退職勧奨の一般的説明
退職勧奨とは、会社が従業員に対して自主的な退職を促す行為です。これは、あくまで従業員本人の自由な意思決定に委ねられるものであり、強制はできません。
会社側の目的は、会社の経営状況の改善、組織の活性化、能力や適性の欠如が見られる従業員への対応など多岐にわたります。しかし、その実施方法を誤ると、従業員から「退職強要」として訴えられ、損害賠償請求や不当解雇の訴訟に発展するリスクがあります。
そのため、管理職は、従業員の意思を尊重し、穏やかで冷静な対話に努め、決して強制的・威圧的な言動をしてはなりません。
具体的な会話例
退職を促す際の穏当なアプローチ
シナリオ | 妥当な会話例 | ポイント |
会社の事業方針転換 | 「当社の事業が今後〇〇の分野に注力していくことになりました。それに伴い、〇〇さんのご経験とスキルを活かせるポジションが社内になくなってしまう可能性があります。ご相談させていただきたいのですが、今後のキャリアについて、当社での選択肢だけでなく、社外での可能性も視野に入れて考えてみませんか?」 | 会社の状況を説明し、従業員のスキルやキャリアを尊重する姿勢を示す。一方的に押し付けるのではなく、今後のキャリアについて一緒に考える姿勢を見せる。 |
従業員の能力不足 | 「〇〇さんがこれまでに努力されてきたことは承知しています。ただ、現在の業務に必要なスキルと〇〇さんの能力に、少しギャップが生じているように感じます。このままではお互いにとって良い状況とは言えません。今後のキャリアをより良くするために、別の道を探すことも選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?」 | 努力を認めつつも、現状の課題を具体的に示し、双方にとってのメリットを提示する。従業員の感情に配慮し、あくまで提案であることを強調する。 |
禁止される話し方(退職強要と見なされる言動)
以下の発言は、退職強要と見なされる可能性が高く、絶対に行ってはなりません。
- 「明日から来なくていい」「今すぐ辞めてもらう」
- 解雇に等しい一方的な通告であり、従業員の自由な意思決定を妨げる行為です。
- 「辞めなければ、部署を異動させる」「給料を減らす」
- 退職しない場合に不利益な扱いをほのめかし、従業員に心理的な圧力をかける行為です。
- 「辞めてくれないと、会社はやっていけない」
- 退職しないと会社に損害を与えるというプレッシャーをかけ、従業員に罪悪感を抱かせる行為です。
- 「君のような人間はどこにも通用しない」
- 人格を否定するような侮辱的な発言は、ハラスメントと見なされ、従業員に精神的苦痛を与える行為です。
- 「〇〇さんが辞めてくれるまで、この面談は終わりません」
- 長時間の拘束や、退職するまで面談を終わらせないという意思表示は、心理的な圧迫であり、退職強要と見なされます。
注意点
- 複数名での対応: 退職勧奨の面談は、必ず複数名の管理職で行い、言動の記録を取るようにします。これにより、後から言った言わないのトラブルを防ぎ、客観的な証拠を残すことができます。
- 複数名での対応の注意点: 面談の進め方によっては、従業員に心理的な圧迫を与え、「退職強要」と判断されるリスクが高まることに注意が必要です。したがって、複数名で面談を行う際には、面談の目的を明確にし、従業員の意思を尊重する姿勢を崩さず、威圧的な言動や長時間の拘束は絶対に避ける必要があります。
- 面談内容の記録: 面談の日時、場所、参加者、会話の内容(特に会社側の発言と従業員の発言)を詳細に記録し、従業員の署名をもらうようにします。
- 明確な退職意思の確認: 面談の最後に、従業員の意思が「退職」であることを明確に確認し、口頭だけでなく書面(退職届など)で受け取ることが重要です。
- 無理強いはしない: 従業員が退職に応じない場合は、それ以上無理強いをせず、面談を終了します。無理強いを続ければ、退職強要と見なされるリスクが高まります。
- 専門家への相談: 退職勧奨はデリケートな問題であり、ケースによっては法律的な知識が必要になります。迷った場合は、すぐに人事課に連絡・相談してください。