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  • 見落としがちなポイントも解説!車両の始業点検マニュアル

    車両の始業点検のやり方

    始業点検で最低限行うべき点検項目

    車両の始業点検(日常点検)は、道路運送車両法で定められており、安全な走行を確保するために非常に重要です。最低限行うべき項目は以下の通りです。「点呼」とも言います。

    ブレーキ:

    ・踏み込んだ時の遊びや踏みしろが適切か。
    ・効き具合に異常がないか。

    タイヤ:

    ・空気圧が適切か。
    ・亀裂や損傷がないか。
    ・溝の深さが十分か。

    灯火類:

    ・ヘッドライト、テールランプ、ブレーキランプ、ウインカーなどが正しく点灯するか。
    ・汚れや損傷がないか。

    エンジン:

    ・異音や異臭がしないか。
    ・エンジンのかかり具合はどうか。
    ・冷却水の量やオイルの量に異常はないか。

    その他:

    ・ワイパーが正常に作動するか。
    ・ウィンドウォッシャー液が十分か。
    ・バックミラーやルームミラーが適切に調整されているか。

    これらの項目は、運転者が自らの五感(目視、聴覚、触覚)を使って短時間で確認できるものです。

    点検の記録は必要ですか?

    はい、点検の記録は必要です。

    道路運送車両法では、事業用自動車(運送事業用)に対しては点検の記録と保存が義務付けられています。自家用車であっても、会社が安全運転管理者を設置するような規模の場合、安全運転管理者の業務として点検結果を記録させ、管理することが求められます。

    記録には、以下の事項を含めるのが一般的です。

    ・点検実施日
    ・点検実施者
    ・点検項目ごとのチェック結果(異常の有無)
    ・異常があった場合の対応内容

    この記録は、万が一事故が発生した場合に、会社の管理体制が適切であったことを証明する重要な証拠となります。

    この点検は運転者一人に任せて良いのでしょうか?

    基本的には、運転者一人に任せて構いません。

    始業点検は、その車両を運転する者が、日々の運行前に安全性を確認するために行うものです。したがって、運転者が自ら行うことが原則です。

    ただし、注意すべき点がいくつかあります。

    灯火類の点検: ヘッドライト、テールランプなどの灯火類は、一人では確認できないことが多いので、他の社員にみてもらう必要がります。

    教育の徹底: 会社は、運転者に対して始業点検の重要性や正しい点検方法について、事前に十分な教育を行う必要があります。

    チェック体制の構築: 運転者が点検を怠ったり、異常を見逃したりしないよう、会社としてチェック体制を構築することが望ましいです。例えば、安全運転管理者が定期的に記録を確認したり、抜き打ちで点検状況を確認したりするなどの対応が考えられます。

    異常時の報告義務: 運転者には、点検で異常を発見した際に、速やかに安全運転管理者や責任者に報告し、修理などの処置を受ける義務があることを徹底させる必要があります。異常がある車両を運転させてはいけません。

    つまり、点検自体は運転者にやってもらいますが、任せるだけでなく、会社全体として、運転者が確実に点検を行い、その結果を適切に管理する仕組みを構築することが求められます。

    業務ソフトやクラウドサービスを利用する

    車両の始業点検に必要な事項をチェックし、その記録までデジタルで完結できる業務ソフトやクラウドサービスは多数存在します。これらのサービスは、車両管理システム日常点検アプリなどと呼ばれています。

    主な機能とメリット

    これらのサービスには、以下のような機能とメリットがあります。

    点検項目のデジタル化: 紙の点検表をスマートフォンやタブレットのアプリに置き換えられます。点検項目がチェックリスト形式になっているため、入力漏れや記載ミスを防げます。

    写真・動画での記録: 異常箇所を写真や動画で撮影し、そのまま記録として残せます。これにより、管理者と運転者の間で認識の齟齬が生じることを防ぎ、修理の判断もスムーズになります。

    記録の一元管理: 点検結果はクラウド上でリアルタイムに共有されます。管理者は事務所にいながら、各車両の点検状況や未報告者を確認でき、紙の書類を回収・整理する手間がなくなります。

