最新改正「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」について解説(2026年7月27日掲載)

第221回国会で成立した「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」について、企業の人事・労務実務担当者が把握しておくべき主な改正内容と、実務上のポイントを項目別にご案内します。

遺族(補償)年金における支給要件等の見直し(男女差の解消)

  • 改正の概要:
    • 夫に対する年齢・障害要件の撤廃: 従来、妻が亡くなった場合の夫に対する受給要件(妻の死亡時に「55歳以上」または「一定の障害の状態」)が撤廃され、性別による要件の違いが解消されました。
    • 年金額(支給日数)の統一: 遺族が1人の場合の年金額について、給付基礎日額の153日分(55歳以上または障害ありの妻の場合は175日分)と分かれていたものを、一律で175日分に改められました。
  • 実務担当者が抑えるべきポイント:万が一の業務災害発生時、被災労働者が女性・男性を問わず、同じ条件で遺族補償の手続き案内が必要となります。

労災保険給付請求権等の消滅時効期間の見直し(2年→5年)

  • 改正の概要:療養(補償)給付や休業(補償)給付などの消滅時効期間は原則2年間ですが、その性質上、業務起因性などの判断に時間を要する特定の疾病(政令で指定される疾病等)について、消滅時効期間が2年から5年へと延長されます。
  • 実務担当者が抑えるべきポイント:
    • 過去の労災相談・申請漏れへの再対応: 時効超過を理由に諦めていた・保留になっていた事案について、労働者や退職者から問い合わせがなされる可能性があります。
    • 出勤・賃金・就労データの長期保存: 時効延長に伴い、過去5年分に遡って労働時間や勤務状況の証明書提出を求められるケースが増えるため、退職者も含めた勤務実績データの保管体制・出力環境の点検が必要です。

労災保険の適用事業に関する暫定措置(暫定任意適用)の廃止

  • 改正の概要:小規模な農林水産業など一部の事業に認められていた「暫定任意適用措置(任意加入)」が廃止され、原則としてすべての事業が強制適用対象となります。
  • 実務担当者が抑えるべきポイント:関連会社や別部門等で農林水産分野などの小規模事業を営んでいる場合、未加入であれば新たに成立手続きが必要となります。

関連記事:労災保険と雇用保険の暫定任意適用事業

特別加入制度・特別加入団体の要件の法定化

  • 改正の概要:一人親方や特定受託事業者(フリーランス)等が労災保険に特別加入する際の「特別加入団体」について、業務運営や安全衛生・災害防止活動の適切な実施といった要件が法律上明確化されました。
  • 実務担当者が抑えるべきポイント:自社が業務委託している一人親方やフリーランスが利用している特別加入団体について、適切に運営されている団体かどうかの確認や、契約時の安全管理ルールの確認が求められます。

社会復帰促進等事業(特別支給金等)に関する不服申立て手続きの見直し

  • 改正の概要:これまで行政不服審査法の対象とされていた社会復帰促進等事業に関する決定(特別支給金の支給・不支給決定など)への不服申立てについて、労災保険給付本体と同様に「労働保険審査官および労働保険審査会」による審査請求・再審査請求の対象へと統一されました。
  • 実務担当者が抑えるべきポイント:不服申立て窓口が労災給付と同ルートに一元化されたことで、労働者や会社側の不服申立て手続きの負担や混同が軽減されます。

実務担当者のチェックリスト

  1. 社内規程・申請サポート手順の確認: 遺族補償申請時の説明書類等の更新
  2. 労働関係書類の保存管理: 出退勤・賃金台帳等の記録保管状況の点検(過去5年分への対応)
  3. 委託先・グループ会社の適用状況チェック: 特別加入団体や農林水産業関連の適用事業の確認