労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)は、2026年1月1日から段階的に施行されます。施行期日ごとに整理し、改正項目とそのポイントを説明します。
2025年(令和7年)5月14日施行済
注文者等による配慮義務
注文者等(元請事業者など)に対し、作業場所や作業内容に応じて、個人事業者等の安全と健康を確保するための必要な措置(安全教育、危険情報伝達、危険場所への立入制限など)を講ずることが義務付けられました。
労働安全衛生法第3条第3項に規定されている注文者などへの注文時の施工方法や工期などに対する配慮規定について、こうした規定が建設工事以外の注文者にも広く適用されることを明確化したものです。
2026年(令和8年)1月1日施行
特定自主検査及び技能講習の不正防止対策の強化
特定機械(フォークリフト、クレーンなど)の特定自主検査や、運転に必要な技能講習について、不正な修了証の交付を禁止し、不正があった場合の回収命令や欠格期間の延長などが規定されます。制度の信頼性向上と現場の安全確保が目的です。
2026年(令和8年)4月1日施行
特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し
危険な作業を必要とする特定機械等(ボイラー、クレーンなど)に対して義務付けられている製造
許可や製造時等検査などの制度について、見直しがあります。
混在作業場所における元方事業者等への措置義務対象の拡大
複数の事業者が混在して作業する場所(建設現場など)において、元方事業者等が講ずべき措置の対象が、請負人の労働者だけでなく、個人事業者等にも拡大されます。
営業秘密である成分に係る代替化学品名等の通知
化学物質の譲渡・提供者に対し、営業秘密である成分について、労働者の健康障害を防止するために、必要に応じて代替の化学品名や情報を通知することが義務付けられます。
高年齢労働者の労働災害防止の努力義務
高年齢労働者の労働災害を防止するため、事業者は、高齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理、健康管理の強化などの必要な措置を講ずることが努力義務となります。
2026年(令和8年)7月1日施行
新規化学物質関連手続きの電子申請原則義務化
新規化学物質の届出など、一部の手続きについて、電子申請が原則として義務化されます。施行日2026年7月1日ですが、2025年1月1日から電子申請が可能になっています。
2026年(令和8年)10月1日施行
個人ばく露測定の精度担保
有害な化学物質にさらされる労働者の個人ばく露測定について、作業環境測定の一つとして位置づけ、測定の精度を担保するための措置が講じられます。
2027年(令和9年)1月1日施行
個人事業者等の業務上災害報告制度
個人事業者等の業務上災害が発生した場合、注文者等に対し、災害発生状況などを厚生労働省へ報告させることができる制度が創設されます。
2027年(令和9年)4月1日施行
個人事業者等自身への義務付け
個人事業者等自身に対して、労働者と同一の場所において作業を行う場合に、①構造規格や
安全装置を具備しない機械などの使用の禁止、②特定の機械などに対する定期自主検査の実
施、③危険・有害な業務に就く際の安全衛生教育の受講などを義務付けられます。
作業場所管理事業者への連絡調整措置の義務付け
作業場所管理事業者(仕事を自ら行う事業者であって、当該仕事を行う場所を管理するものをいいます。)に対して、その管理する場所において、自社または請負人の作業従事者のいずれかが、危険・有害な業務を行う場合に、災害防止の観点から、作業間の連絡調整等の必要な措置を講ずることが義務付けられました。
施行日未定
ストレスチェック制度の全事業場義務化
現在、常用労働者数50人未満の事業場では努力義務となっているストレスチェックの実施および高ストレス者への医師による面接指導が、すべての事業場で義務化されます。
公布後3年以内に政令で定める日から施行されます。
危険性及び有害性情報の通知制度の履行確保
化学物質の譲渡・提供時における危険性及び有害性情報の通知(SDS:安全データシートの交付)の履行確保のため、通知義務違反に対する罰則が新たに設けられるとともに、通知事項を変更した場合の再通知が義務化されました。
公布後5年以内に政令で定める日から施行されます。
これらの改正に対応するため、事業者は、社内規程の整備や実施体制の構築、化学物質管理体制の見直しなどを早期に進める必要があります。

