取引先が倒産した!債権回収はできる?

営業の事務

Last Updated on 2025年10月4日 by

倒産判明後の初期の対処

取引先が破産手続きを開始したことが判明してからの流れは次のようになります。

  1. 債権届出の準備と提出:
    • 裁判所から「破産手続開始決定通知書」などの書面が届きます。これには、あなたの会社が取引先に持っている債権(売掛金など)を裁判所に届け出るための期限が記載されています。
    • 記載された期限までに、破産手続開始決定通知書に同封されている書類に基づき、債権の額や発生原因などを正確に記入して裁判所に提出しなければ、配当を受ける権利を失う可能性があります。

破産管財人とは?

破産管財人は、裁判所によって選任される弁護士で、破産手続きにおいて非常に重要な役割を果たします。

破産管財人の役割

破産管財人の主な役割は、破産者の財産を公正に管理・換価(現金化)し、債権者に平等に分配することです。

債権者としての接点

破産管財人は、破産した会社の代表者に代わって、債権者への対応窓口となります。債権届出の内容確認や、相殺に関する連絡など、破産手続きに関する実務的なやり取りは、基本的に破産管財人と行うことになります。

債権者集会について

債権者集会は、破産管財人が債権者に手続きの状況を報告し、意見を聴取するために開かれる集会です。

債権者集会の目的と内容

債権者集会は、破産手続きの透明性を確保し、債権者の意見を反映させるために設けられています。

目的の種類主な内容
財産状況報告集会破産管財人が、破産に至った経緯、現在の財産の状況、換価(現金化)の進捗、今後の見通しなどを報告します。これが最初の集会となることが多いです。
廃止意見聴取集会破産手続きを終了させる(廃止する)にあたって、債権者からの意見を聴取します。
計算報告集会破産管財人の任務終了時に、財産の収支計算を報告します。

債権者集会への対応

  1. 出席の要否: 債権者集会は、債権者が必ず出席しなければならない義務はありません。特に債権額が小さい場合や、遠方の場合は出席しないことも多いです。
  2. 出席する場合: 報告を聞き、不明点や疑問点があれば破産管財人に対して質問することができます。
  3. 実情: 多くの事案では、債権者が多数出席することは稀で、集会自体も破産管財人による事務的な報告が中心となり、短時間で終わることが多いのが実情です。
  4. 注意点: 破産管財人の報告内容から、配当の見込み今後のスケジュールを把握できます。

債権回収と最終的な結末

倒産手続きにおいて、あなたの会社が回収できる債権は「配当」という形で支払われます。

  • 配当: 破産管財人が換価した財産から、税金などの優先債権を差し引いた後、残った金銭が債権額の割合に応じて債権者(破産債権者)に平等に分配されます。
  • 回収可能性: 財産がほとんどない場合や、担保権者が優先的に回収する場合など、配当が全くない、あるいはごくわずかで終わることも多くあります。

破産手続きが終了し、配当が実施されると、残りの債権(回収できなかった部分)は、相手の会社が消滅することで法的に回収が不可能となります。

このような手続きは複雑なため、取引先の倒産が判明した際は、速やかに弁護士などの専門家に相談し、適切な手続き(債権届出、相殺の検討など)を行うことを強くお勧めします。

破産手続きにおける回収の現実

取引先が倒産した場合、債権(売掛金など)の回収はほとんどできないと考えるのが現実的です。

特に「破産手続き」に入った場合、回収できるのはごく一部、あるいはゼロになるケースが多数を占めます。

その現実的な理由と、例外的に回収できる可能性のある手段について解説します。

破産手続きにおける回収の現実

回収率の目安

  • 多くの倒産事案では、一般債権者への配当率(回収率)は、0%〜5%程度となることが一般的です。
  • 破産する企業は、既に借金が返せない状態(債務超過)にあるため、財産を全て換金しても、経費や優先的に支払われる債権(税金や従業員の給与など)に充当されると、一般債権者に回るお金はほとんど残らないためです。

財産分配の優先順位

倒産手続きで財産が換金された場合、支払いは以下の優先順位で行われます。あなたの会社の売掛金は、通常「破産債権」として、最も下の順位になります。

  1. 財団債権(優先度:高): 破産手続きを進めるための費用(破産管財人報酬、裁判所費用など)、一部の従業員給与・退職金、特定の税金など。
  2. 別除権: 担保権者(抵当権を持つ銀行など)が、担保としている財産から優先的に回収する権利。
  3. 破産債権(一般債権、優先度:低): あなたの会社の売掛金など、一般的な取引債権。

一般債権者に配当が回るのは、上位の支払いが全て済んだ後の残余財産がある場合のみです。

回収の可能性を高める例外的な手段

「ほぼ回収できない」のが現実ですが、以下の方法に該当する場合は、全額または一部を回収できる可能性が高くなります。

相殺(最も有効な手段)

  • あなたの会社が、倒産した取引先に対して債務(買掛金など)を負っている場合、あなたの会社の債権(売掛金)と対当額で相殺できます。
  • 相殺は、倒産手続きの中でも原則として可能であり、実質的に債権を回収したのと同じ効果が得られるため、最優先で検討すべき手段です。
    • (例)売掛金100万円、買掛金30万円の場合、30万円を相殺し、70万円を破産債権として届け出ます。

担保権・保証人

  • 取引時に、連帯保証人を設定していた場合、その保証人に対して全額を請求できます。
  • 担保権(不動産や動産、債権譲渡担保など)を設定していた場合、破産手続きとは関係なく、担保権を実行して回収を図ることができます(別除権)。
  • 動産売買先取特権(納入した商品代金に対する優先弁済権)も、別除権として扱われる可能性があります。

所有権留保特約

  • 売買契約で「代金が完済されるまで、商品の所有権は売主にある」という所有権留保特約を交わしていた場合、その商品はまだ相手の財産になっていないため、破産管財人に商品の返還(取戻し)を請求できる可能性があります。

まとめ

取引先の倒産が判明したら、「回収は諦めて損失処理をする」という前提に立ちつつも、弁護士などの専門家へ相談し、上記のような回収の可能性がないかを迅速に調査・検討することが、現実的な最善策となります。

特に、債権届出期限相殺の可否については、早期に確認・対応することが不可欠です。