メンタルヘルスケアの第2ステップである「管理職によるケア」について、日常的な観察、気づき、対応の3つの段階に分けて具体的に解説します。
管理職によるケア
管理職によるケアは、メンタルヘルス不調の早期発見と対応において最も重要な役割を担います。
1. 日常的な観察(予防段階)
これは、不調のサインを見つける前の、日々の予防的な活動です。従業員と良好な関係を築き、変化に気づきやすい土壌を作ります。
- コミュニケーションの習慣化:
- 定期的な1対1の面談(1on1)を設けます。業務進捗だけでなく、体調やモチベーションについても気軽に話せる雰囲気を作ることが大切です。
- 朝の挨拶や退勤時の声かけなど、日常的なカジュアルな会話を増やします。
- 働き方の把握:
- 勤務時間や残業時間、有給休暇の取得状況を把握します。長時間労働が続いていないか、休みが取れていない人がいないか、常に注意を払います。
- チームの雰囲気づくり:
- 心理的安全性が高く、従業員が安心して意見を言える環境を整えます。不満や悩みを一人で抱え込ませないことが重要です。
2. 気づき(サインの発見)
日常的な観察を続けていると、従業員の心身の不調や変化に気づくことができます。以下のサインに注意してください。
- 行動面の変化:
- 遅刻や早退、欠勤の増加
- ミスや業務効率の低下
- 休憩時間の増加
- 身だしなみが乱れる
- 同僚との会話が減り、孤立しているように見える
- 身体面の変化:
- 顔色が悪い、疲れている様子が続く
- 頭痛や腹痛など、体調不良を訴える回数が増える
- 心理・態度の変化:
- 表情が暗い、笑顔が減る
- イライラしたり、感情の起伏が激しくなる
- 業務への意欲や関心が低下する
3. 対応(具体的なアクション)
不調のサインに気づいたら、素早く、そして慎重に対応することが求められます。
- 初期対応:声かけと傾聴:
- まずは「最近疲れていませんか?」など、相手を気遣う優しい声かけから始めます。
- 場所は、他の従業員の目が気にならない個室や会議室を選びます。
- 相手の話を遮らずに、じっくりと聞くことが最も重要です。原因を追究したり、安易な励ましをしたりするのは避けてください。
- 専門家への相談を促す:
- 「もしよろしければ、会社の産業医やカウンセラーに相談してみませんか?」と、専門家への相談を提案します。この際、強制ではなく、あくまで本人の意思を尊重することが大切です。
- 人事・産業保健スタッフへの連携:
- 本人から同意を得た上で、速やかに人事担当者や産業医に状況を共有し、今後の対応について相談します。
- 本人に同意を得られない場合でも、緊急性が高いと判断した場合は、上司の判断で専門家へ連絡することも検討します。
これらのステップを踏むことで、従業員の心の健康を守り、より良い職場環境を築くことにつながります。