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労働災害

労災保険の特別加入

Last Updated on 2024年3月5日 by

労災保険の特別加入とは

労災保険は本来は雇用されている労働者のための制度です。

雇用されている労働者以外の人については、一定の要件を満たす場合は労災保険に加入することができます。特別に労災保険への加入を認めるという意味で「特別加入」制度と呼ばれています。

特別加入することができる者の範囲は、次の4種があります。​

□ 中小事業主等の特別加入
□ 一人親方等の特別加入
□ 特定作業従事者の特別加入
□ 海外派遣者の特別加入

特別加入のメリット

特別加入するメリットは、労働災害にあったときに、労働者並みの保護を受けられるという点です。

治療が自己負担なしで受けられ、労働ができない場合の休業補償給付や、障害が残った場合の障害補償給付があり、万が一死亡した場合は、遺族に対して遺族補償給付を受けることができます。

関連記事:労災保険の給付

中小事業主等の特別加入

他の従業員と同様の業務に従事している中小事業主が対象です。労働保険事務組合への加入などが要件になります。中小企業とは、常時使用する労働者が、小売等で50人以下、卸サービスで100人以下、その他の事業で300人以下です。

労働者を1人以上雇用している必要がありますが、その雇用が通年雇用でなくても、1年間に100日以上使用している場合には、常時雇用しているものとして取り扱われます。

事業主の家族従事者や、代表者以外の役員なども加入できます。

特別加入の要件

□ 雇用する労働者について、労災保険が適用されていること
□ 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること

特別加入の手続き

労働保険事務組合を通じて、特別加入申請書(中小事業主等)を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出します。労働局長の承認があれば加入することができます。

一人親方等の特別加入

一人親方等とは

特別加入することができる一人親方等とは、次の事業を、常態として労働者を使用しないで行う者です。

1.自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)または原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業(自転車等は2021年9月から)
2.建設の事業(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊もしくは解体又はその準備の事業)(大工、左官、とび職人など)
3.漁船による水産動植物の採捕の事業(7に該当する事業を除きます。)
4.林業の事業
5.医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業
6.再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業
7.船員法第1条に規定する船員が行う事業
8.柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業(2021年4月から)
9.高年齢者雇用安定法第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づいて高齢者が行う事業(2021年4月から)
10.あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に基づくあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師が行う事業
11.歯科技工士法第2条に規定する歯科技工士が行う事業

特別加入の要件

一人親方等の団体(特別加入団体)​の構成員であることが必要です。一人親方等の団体を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行います。

特別加入の手続

特別加入団体を通じて、特別加入申請書(一人親方等)を、所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出します。

特定作業従事者の特別加入

特定作業従事者とは

特定作業従事者とは、次のいずれかに該当する方です。

□ 特定農作業従事者
□ 指定農業機械作業従事者
□ 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者(職場適応訓練従事者、事業主団体等委託訓練従事者)
□ 家内労働者及びその補助者
□ 労働組合等の常勤役員
□ 介護作業従事者及び家事支援従事者
□ 芸能関係作業従事者(2021年4月から)
□ アニメーション制作作業従事者(2021年4月から)
□ ITフリーランス(2021年9月から)

特別加入の要件

特定作業従事者の団体(特別加入団体)の構成員であることが必要です。

特別加入団体を事業主、特定作業従事者を労働者とみなして労災保険の適用を行います。)

特別加入の手続

特別加入団体を通じて、特別加入申請書(一人親方等)を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出します。

海外派遣者の特別加入

海外に派遣者されて業務に従事する人が対象です。海外派遣者の手続きは派遣元の団体または事業主が行います。

関連記事:海外勤務者の労災保険

複数事業で働く者

複数事業労働者やその遺族への労災保険給付は、全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎として、保険給付額を決定します。

特別加入している場合も同様です。複数の就業について特別加入をしている人も、「複数事業労働者」に準じて取り扱いされます。

2020年9月1日以降に発生したけがや病気等について対象です。

特別加入制度の拡大

2021年4月1日からの対象拡大

①芸能関係作業従事者
②アニメーション制作作業従事者
③柔道整復師
④創業支援等措置に基づき事業を行う方

2021年9月1日からの対象拡大

①原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業(フードデリバリーの宅配代行業に従事する方など)
②情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業(フリーランスのITエンジニアなど)

2024年秋から(予定)

いわゆるフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が2023年4月に成立したとき、さらに幅広くフリーランスが労災加入できる制度を求める付帯決議があり、厚生労働省の労働政策審議会の部会で審議してきました。

今のところ、2024年秋のフリーランス法の施行時期に合わせて、労災保険法の施行規則が改正されて、全てのフリーランスが労災保険に加入できる予定です。

関連記事:フリーランス法のあらまし

厚生労働省

詳しくは厚生労働省ホームページ


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