Last Updated on 2025年8月9日 by 勝
高齢者雇用安定法に定められている70歳までの就業確保措置について、分かりやすく解説します。
法律の目的と対象者
この法律は、少子高齢化が進む中で、意欲と能力のある高齢者が年齢にかかわりなく働き続けられる社会を構築することを目的としています。
対象となるのは、65歳までの雇用確保義務を果たしている企業です。 つまり、希望する従業員を65歳まで雇用する制度(定年引き上げ、継続雇用制度など)をすでに導入している企業に、さらに70歳までの就業確保措置を努力義務とするものです。
就業確保措置の選択肢
2021年4月から、企業には70歳までの就業確保が努力義務になりました。これは、65歳から70歳までの従業員について、以下のいずれかの措置を講じるよう努めなさい、というものです。
高齢者就業確保措置
70歳までの定年引き上げ: 定年年齢を70歳に引き上げる方法です。
70歳までの継続雇用制度の導入: 65歳以降も引き続き雇用する制度を導入する方法です。
創業支援等措置
70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入: 企業と従業員が雇用契約ではなく、業務委託契約を結び、個人事業主として働いてもらう方法です。
70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入:
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
企業は、これらの選択肢の中から、自社の状況や従業員の希望に合わせて最も適切な方法を選ぶことができます。
制度の導入状況
概観
厚生労働省の報道発表資料「令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」によれば次のとおりです。
70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は、報告した企業全体の31.9%で、中小企業で32.4%、大企業では25.5%であった。
企業全体のうち、定年制の廃止は3.9%、定年の引上げは2.4%、継続雇用制度の導入は25.6%、創業支援等措置の導入は0.1%であった。
創業支援等措置の導入率が低いのは?
厚生労働省の調査で「創業支援等措置」の導入率が0.1%と低いのは、主に制度の理解不足、導入・運用の難しさ、そして企業側のメリットが直接的に見えにくいことが要因として考えられます。
1. 制度の複雑さと理解不足
新しい働き方への不慣れ: 創業支援等措置は、従来の「雇用」という枠組みから離れ、業務委託契約や社会貢献事業への従事といった、新しい働き方を提供します。多くの企業や労働者にとって、こうした働き方はまだ一般的ではなく、制度の仕組みやメリット・デメリットの理解が十分に進んでいません。
手続きの複雑さ: 業務委託契約を締結する際は、個別に従業員の合意を得る必要があります。また、既存の社会貢献団体との連携や新たな社会貢献事業の立ち上げには、通常の雇用手続きとは異なる手間やコストがかかります。
2. 企業側のメリットが不明瞭
直接的な生産性への貢献が見えにくい: 「定年引き上げ」や「継続雇用制度」は、従業員が引き続き社内で業務を行うため、会社の生産に直接寄与することが明確です。一方で、創業支援等措置は、従業員が社外で活動するため、会社への直接的な貢献度が見えにくいことも企業にとってはマイナス要因です。
コスト負担の懸念: 業務委託や社会貢献事業への従事の場合でも、企業が何らかの形で費用を負担することになります。その費用に見合うリターンが、不透明なため、導入に踏み切れない企業が多いと考えられます。
3. 他の制度との比較
継続雇用制度の普及: 65歳までの雇用確保措置としてすでに広く普及している「継続雇用制度」を70歳まで延長することが、企業にとっては最も取り組みやすく、実績のある方法です。そのため、新しい制度を導入するよりも、既存の制度を延長する方が選ばれやすいという背景があります。
これらの理由から、創業支援等措置は、一部の先進的な企業で導入されているに留まっているのが現状です。
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