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安全運転

見落としがちなポイントも解説!車両の始業点検マニュアル

Last Updated on 2025年8月9日 by

車両の始業点検のやり方

始業点検で最低限行うべき点検項目

車両の始業点検(日常点検)は、道路運送車両法で定められており、安全な走行を確保するために非常に重要です。最低限行うべき項目は以下の通りです。

ブレーキ:

・踏み込んだ時の遊びや踏みしろが適切か。
・効き具合に異常がないか。

タイヤ:

・空気圧が適切か。
・亀裂や損傷がないか。
・溝の深さが十分か。

灯火類:

・ヘッドライト、テールランプ、ブレーキランプ、ウインカーなどが正しく点灯するか。
・汚れや損傷がないか。

エンジン:

・異音や異臭がしないか。
・エンジンのかかり具合はどうか。
・冷却水の量やオイルの量に異常はないか。

その他:

・ワイパーが正常に作動するか。
・ウィンドウォッシャー液が十分か。
・バックミラーやルームミラーが適切に調整されているか。

これらの項目は、運転者が自らの五感(目視、聴覚、触覚)を使って短時間で確認できるものです。

点検の記録は必要ですか?

はい、点検の記録は必要です。

道路運送車両法では、事業用自動車(運送事業用)に対しては点検の記録と保存が義務付けられています。自家用車であっても、会社が安全運転管理者を設置するような規模の場合、安全運転管理者の業務として点検結果を記録させ、管理することが求められます。

記録には、以下の事項を含めるのが一般的です。

・点検実施日
・点検実施者
・点検項目ごとのチェック結果(異常の有無)
・異常があった場合の対応内容

この記録は、万が一事故が発生した場合に、会社の管理体制が適切であったことを証明する重要な証拠となります。

この点検は運転者一人に任せて良いのでしょうか?

基本的には、運転者一人に任せて構いません。

始業点検は、その車両を運転する者が、日々の運行前に安全性を確認するために行うものです。したがって、運転者が自ら行うことが原則です。

ただし、注意すべき点がいくつかあります。

灯火類の点検: ヘッドライト、テールランプなどの灯火類は、一人では確認できないことが多いので、他の社員にみてもらう必要がります。

教育の徹底: 会社は、運転者に対して始業点検の重要性や正しい点検方法について、事前に十分な教育を行う必要があります。

チェック体制の構築: 運転者が点検を怠ったり、異常を見逃したりしないよう、会社としてチェック体制を構築することが望ましいです。例えば、安全運転管理者が定期的に記録を確認したり、抜き打ちで点検状況を確認したりするなどの対応が考えられます。

異常時の報告義務: 運転者には、点検で異常を発見した際に、速やかに安全運転管理者や責任者に報告し、修理などの処置を受ける義務があることを徹底させる必要があります。異常がある車両を運転させてはいけません。

つまり、点検自体は運転者にやってもらいますが、任せるだけでなく、会社全体として、運転者が確実に点検を行い、その結果を適切に管理する仕組みを構築することが求められます。

業務ソフトやクラウドサービスを利用する

車両の始業点検に必要な事項をチェックし、その記録までデジタルで完結できる業務ソフトやクラウドサービスは多数存在します。これらのサービスは、車両管理システム日常点検アプリなどと呼ばれています。

主な機能とメリット

これらのサービスには、以下のような機能とメリットがあります。

点検項目のデジタル化: 紙の点検表をスマートフォンやタブレットのアプリに置き換えられます。点検項目がチェックリスト形式になっているため、入力漏れや記載ミスを防げます。

写真・動画での記録: 異常箇所を写真や動画で撮影し、そのまま記録として残せます。これにより、管理者と運転者の間で認識の齟齬が生じることを防ぎ、修理の判断もスムーズになります。

記録の一元管理: 点検結果はクラウド上でリアルタイムに共有されます。管理者は事務所にいながら、各車両の点検状況や未報告者を確認でき、紙の書類を回収・整理する手間がなくなります。

運転日報との連携: 多くのサービスは、日常点検の記録だけでなく、運転日報やアルコールチェックの記録機能も備えています。これにより、車両管理に必要な業務を一つのシステムでまとめて行えます。

アラート機能: 車検や点検の期限が近づくと、自動で通知する機能を持つサービスもあります。これにより、期限切れの防止に役立ちます。

代表的なサービス例

SmartDrive Fleet: 車両の動態管理から、日常点検や運行計画、運転日誌の作成・保存まで、車両管理に関する業務をクラウド上で一括管理できます。

Platio: スマートフォンで簡単にアプリを作成できるツールで、日常車両点検記録のテンプレートも用意されています。紙の点検表をそのままアプリ化できるため、導入がスムーズです。

スマトラ: トラックの日常点検に特化したWebアプリで、運転者がスマホで点検・記録を行い、管理者がリアルタイムで確認できるサービスです。動画による点検手順ガイド機能も備えています。

c点検PRO: クラウド車両台帳と日常点検機能を組み合わせたサービスです。電子車検証のデータ登録も可能で、車両情報の一元管理に役立ちます。

これらのサービスを活用することで、点検業務の効率化と管理体制の強化が図れ、結果として安全な運行に繋がります。導入を検討する際は、自社の車両台数や業務内容に合ったサービスを選ぶことが重要です。

アルコールチェックと始業点検の関係

始業点検とアルコールチェックは別の義務

アルコールチェックは、厳密には始業点検そのものとは別の義務ですが、同じタイミングで実施することが一般的です。

始業点検は、車両の安全性を確認するための「車両の点検」です。一方、アルコールチェックは、運転者の体調や酒気帯びの有無を確認するための「運転者の健康状態の確認」であり、それぞれ法律上の目的が異なります。

しかし、両方とも運行の開始前に行う義務があるため、効率的な運用として同時に実施する企業がほとんどです。

始業点検の用紙にまとめることはできますか?

はい、可能です。

多くの企業では、日々の業務を効率化するために、始業点検のチェック項目に加えて、アルコールチェックの結果(呼気中のアルコール濃度、確認者、確認方法など)を記入する欄を設けた専用の記録用紙や日報を使用しています。これにより、記録漏れを防ぎ、管理を簡素化できます。

始業点検のシステムにアルコールチェックは含まれていますか?

はい、多くの場合含まれています。

現在提供されている車両管理システムやクラウドサービス、アプリの多くは、始業点検機能とアルコールチェック機能を統合しています。

これらのシステムでは、以下のような機能が提供されています。

アルコール検知器との連携: Bluetoothなどで検知器と接続し、測定結果を自動で記録します。

写真・動画の記録: 運転者の顔や点検の様子を写真や動画で記録し、なりすましや不正を防ぎます。

クラウドでの一元管理: 点検結果やアルコールチェックの記録がリアルタイムでクラウドに保存されるため、管理者はいつでもどこでも確認できます。

これらの統合サービスを利用することで、管理者は運転者ごとのアルコールチェックの実施状況を一目で把握でき、法的な義務をより確実に果たせるようになります。


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