    運転日報との連携: 多くのサービスは、日常点検の記録だけでなく、運転日報やアルコールチェックの記録機能も備えています。これにより、車両管理に必要な業務を一つのシステムでまとめて行えます。

    アラート機能: 車検や点検の期限が近づくと、自動で通知する機能を持つサービスもあります。これにより、期限切れの防止に役立ちます。

    代表的なサービス例

    SmartDrive Fleet: 車両の動態管理から、日常点検や運行計画、運転日誌の作成・保存まで、車両管理に関する業務をクラウド上で一括管理できます。

    Platio: スマートフォンで簡単にアプリを作成できるツールで、日常車両点検記録のテンプレートも用意されています。紙の点検表をそのままアプリ化できるため、導入がスムーズです。

    スマトラ: トラックの日常点検に特化したWebアプリで、運転者がスマホで点検・記録を行い、管理者がリアルタイムで確認できるサービスです。動画による点検手順ガイド機能も備えています。

    c点検PRO: クラウド車両台帳と日常点検機能を組み合わせたサービスです。電子車検証のデータ登録も可能で、車両情報の一元管理に役立ちます。

    これらのサービスを活用することで、点検業務の効率化と管理体制の強化が図れ、結果として安全な運行に繋がります。導入を検討する際は、自社の車両台数や業務内容に合ったサービスを選ぶことが重要です。

    アルコールチェックと始業点検の関係

    始業点検とアルコールチェックは別の義務

    アルコールチェックは、厳密には始業点検そのものとは別の義務ですが、同じタイミングで実施することが一般的です。

    始業点検は、車両の安全性を確認するための「車両の点検」です。一方、アルコールチェックは、運転者の体調や酒気帯びの有無を確認するための「運転者の健康状態の確認」であり、それぞれ法律上の目的が異なります。

    しかし、両方とも運行の開始前に行う義務があるため、効率的な運用として同時に実施する企業がほとんどです。

    始業点検の用紙にまとめることはできますか?

    はい、可能です。

    多くの企業では、日々の業務を効率化するために、始業点検のチェック項目に加えて、アルコールチェックの結果(呼気中のアルコール濃度、確認者、確認方法など)を記入する欄を設けた専用の記録用紙や日報を使用しています。これにより、記録漏れを防ぎ、管理を簡素化できます。

    始業点検のシステムにアルコールチェックは含まれていますか?

    はい、多くの場合含まれています。

    現在提供されている車両管理システムやクラウドサービス、アプリの多くは、始業点検機能とアルコールチェック機能を統合しています。

    これらのシステムでは、以下のような機能が提供されています。

    アルコール検知器との連携: Bluetoothなどで検知器と接続し、測定結果を自動で記録します。

    写真・動画の記録: 運転者の顔や点検の様子を写真や動画で記録し、なりすましや不正を防ぎます。

    クラウドでの一元管理: 点検結果やアルコールチェックの記録がリアルタイムでクラウドに保存されるため、管理者はいつでもどこでも確認できます。

    これらの統合サービスを利用することで、管理者は運転者ごとのアルコールチェックの実施状況を一目で把握でき、法的な義務をより確実に果たせるようになります。


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  • 安全運転管理規程のサンプル

    安全運転管理規程

    第1章 総則

    (目的)
    第1条 この規程は、当社が業務に使用する車両の運用管理及び安全運転管理、並びに事故処理等について定め、運転の安全と車両の整備、使用取扱いの適正を期し、もって交通事故を防止し、従業員の安全と業務の円滑な遂行に資することを目的とする。

    (準拠)
    第2条 車両管理及び安全運転管理に関しては、関係法令等によるほか、この規程の定めるところによる。

    (車両の使用、取扱いの基本)
    第3条 車両の取扱いに当たっては、平素の手入れ、点検、整備を励行して機能の保持に努め、運行時は交通の安全を優先し、安全な運転の確保に努めなければならない。

