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公益通報者保護法のあらまし

Last Updated on 2023年10月15日 by

保護の対象になる通報

誰が、どのような事実について、どこに通報するか、など一定の要件を満たすものが公益通報とされて、通報者は保護の対象になります。以下の条件があります。

保護される通報者

公益通報者とは、以下に該当する者を指します(公益通報者保護法2条1項、2項)。

□ 正社員・アルバイト・パートタイマーなど、労働基準法9条に規定される労働者(退職後1年以内の者を含む)
□ 派遣労働者(退職後1年以内の者を含む)
□ 請負契約などに基づき業務に従事する者・従事していた労働者(従事後1年以内の者を含む)
□ 役員

通報の対象となる法令違反

通報の対象となる事実(通報対象事実)は、特定の法律に違反する犯罪行為または最終的に刑罰につながる行為であることが求められます。

法律で定める一定の法律違反の行為等についての通報が、公益通報の対象になります。対象でない法律に違反しても、その通報者はこの法律による保護の対象になりません。

公益通報の対象になる事実とは、対象になる法律に規定された犯罪行為などです。460以上の法律が対象になっています。ただし、犯罪とされる行為と、刑罰で強制される法規制(罰金が設けられている等)に違反する行為が対象です。つまり、軽微な法令違反行為や倫理違反行為まで対象となる訳ではありません。

政府広報オンラインでは、対象となる法律の例、通報対象事実の例を以下のように記載しています。

対象となる法律の例

食品衛生法
金融商品取引法
JAS法
大気汚染防止法
廃棄物処理法
個人情報保護法 その他

通報対象事実の例

他人のものを盗んだり、横領したりする
安全基準を超える有害物質が含まれる食品を販売する
リコールに相当する不良車が発生したにも関わらず、虚偽の届出をする
無許可で産業廃棄物の処分をする
リコールの勧告を受けたが改善措置を講じない(勧告違反)
改善の命令を受けたが改善措置を講じない(命令違反)

通報の前に、把握した事実が「公益通報対象」かどうか、法令やガイドライン等を参照し確認する必要があります。場合によっては、通報の前に、法律の専門家や監督官庁への問い合わせなども一つの方法です。

通報先

通報先には次の3つが定められています。

事業者内部

通報対象事実が生じている、または、まさに生じようとしていると思われる場合に通報できます。

事業者に対し、公益通報対応業務従事者を定める義務(第11条第1項)、内部の労働者等からの公益通報に適切に対応する体制の整備、その他の必要な措置をとる義務(第11条第2項)を課しています。(令和4年6月1日施行)

ただし、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務です(第11条第3項)。

上記により事業者内に設置された窓口や担当者、事業者が契約する法律事務所などが通報先です。また、管理職や上司も通報先です。

行政機関

通報対象事実が生じている、または、まさに生じようとしていると思われる場合に通報できます。

ただし、単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要です。

通報された事実について、勧告、命令できる行政機関が通報先になります。

もし通報しようとした行政機関が適切でなかった場合、その行政機関は適切な通報先を通報者に紹介することになっています。

その他

一般的には報道機関や消費者団体、労働組合などです。

事業者内部や行政に対する通報と同様に、通報対象事実が生じている、または、まさに生じようとしていると思われる場合に通報できます。

加えて、以下のいずれか1つに該当する場合とされています。

□ 事業者内部・行政機関に公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある
□ 事業者内部(労務提供先等)に公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある
□ 事業者内部・行政機関に公益通報をしないことを正当な理由なく要求された場合
□ 書面(紙文書以外に、電子メールなど電子媒体への表示も含む。)により事業者内部に公益通報をした日から20日を経過しても、当該事業者から調査を行う旨の通知がない場合・事業者が正当な理由がなく調査を行わない場合
□ 個人の生命・身体に危害が発生している場合・発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

外部通報は、通報に間違いがあった場合の、企業イメージの著しい低下など弊害が大きいという懸念から、特に「その他」報道機関等への通報は、保護されるための要件が厳しめに設定されています。

以上の3つに優先順序はありません。企業の相談窓口を飛ばして行政機関やマスコミに通報することも認められます。

この法律の対象者

適用対象は、すべての「事業者」です。つまり、大小問わず、営利・非営利問わず、法人・個人事業者問わず対象になり、そこの労働者等はこの法律によって保護の対象になります。

通報の対象となった事業者に対しては、以下の行為が禁止されます。

□ 公益通報をしたことを理由とする解雇
□ 公益通報をしたことを理由とする労働者派遣契約の解除
□ 公益通報をした労働者などに対する不利益な取扱い
□ 公益通報をした役員の解任
□ 公益通報者に対する損害賠償請求


規程例:公益通報者保護規程のサンプル

就業規則規程例→公益通報者保護|就業規則

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