カテゴリー
解雇

解雇予告と解雇予告手当

Last Updated on 2023年10月28日 by

労働基準法の規定

解雇予告と解雇予告手当については、労働基準法第20条に定められています。

(解雇の予告)
労働基準法第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

つまり、労働者を解雇するときは、その理由にかかわらず、少なくとも30日以上前に解雇する旨を伝えなければなりません。これを「解雇予告」といいます。

解雇予告手当

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

予告をしないで解雇する、あるいは法律で求められている30日に満たない予告期間で解雇するときは、必要な日数分の平均賃金を支給しなければなりません。これを「解雇予告手当」といいます。

解雇予告手当の額

解雇予告手当の金額は、次の計算式によります。

平均賃金1日分×解雇日までの期間が30日に足りなかった日数

解雇日の10日前に解雇を予告する
平均賃金1日分×20日(30日-10日)

予告なしに即日解雇する
平均賃金1日分×30日

平均賃金とは

直前3ヶ月に支払われた賃金総額÷3ヶ月総日数 で計算します。

関連記事:平均賃金について

解雇予告手当の支払日

解雇予告手当を支払う日は、解雇日の当日に解雇を言い渡した場合は「解雇の当日」。解雇日より前に解雇を言い渡す場合は「解雇を言い渡した日」です。

解雇通知書の例

解雇は使用者から雇用契約を一方的に解除することです。契約の解除は口頭でも有効ですが、言った言わないの水掛け論になることがあるので、解雇の意思、解雇日、予告期間又は予告手当について記載した書面を交付する方がよいでしょう。

書式:解雇通知書のサンプル

解雇理由証明書を兼ねる場合は、解雇理由について記載します。

関連記事:解雇理由証明書について

認定があれば解雇予告が不要になる

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

第1項ただし書きは、①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合、②労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合は、解雇予告をせず、または解雇予告手当を支払わずに解雇できるという規定です。

この第3項で、その場合は行政官庁、つまり労働基準監督署長の認定を受けなければならないと定めています。

懲戒解雇の場合

「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」の典型的なケースは懲戒解雇です。

懲戒解雇の場合でも、解雇予告をしないで解雇するには労働基準監督署長の認定が必要です。

多額の使い込みなどの犯罪行為を原因とする懲戒解雇であっても、労働基準監督署長の認定を受けなければ解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いをしなければなりません。

認定を申請する場合は「解雇予告除外認定申請書」を所轄の労働基準監督署に提出します。様式は厚生労働省ホームページに掲載されています。

申請書には、就業規則、懲戒委員会議事録、解雇にいたった事情を書いた書類、従業員名簿、その他証拠となる書類を添付します。

労働基準監督署は、申請を受け付けると労働者本人を呼び出して事情を聴取します。決定がでるまでに数週間かかるでしょう。判断の基準は、使用者側に厳しいようです。

また、対象になるのは懲戒解雇にする前です。懲戒解雇してしまってから認定を求めても、すでに解雇してしまっているので、除外対象にはなりません。

解雇は容易ではない

「30日前に予告、あるいは所定の予告手当を支払いさえすれば解雇してもよいのでしょうか?」

労働基準法第20条は、従業員を解雇する場合において、「解雇予告の義務」と「解雇予告手当を支払うことによる解雇予告日数の短縮」について規定していますが、予告すればあるいは解雇予告手当を支払えば従業員を自由に解雇してよいとは書いていません。

「解雇予告手当さえ支払えば解雇しても良い」という考えは明らかな間違いです。

労働者を解雇できる条件は別の法律で定められています。

労働契約法第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

日本では、解雇が厳しく制限されているので、いったん雇い入れた労働者を解雇することはかなり難しくなっています。

解雇理由が弱ければ、労働者から不当解雇だという訴えが出されれば、負ける可能性が髙いのが現実です。負けて解雇無効となれば、解雇日以降の賃金など、多額の支払が待っています。

雇用形態によっては解雇予告が必要ない

労働基準法21条では、解雇予告と解雇予告手当の規定を適用しない労働者について定めています。

労働基準法第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者

それぞれに例外があることに注意してください。

日日雇い入れられる者であっても、1ヶ月を超えて使用されていれば予告または予告手当が必要です。

二箇月以内の期間を定めて使用される者であっても、最初に定めた日数(2ヶ月ではありません)を超えて使用されていれば予告または予告手当が必要です。

季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者であっても、最初に定めた日数(4ヶ月ではありません)を超えて使用されていれば予告または予告手当が必要です。

試用期間中の者であっても、14日を超えて使用されていれば予告または予告手当が必要です。

関連記事:試用期間について

認定の可能性があるのは、天災事変と、 従業員の責に帰すべき事由となっています。従業員の責に帰すべき事由のケースは、一般的には懲戒解雇が該当します。


会社事務入門解雇するときの注意点>このページ