    (用語の意義)
    第4条 この規程における用語の意義は、次の各号の定めるところによる。
    (1) 車両:当社が所有する自動車(リース車を含む。)をいう。
    (2) 車両管理:管理下にある車両の年式、性能、整備状況を把握し、その機能保持のために行う日常の清掃、点検、整備(修理)、使用、保管等を適正にする管理業務をいい、定期点検整備、車検整備及び故障、破損等の整備(修理)のための発注、検収業務を含むものとする。
    (3) 安全運転管理:安全で、しかも効率的な車両運行確保のために行う運転者の管理、車両管理、運行管理、職場管理及び運転者の教育指導、交通事故防止対策の実施をいう。
    (4) 運転者:法令で定める運転免許所持者で、業務に関し車両を運転する者をいう。
    (5) 交通事故:車両の使用、運行中、当方又は相手方の過失等により発生した人の死傷又は物の損壊を伴う場合で、当社が事故処理手続きをするものをいう。

    (使用基準)
    第5条 車両の使用は、業務上に限るものとする。

    (管理職の義務)
    第6条 会社の管理職は、車両の運転及び点検整備に関し、従業員の指導監督に努め、安全運転管理者の業務が円滑に行われるよう協力しなければならない。

    (同乗者等の協力義務)
    第7条 同乗者等は、運転者の安全運転を妨げるような乗車方法をしてはならない。また進んでシートベルトを着用し、左右の安全確認、バックする際の誘導に当たるなど運転に協力しなければならない。

    第2章 管理体制

    (安全運転管理者)
    第8条 安全運転管理者は、社長の指導を受け、この規程に定めるところにより車両管理、安全運転管理の業務を行うものとする。

    (安全運転管理者の任務及び権限)
    第9条 安全運転管理者は、配置を受けた車両の管理業務に関し、次の各号に掲げる権限を有するものとする。
    (1) 車両及びカギの保管、授受並びに車両使用承認に関すること。
    (2) 運行計画の作成(調整)と実施に関すること。
    (3) 運転担当者の点呼及び運行前点検の立会い、指導に関すること。
    (4) 運行状況の把握(運転日誌の点検)及び運転担当者からの報告聴取に関すること。
    (5) 業務上発生した交通事故の調査処理に関すること。
    (6) 運転担当者の労務管理に関すること。
    (7) その他車両管理及び安全運転管理に関すること。

    第3章 車両の使用及び整備

    (車歴カードの備付け)
    第10条 安全運転管理者は、新たに車両が配置された場合には、車種、年式、登録番号、性能、程度、工具等を点検し、所定の「車歴カード」に記載して、車両の管理、整備状況を把握しておくものとする。

    (運転の許可)
    第11条 車両を運転する者は、事前に安全運転管理者の指示又は許可を受けるものとする。ただし、事前に許可を受けることができなかった場合には、事後その承認を受けるものとする。

    (カギの保管、車両の格納)
    第12条 車両のカギは、保管箱に収納し、安全運転管理者が保管し、使用の都度授受を行うものとする。
    2 運転担当者は、終業点検実施後、車両を所定の車庫等に格納し、安全運転管理者に使用結果を報告するとともにカギを返納しなければならない。

    (運転日誌)
    第13条 車両には、様式第2号の運転日誌を備え付け、運行の都度運転した者が所定事項を記録し、その日の終了時に安全運転管理者に提出して点検を受けるものとする。

    (運行前点検)
    第14条 車両を運行する者は、1日1回、その運行の開始前において、道路運送車両法に規定する「運行前点検」を行うとともに車両の清掃を実施するものとする。
    2 運行前点検の結果不具合箇所を発見したときは、直ちに安全運転管理者に報告し、その指示を受けて所要の整備を行うものとする。
    3 安全運転管理者は、配置を受けた車両の運行前点検に立会い、点検要領、保守管理等について所要の指導を行うものとする。

    (アルコールチェック)
    第14条の2 安全運転管理者は、業務開始時と当日の業務終了時に点呼を実施し、運転者に対して酒気帯びの有無及び健康状態について報告を求め、安全運転管理者が自ら目視(運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認すること)等で確認するとともに、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国土交通大臣が告示で定めるもの)を用いて検査を実施する。
    2 安全運転管理者は、事業場に必要数のアルコール検知器を備えるとともに正常に動作するように毎日点検しなければならない。
    3 アルコールチェックの結果は所定の記録簿に記載して最低1年間保存するものとする。

