Last Updated on 2021年7月28日 by 勝
海外出張者には国内の労災保険法が適用されます。海外派遣者については労災保険の特別加入を利用した場合に適用されます。「出張」か「派遣」の判断が重要です。
海外出張の場合
海外出張中の事故等には勤務している会社等が加入している労災保険が適用されます。
国内の事業場に所属して、その事業場の指揮命令下において業務に従事しているからです。
海外に転勤や出向した場合
海外に転勤または出向する者、つまり海外派遣者には労災保険は適用されません。
海外出張と海外派遣の区別は、赴任の期間等によっては、微妙な場合があると思います。
厚労省の通達では、実態で判断するということになっています。具体的なことは労働基準監督署に照会する必要があります。次の表は厚労省のパンフレットから抜粋したものです。
区分 | 海外出張の例 | 海外派遣の例 |
業務内容 | 1 商談 2 技術・仕様などの打ち合わせ 3 市場調査・会議・視察・見学 4 アフターサービス 5 現地での突発的なトラブル対処 6 技術習得などのために海外に赴く場合 | 1 海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先企業など)へ出向する場合 2 海外支店、営業所などへ転勤する場合 3 海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)に従事する場合(統括責任者、工事監督者、一般作業員などとして派遣される場合) |
労災保険の特別加入制度
海外派遣者特別加入制度に加入した場合は、労災保険の適用は国内の場合に準ずることになります。
海外派遣者については、この制度への加入が不可欠です。
次のリンクは厚生労働省の「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」が掲載されているページへのリンクです。
概要を紹介します。
特別加入できるのは
国際協力事業団等開発途上地域に対する技術協力の実施事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する者
日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣されて海外支店・向上・現地法人・海外の提携先企業等海外で行われる事業に従事する者
海外で行われる常時300人以上(金融業、保険業、不動産業または小売業では50人以下、卸売業またはサービス業では100人以下)の労働者を使用する事業主
です。
上記に該当しても加入できない人もいます
派遣先事業の代表者は事業に従事する労働者とは認められないので特別加入できません。
一般的に、支店長や出張所長・現場責任者は、労働者としての側面が強いので特別加入できます。
留学者は業務に従事する者ではないので特別加入できませんが、海外研修や技術訓練等は労働関係の有無により判断されます。
特別加入の保険料
対象者の給付基礎日額(3500円から最大25000円)をもとに算出して労働基準監督署に申告・納付します。
海外派遣者については、 年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に1,000分の3(第3種特別加入保険料率)を乗じたものになります。
給付基礎日額とは対象労働者の日給換算額です。給付基礎日額が最大の25000円の場合、年間保険料は27375円となります。
ただし、年度途中で加入・脱退した場合は、特例により特別加入月数に応じた保険料算定基礎額により算出することになります。
海外勤務者以外の特別加入については→労災保険の特別加入制度