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65歳まで雇用しなければならない?高齢者雇用確保措置を解説

Last Updated on 2025年8月10日 by

65歳までの雇用確保義務は、希望する従業員を65歳まで雇用し続けることを企業に義務付ける制度です。これは、高年齢者雇用安定法で定められています。

65歳までの雇用確保措置の概要

企業は、以下のいずれかの措置を講じることで、65歳までの雇用確保義務を果たすことができます。

定年の引き上げ: 定年年齢を65歳以上に引き上げる方法です。

継続雇用制度の導入: 定年後も希望者を再雇用する制度を導入する方法です。

定年の廃止: 定年制度自体を撤廃し、年齢に関係なく働けるようにする方法です。

現在、多くの企業が「継続雇用制度」を導入しており、定年を迎えた従業員を「嘱託社員」などで再雇用する形が一般的です。

この義務は、法人・個人事業、企業の大小、業種を問わず全ての企業が対象となります。

義務化の経緯

この雇用確保義務は、段階的に進められてきました。

2006年: 定年を65歳未満に定めている企業に対し、65歳までの雇用確保措置を講じることが義務化されました。

2013年: 希望者全員を対象とすることが原則となり、企業が一方的に再雇用の対象者を絞り込むことはできなくなりました。

2025年:2025年4月から、65歳までの雇用確保義務が完全な形になりました。企業が労使協定を締結することで、継続雇用の対象者を限定できるという経過措置が廃止されたのです。

継続雇用と再雇用

継続雇用制度と再雇用制度は同じではありません。

継続雇用制度は、高年齢者雇用安定法に定められた、定年後も働き続けたいと希望する従業員の雇用を確保するための制度の総称です。この制度には、主に2つの種類があります。

勤務延長制度

勤務延長制度は、定年を迎えた従業員を退職させずに、そのまま引き続き雇用を延長する制度です。

雇用形態: 原則として、定年前と同じ雇用形態(正社員など)が継続されます。

退職金: 定年時に退職金は支払われず、延長期間が終了した時点で支払われるのが一般的です。

この制度は、実質的に「定年を延長する」ことと同じです。

再雇用制度

再雇用制度は、定年を迎えた従業員を一度退職扱いにして、その後、新たに雇用契約を結び直す制度です。

雇用形態: 多くの場合、正社員から嘱託社員や契約社員など、別の雇用形態に変更されます。

退職金: 定年時に退職金が支払われます。

多くの企業で採用されているのが、再雇用制度です。

このように、再雇用制度は継続雇用制度の一つの種類であり、両者は同じものではありません。

関連記事:定年後の再雇用制度について

定年の廃止について

厚生労働省の「令和6年高年齢者雇用状況等報告」によると、定年制を廃止している企業の割合は3.9%です。これは、65歳までの雇用確保措置を講じている企業のなかで、定年引き上げ(28.7%)や継続雇用制度の導入(67.4%)に比べて、非常に低い水準にとどまっています。

定年廃止の導入率が低いのは、主に以下のような理由が挙げられます。

人事制度の難しさ: 年齢にとらわれない評価制度や賃金制度を構築・運用するには、高度な専門知識と労力が必要です。

新陳代謝の停滞: 定年廃止は、若手社員の昇進機会を減らし、組織の新陳代謝を滞らせるリスクがあります。

人件費の増加: 従業員の高齢化が進むことで、人件費が増大する可能性があります。

多くの企業は、リスクや負担が大きい定年廃止よりも、継続雇用制度、とりわけ再雇用制度という既存の枠組みを延長する形で高齢者の雇用確保義務に対応しています。

65歳以降の雇用について

65歳までの雇用確保が義務である一方、65歳以降70歳までの就業確保は努力義務となっています。企業は、70歳まで雇用するよう努めることが求められますが、義務ではありません。

関連記事:70歳までの就業機会確保が企業の努力義務に、具体的にはどうなっている?


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