている場合、その行為は違法となる可能性が高いです。
法的な問題点を「刑事上の問題」と「民事上の問題(否認権)」に分けてご説明します。
刑事上の問題(窃盗罪などのリスク)
たとえ納入した商品であっても、既に相手方に引き渡され、相手の倉庫に置かれている商品は、法的には相手の管理下にある財産と見なされます。
- 無断での回収: 相手の同意なく勝手に商品を持ち出せば、窃盗罪に問われる可能性があります。
- 「社員の了解」の効力:
- 倒産手続きが進んでいる場合、会社の財産の管理権限は破産管財人に移っています。
- 一社員の「了解」は、会社の正式な意思決定や破産管財人の権限に基づくものではないため、法的な効力は極めて低く、刑事責任を免れる根拠としては不十分です。
- 形式的に了解を得ていたとしても、財産の不当な取得と見なされるリスクは残ります。
民事上の問題(破産管財人による否認権)
この場合、破産法上の「否認権」の対象となる可能性が高いです。
倒産手続き(特に破産手続)が開始されると、すべての債権者は公平に扱われなければなりません。一部の債権者だけが個別に財産を回収(弁済を受ける)する行為は、「抜け駆け的な回収」(偏頗弁済)として厳しく禁止されています。
項目 | 詳細 |
否認権 | 破産管財人には、破産手続開始前または開始後に、他の債権者を害する行為(例:特定の債権者への優先的な弁済)を取り消し、回収した財産を破産財団(全債権者のための財産)に戻させる権限があります。 |
リスク | あなたが商品を回収した行為は、破産管財人から否認権を行使され、回収した商品を破産管財人に返還するよう求められます。応じなければ裁判を起こされることになります。 |
結論 | 一時的に商品を回収できても、最終的に法的に認められず、無効となる可能性が高いです。 |
正当な回収手段(取戻権・別除権)
あなたが商品を回収する正当な権利を持つ可能性があるのは、以下のいずれかの法的な権利がある場合です。
- 取戻権(所有権に基づく返還請求)
- 別除権(動産売買先取特権)
ただし、それぞれ条件があり、法的な手続きが必要なので、弁護士に相談することをお勧めします。
いずれにせよ、倒産手続きが始まった後は、破産管財人と交渉して正当な手続きを通じて行う必要があり、自社の判断で勝手に回収することは避けるべきです。速やかに弁護士に相談し、自社の取るべき対応を確認してください。