Last Updated on 2025年6月19日 by 勝
株式会社を設立する際に作成する定款は、会社の基本的なルールを定める重要な書類です。この定款が法的に有効であると認められるためには、公証人による認証という手続きが必要です。
まず、当日の流れを説明します(イメージ)
公証役場に行ったことがないとイメージしにくいですよね。ご安心ください。以下で順を追って、公証役場での認証の流れとポイントを具体的に解説します。
予約した時間に公証役場へ向かいます。
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受付で名前を伝え、持参した書類を提出します。
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順番が来るまで待ちます。
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公証人から定款の内容について簡単な確認があります。
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発起人全員が立ち会う場合は、全員の身分確認が行われます。代理人の場合は、委任状と代理人の身分確認が行われます。
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公証人が最終的に内容をチェックし、もし誤りや修正点があればその場で指示されます。必要に応じて、発起人の実印(または代理人の印)で訂正印を押します。
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公証人の手数料、収入印紙代、謄本代を支払います。
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公証人が定款の最後に認証文を記載し、公証人印を押印します。
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認証済みの定款(原本1通と謄本2通)を受け取ります。
定款認証は、会社設立における最初の大きなステップです。事前の準備と確認をしっかり行うことで、スムーズに手続きを進めることができます。
なぜ「認証」が必要なの?
発起人が作成した定款は、そのままでは法的な効力を持ちません。「認証」という手続きを通して、公証人が定款の内容が法令に適合しているか、そしてその作成手続きが正当に行われたかを確認し、公的に証明することで、定款に効力が与えられます。これにより、会社設立の信頼性が確保され、将来的なトラブルを防ぐ役割も果たします。
知っておきたい言葉の意味
公証人
法務大臣に任命された、法律の専門家です。定款認証の他にも、公正証書の作成(遺言、金銭消費貸借契約など)、私文書の認証など、様々な業務を行っています。定款が適切に作成されているか、法令に違反していないかなどをチェックする権限を持っています。
公証役場
公証人が執務を行う場所です。全国各地に設置されており、日本公証人連合会のウェブサイトで最寄りの役場を検索できます。
原始定款とは?
「原始定款」とは、まさに公証人に認証してもらう前の、発起人全員が署名(または記名)し、実印を押印した定款の原本のことです。この原始定款を公証人に提出し、認証を受けます。
認証手続きの詳細
どこの公証役場に行くの?
会社の本店の所在地と同じ都道府県内にある公証役場で認証を受ける必要があります。
例えば、東京都に本店を置く会社を設立する場合は、東京都内の公証役場ならどこでも認証してもらえます。どこにあるかは、日本公証人連合会のウェブサイトで確認できます。
事前チェックを利用しよう!
正式に認証手続きに入る前に、公証役場で定款の事前チェックをしてもらいましょう。
定款に不備があると、その場で認証してもらえません。せっかく足を運んでも、再度出直しになる可能性があります。事前にチェックしてもらうことで、手戻りを防ぎ、スムーズに認証手続きを進められます。
定款の原案をFAXやメールで送付してチェックしてもらえる公証役場も多いです。直接役場に出向いて相談することも可能です。なお、多くの公証役場では、事前に予約が必要です。
公証役場に持参するもの(認証当日)
持参するものは以下の通りです。
原始定款の原本(3通)
公証役場保管分:公証人が保管します。
法務局へ提出分:会社設立登記の際に、法務局へ提出します。
自社で保管分:会社設立後、会社で大切に保管します。
発起人全員の印鑑登録証明書
これは、発起人の実印が本物であることを証明するために必要です。発行から3か月以内のものです。
発起人全員の実印
認証当日に、定款の内容に訂正が必要になった場合、その場で訂正印として実印が必要になります。そのため、発起人全員が認証に立ち会う場合は実印を持参します。
記載内容に訂正があった場合は、その場で発起人の印が必要になります。
発起人が法人の場合
履歴事項全部証明書(発行から3か月以内):法人の存在と代表者を証明します。
会社の印鑑証明書(発行から3か月以内):法人の代表印が本物であることを証明します。
発起人が法人の場合は代表印を訂正が必要な場合に備えて持参します。
発起人に代理人を立てる場合
発起人全員の実印が押印された委任状が必要です。
代理人の身分証明書が必要です。運転免許証やマイナンバーカードなどです。
訂正が必要な場合に備えて、代理人の印鑑(認印でも可)を持参すると良いでしょう。
定款認証にかかる費用
費用の種類と金額(目安)を示します。
公証人の手数料
3万円~5万円です。資本金が100万円未満で3万円、資本金100万円以上300万円未満で4万円、資本金300万円以上で5万円です。
収入印紙代
4万円です。
紙の定款の場合のみ必要です。電子定款の場合は不要になります。
謄本代
2,000円程度となります。定款のページ数によって変動します(1枚あたり250円程度)。
通常、20ページ程度の定款で約2,000円となります。
ここまでのところで、公証人の手数料+収入印紙代+謄本代で、合計 約7.2万円~9.2万円になります。
登録免許税
以上の定款認証費用とは別に会社設立登記の際に法務局へ支払う税金があります。これは会社設立の最終段階で発生する費用です。株式会社の場合、最低15万円かかります。
司法書士に依頼した場合
定款認証を司法書士に依頼したときは上記公証役場に支払う費用とは別に、司法書士への報酬(数万円~)が発生します。
司法書士に依頼すると、定款作成の専門知識を活かしてスムーズな作成・認証が可能になり、設立登記まで一貫して任せられるメリットがあります。
電子定款について
電子定款は収入印紙代(4万円)が不要になるため、総費用を抑えることができます。
メリットとしては、印紙代がかからないことです。他に紙の定款と異なり、製本や印鑑の押し間違えなどのリスクがないこともあります。
デメリットとしては、自分で作成・認証する場合は、ICカードリーダー、専用のソフトウェア、電子証明書などが必要となり、初期投資と専門知識が必要です。
参考サイト
公証人役場に行く前に下記のサイトに目を通してください。
会社事務入門>株式会社の設立手続き>このページ