評価を賞与に反映する

評価制度

評価制度を実施している場合は、評価結果を賞与の支給額に反映させます。一般的な方法を紹介します。

評価係数を用いた計算

簡便なので一般的に普及しているのは、基本となる賞与額に個人の評価に応じた評価係数を掛けて支給額を決定する方法です。

個人の賞与支給額= 基本給×基本支給月数×評価係数

  • 基本給 ×基本支給月数:
    • 会社の業績や世間相場などを考慮して、全員に支給されるベースの賞与額(またはその計算式)を定めます。賞与は基本給の何か月分というやり方です。
  • 評価係数(査定率):
    • S, A, B, C, D などの評価ランクごとに、異なる係数(例: S=1.5, A=1.2, B=1.0, C=0.8, D=0.5)を設定します。
    • この係数をかけることで、評価が高い人には基本額より多く、低い人には少なく支給され、評価結果が反映されます。

ポイント制を用いた計算

ポイント制による賞与の支給額反映は、会社の賞与原資を、従業員が獲得した評価ポイントの総数で配分する仕組みです。会社にとって支給可能な賞与原資を先に決定するので、会社としては総額をコントロールしやすいメリットがあります。

具体的な計算の例と仕組みを解説します。

ポイント制の基本的な仕組み

会社の業績や世間相場などを考慮して、支給可能な賞与総額(支給原資)を決定します。

決定した総額を各社員に配分する方法は下記のとおりです。

  1. 社員の等級、役職、評価ランクなどに応じて、それぞれにポイントを割り当てます。
  2. 全社員の合計ポイントと賞与原資の総額から「1ポイントあたりの単価」を計算します。
  3. 個人の賞与支給額は、個人の獲得ポイント×「1ポイントあたりの単価」で決定されます。

ポイント配分表

ポイントの割当は、「ポイント配分表」によります。

下の表は、5つの資格等級(1級~5級)と5段階評価(S、A、B、C、D)を組み合わせた場合の、賞与へ反映させるための「ポイント配分表」の例です。

この例は、上位等級ほど基本ポイントが高く、かつ評価ランクが高いほどポイントが高くなるように設計されています。

資格等級別・評価ランク別 ポイント配分表(仮の例)

資格等級S評価 (最高)A評価B評価 (標準)C評価D評価 (最低)
5級 (管理職相当)4538302215
4級 (中堅層)3529231712
3級 (一般社員)2824201610
2級 (若手・初級)201816148
1級 (新入社員)151413127

この配分表のポイント

  1. 等級によるポイントの差:
    • 等級が上がる(5級に近づく)ほど、同じ「B評価」(標準的な評価)であっても付与されるポイントが高くなります。これは、等級が上がるほど担う責任や期待役割が大きいことを反映しています。
    • 例: 5級B評価 (30pt) vs. 3級B評価 (20pt)
  2. 評価によるポイントの差:
    • 同じ等級内では、S評価とD評価の間でポイントに大きな差を設けることで、個人の成果や貢献度を賞与に明確に反映させることができます。
    • 例: 4級ではS評価 (35pt) とD評価 (12pt) の間で23ポイントの差があります。
  3. B評価を基準に設定:
    • 多くの場合、「B評価」が標準的な成果(期待通りの役割を果たした)と見なされるポイントとして設定されます。このB評価を基準に、上下の評価のポイント差をどう設定するか(評価のメリハリのつけ方)が重要になります。

具体的な計算例

ここでは、例に示した「ポイント配分表」によらず、さらに簡略化した数字を仮に用います。等級は同じとします。

項目S評価 (Aさん)B評価 (Bさん)D評価 (Cさん)
付与ポイント30ポイント20ポイント10ポイント

ポイント単価の決定

項目金額またはポイント数
賞与原資の総額6,000,000円
全従業員の獲得ポイント総数A(30) + B(20) + C(10) + …(他の社員の合計ポイント) = 3,000ポイント
1ポイントあたりの単価6,000,000円÷3,000ポイント = 2,000円/ポイント

個人の賞与支給額の計算

上記の1ポイント単価(2,000円)を使って、各従業員の賞与額を計算します。

従業員獲得ポイント計算式賞与支給額
Aさん (S評価)30ポイント30×2,000円60,000円
Bさん (B評価)20ポイント20×2,000円40,000円
Cさん (D評価)10ポイント10×2,000円20,000円

この例では簡略化のため、基本給連動の固定支給部分は考慮せず、評価に基づく加算部分のみをポイントで計算しています。実際には、この計算で算出した評価連動額に基本給連動額を加算して総支給額を決める形が多いです。

ポイント制のメリット・デメリット

区分メリットデメリット
会社側1. 原資のコントロールが容易: 賞与原資の総額を先に決めるため、業績に応じて人件費を調整しやすい。
2. 評価差をつけやすい: 評価ポイントの設定次第で、貢献度の高い社員に多くの報酬を集中させられる。
1. 制度設計が複雑: 役職や評価ランクごとのポイント設定に手間がかかる。
従業員側1. 評価の透明性: 自身の評価が明確な点数(ポイント)で示されるため、納得感が得られやすい。
2. 貢献度の可視化: 頑張りがポイントとして明確に反映されるため、モチベーションにつながる。
1. 計算が不透明に感じる場合: 1ポイント単価の算出過程(全社ポイント総数)が理解しにくいと、自分の頑張りがどの程度反映されたのか分かりづらくなる場合がある。

評価制度と連動させるポイント

  1. 評価制度と賞与規定の明確化:
    • 査定期間(いつからいつまでの働きを評価するか)を明確にします(例: 4月~9月期の評価を12月賞与に反映)。
    • 評価項目(何を基準に評価するか)と、各評価ランクに対応する評価係数やポイントを明確に定めます。
  2. 就業規則への明記と周知:
    • 評価結果を賞与に反映させる仕組みや計算方法を就業規則や賃金規程に明記し、従業員に事前にしっかりと周知・説明することが非常に重要です。事前に説明がないまま減額などが行われると、不満の原因になりかねません。
  3. 評価の妥当性と納得性:
    • 従業員が評価結果とその賞与への反映について納得できるよう、公平性と透明性のある評価制度を運用することが大前提となります。