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従業員が300人を超えれば公益通報の対応体制が必要です(公益通報対応マニュアル付き)

Last Updated on 2025年8月17日 by

常時使用する労働者が300人を超える事業者には「公益通報対応体制の整備義務」 が課されています。消費者庁のガイドラインをもとに、具体的にやるべきことを整理しました。

まとめると、300人超の事業者は、通報窓口の設置、担当者の指定と責任体制の明確化、通報者保護(秘密保持・不利益取扱い禁止)、調査・是正措置・フィードバックの仕組み、規程整備と周知・教育を整える必要があります。300人以下の事業者に対しては努力義務になります。

通報窓口の設置

従業員数301人以上の事業者に対し、「公益通報対応業務従事者の指定」が義務付けられ、適切な通報窓口を設置することとされました。

内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定めなければなりません。

通報先は、可能であれば社外弁護士や外部専門機関を活用することも推奨されています。

通報者の秘密保持

通報者を保護することは公益通報者保護法の主眼です。

公益通報をしたことを理由とした解雇や労働者派遣契約の解除は無効と定められており(改正公益通報者保護法3条、4条)、公益通報をしたことを理由とした不利益な取扱いも禁止されています(改正公益通報者保護法5条)。

公益通報対応業務従事者に対し、正当な理由なく、公益通報者を特定できる情報を漏らしてはならないという守秘義務が定められました。

この守秘義務は過去に公益通報対応業務従事者だった人も対象です。守秘義務に違反すると、30万円以下の罰金を科せられることがあります。

通報対応のプロセスを整備

内部や外部から情報提供を受けたら、以下の流れで対応を進めましょう。

STEP1 通報者への受領の通知

通報者の連絡先がわかっていれば、メールや文書で受領した旨を通知します。

STEP2 通報内容を確認する

通報内容を確認します。不正や法令違反の可能性がポイントです。安易に「公益通報にあたらない」と判断してしまうと、後になって重大なトラブルを招く危険が発生します。

判断が遅れると、通報者が不信感をもって外部通報に移行することが多いので、迅速に進めましょう。

STEP3 調査する

不正や法令違反の可能性が高い事案であれば、提供された情報について調査を開始しなければなりません。

  • 提供された情報の内容が正しいのか
  • 証拠はあるか
  • 実際に被害が発生しているのか
  • どの程度大きな問題になっているか

通報した本人だけではなく、周囲の人や関係者からも聞き取りなどの調査が必要です。

その際、通報者のみならず関係者にも不利益が及ばないように慎重に対応しなければなりません。

調査対象者のプライバシーや権利を守るための配慮も必要です。

STEP4 適切に処分する

調査の結果、問題発生を把握できたら是正のための措置をとらなければなりません。

不正が行われていたら正さなけれなりませんし、場合によっては法的措置も必要となるでしょう。不正行為を行っていた従業員に懲戒処分が必要になることもあります。

次いで、再発防止措置も必要です。

内部通報があった場合の具体的な対処は、状況や通報内容、調査結果によって異なります。

内部規程・周知

政府指針において求められる事項について、内部規程において定め、規程の定めに従って運用しなければなりません。

公益通報対応マニュアル(サンプル) を示します。

公益通報対応マニュアル(ひな型)

第1章 総則

  1. 本マニュアルは、当社における公益通報の受付・調査・是正措置を適切に行い、通報者の保護を確実にすることを目的とする。
  2. 本マニュアルに基づき、通報者の秘密を保持し、不利益取扱いを行わないことを徹底する。

第2章 通報窓口の設置

  1. 当社は、公益通報を受け付ける窓口を以下のとおり設置する。
    • 内部窓口:コンプライアンス部門(電話・メール・書面)
    • 外部窓口:顧問弁護士事務所(連絡先別途周知)
  2. 通報は、実名・匿名いずれでも受け付ける。

第3章 担当者と責任体制

  1. 当社は「公益通報対応責任者」を指名する。
  2. 公益通報対応責任者は、通報受付・調査担当者を任命し、通報処理全体を統括する。
  3. 担当者は、通報内容および通報者情報を厳格に管理し、守秘義務を負う。

第4章 通報の受付と記録

  1. 通報を受け付けた場合は、速やかに受付日時、通報経路、通報内容を記録する。
  2. 通報者には受付を確認した旨を通知する(匿名の場合を除く)。
  3. 通報者の同意がない限り、通報者の氏名や通報経路を第三者に開示してはならない。

第5章 調査の実施

  1. 公益通報対応責任者は、必要に応じて関係部門・外部専門家を交えて調査を行う。
  2. 調査にあたり、通報者に追加情報を求める場合がある。
  3. 調査記録は文書として保存し、秘密保持に十分配慮する。

第6章 是正措置とフィードバック

  1. 調査の結果、法令違反等が認められた場合には、速やかに是正措置を講じる。
  2. 是正措置の内容・進捗は、可能な範囲で通報者に通知する。
  3. 措置結果は経営層に報告し、再発防止策を検討する。

第7章 通報者の保護

  1. 通報者に対する解雇・降格・不利益な配置転換・嫌がらせ等の取扱いを禁止する。
  2. 不利益取扱いの疑いが生じた場合は、公益通報対応責任者が速やかに調査し、必要な是正措置を行う。
  3. 通報者が匿名を希望する場合は、最大限尊重する。

第8章 教育・周知

  1. 本マニュアルの内容は、全従業員に周知徹底する。
  2. 定期的に研修を行い、公益通報制度の趣旨と運用方法を理解させる。
  3. 通報窓口の連絡先・利用方法を常時確認できるように掲示・イントラネットに掲載する。

第9章 記録と保存

  1. 通報受付・調査・是正措置の経過および結果は文書に記録し、公益通報対応責任者が管理する。
  2. 記録の保存期間は原則5年間とする。

第10章 改定

  1. 本マニュアルは、法令改正その他必要に応じて見直し、改定する。

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