    (整備手続)
    第15条 車両の不具合箇所を発見し、又は破損させた者は、その旨安全運転管理者に報告するものとする。
    2 安全運転管理者は、前項の車両が修理を要すると認めたときは、指定整備工場に修理箇所、修理に要する経費、日数等を確認のうえ発注するものとし、修理が完了したときは、必ず検収を行うものとする。

    (車検整備及び定期点検整備)
    第16条 安全運転管理者は、車両について、継続検査のための整備及び定期点検整備の予定表を作成し、時期を失せず適切に実施するものとする。

    第4章 安全運転管理

    (指示指導)
    第17条 安全運転管理者は、運転担当者に対し、車両の点検整備、安全運転等について必要な指示、指導を行うものとする。

    (疲労の防止)
    第18条 長距離又は夜間にわたる長時間の運行で運転者が疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ交替要員を配置するなど必要な措置を講ずるものとする。

    (酒気帯び運転の禁止)
    第18条の2 いかなる場合においても酒気を帯びた状態で運転してはならない。

    (教育及び指導)
    第19条 安全運転管理者は、運転担当者の安全意識の向上を図るために教育及び指導を実施するものとし、会社の管理職はこれに協力しなければならない。

    第5章 運転者服務心得

    (運転者の心構え)
    第20条 運転者は、この規程及び安全運転管理者の指示、注意に従い、運転に当たっては交通法令を守り、安全運転に努め、人命尊重と互譲の精神を旨としなければならない。

    (健康の保持)
    第21条 運転者は、安全運転を行うため常に健康を保持し、次の各号に掲げる事項に配意しなければならない。
    (1) 私生活を正しくし、明朗化に努めること。
    (2) 常に十分な睡眠をとるように心がけること。
    (3) 同僚との和を計り、明朗な職場づくりに努めること。

    (運転時の服装)
    第22条 運転者は、運転業務に適した服装をし、常に清潔に留意しなければならない。

    (過労の申出)
    第23条 運転者は、病気、過労、酒気帯びその他の理由により、安全な運転をすることができないおそれがあるときは、必ずその旨安全運転管理者に申し出なければならない。

    (乗車準備)
    第24条 運転者は、運転を行うに先だって、次の各号に掲げる事項に留意しなければならない。
    (1) 運転にあたっての上司の指示、伝達事項を確認すること。
    (2) 運転免許証、携帯品及び車両備付器具などの確認を行うこと。

    (届け出)
    第25条 運転者は、運転免許証の記載事項に変更を生じたとき、交通違反をしたとき、処分を受けたときはその旨を直ちに安全運転管理者に届け出なければならない。

    第6章 交通事故処理

    (事故発生時の措置)
    第26条 運転者が業務中、交通事故を起したときは、道路交通法の規定による必要な措置(運行の停止、負傷者の救護、危険防止措置、警察官への報告等)を講じた後、直ちに安全運転管理者に報告し、その指示に従わなければならない。

    (運転者が連絡不能の場合)
    第27条 前条の運転者が、負傷などのため連絡ができないときは、事故の発生を知った者が、同条に定める報告を運転者に代って行うものとする。

    (事故処理)
    第28条 事故の通報を受けた安全運転管理者は、状況により自ら又は適任者を現地に急行させ、事故の調査、被害者の見舞等を迅速に行うとともに関係者と連絡をとり、事故処理について指導、助言、協力を受けるなどして、事故処理の適正を期するものとする。

    (交通事故報告書)
    第29条 運転者又は管理者は、事故発生後速やかに「交通事故報告書」に所定事項を記入のうえ安全運転管理者を経由して社長に提出しなければならない。

    (懲戒処分)
    第30条 従業員の交通事故が故意又は重大な過失に起因すると認められた場合は、関係者の責任の度合を検討し、懲戒処分を課すことがある。

    (損害の負担)
    第31条 業務遂行中の車両に関する事故の損害は当社が負担する。ただし、車両の運行に関し本人の故意又は重大な過失に起因するときは求償権を行使することがある。

    附則 この規程は、令和〇〇年〇〇月〇〇日から施行する。


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