第221回国会(令和8年)で「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律」が成立しました。発注側会社(荷主企業・購入者)の実務担当者が理解しておくべき点を解説します。
ドライバー不足やトラック作業時間の制限等の課題に対応するため、発注側(荷主企業・購入者)にも明確な責任と義務を課す内容となっています。「運送業者任せ」にできなくなる点が最大のポイントです。
全荷主企業への「取り組むべき措置」の義務(配慮義務・努力義務)
- 対象: 規模を問わず、貨物の輸送を発注・受取するすべての荷主企業
- 改正の概要:
- トラックドライバーの「荷待ち時間(長時間の待機)」や「荷役時間(積み降ろし)」を短縮するための措置が求められます。
- 発注日時の工夫(リードタイムの確保)や、トラックの積載効率向上(適切なロットサイズでの発注等)の取り組みが努力義務化されました。
- 実務担当者が抑えるべきポイント:
- 出荷・受入スケジュールの見直し: 直前発注(短リードタイム)や無理な指定日時の見直し。
- 混雑緩和対策: 荷受バースの予約システムの導入や、受入時間枠の分散化。
- 着荷主としての配慮: 納品を受ける側(買主)であっても「荷受でドライバーを長時間待たせる」ことは法令上の配慮義務違反となり得ます。
「特定荷主」指定と義務の本格化(大規模荷主向け)
- 対象: 年間の取扱貨物量が一定規模以上(年間重量9,000万トンキロ、概ね重量9万トン前後が一つの目安)の大規模荷主
- 改正の概要:
- 国から「特定荷主」の指定を受け、計画作成や報告など法的な遵守義務が科されます。
- 違反には勧告・是正命令・罰金(最大50万円等)などのペナルティが設定されています。
- 実務担当者が抑えるべきポイント:
- 中長期計画の策定・提出: 荷待ち時間削減や積載率向上に向けた5年程度の年次改善計画の策定。
- 定期報告: 毎年度、トラックの待ち時間や積載率などの実施状況・実績を国へ報告。
- 物流統括管理者(CLO)の選任:役員級の者を「物流統括管理者」として選任し、自社の発注・物流体制を横断的に改善・監督させる義務。
多重下請構造の是正と適正運賃・書面交付の義務化
- 対象: 自社で物流手配(運送委託)を行う荷主・発注企業
- 改正の概要:
- 運送契約を結ぶ際、荷役作業や荷待ちに関する条件、および運賃・料金の内訳を明記した「書面交付(電磁的交付も可)」が義務化されました。
- 無理な下請け・孫請け(多重下請)によるドライバーの低賃金化・過酷労働を防ぐため、実運送体制の把握が求められます。
- 実務担当者が抑えるべきポイント:
- 発注・委託契約書の全般的な見直し: 基本契約書・個別契約書において、運送費だけでなく「積み降ろし作業料」「待機料」の項目・条件を明確に記載しているか確認。
- 不当な買いたたきの禁止: 燃料高騰や人件費上昇に伴う運賃交渉に対し、正当な理由なく据え置く行為は行政指導・社名公表等の対象リスクとなります。
社内横断的な体制整備(購買・販売・生産の連携)
- 対象: 社内で発注・手配・受入を行う全部門
- 改正の概要:
- 物流の効率化は物流部門(資材部・物流部など)だけでは達成できないため、営業(納品条件の調整)や購買(仕入時期の調整)、生産管理部門との連携が法律上求められています。
- 実務担当者が抑えるべきポイント:
- 社内ガイドラインの策定: 営業部門が顧客と無理な配送日程を約束しないルールづくりや、購買部門による発注平準化。
- データ把握とモニタリング: 工場・倉庫ごとのトラック待機時間の計測体制を構築すること。
発注側・実務担当者のチェックリスト
- 自社の取扱量確認: 自社が「特定荷主」の規模(年間数万トン規模〜)に該当するか試算
- 待機時間の現状把握: 自社工場・倉庫でのトラック平均荷待ち時間の算出・可視化
- 運送契約書の確認: 荷役料金・待機料金の明記と、書面化(または電子化)の徹底
- 他部門との連携: 営業・購買部門へ「発注リードタイム延長」「納品時間の平準化」の協力要請
