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労働災害

労災保険の給付

Last Updated on 2022年11月11日 by

労災保険には手厚い給付がある

仕事上のケガや病気、通勤時のケガ等に対しては、健康保険ではなく、労災保険を使用することになっています。

関連記事:労災保険における通勤災害とは

労災保険の内容は、健康保険と似通っています。違うところは、給付の内容が、健康保険を上回るところです。カッコがついているのは業務災害と通勤災害の違いです。業務災害の場合は療養補償給付といいます。通勤災害の場合は療養給付といいます。通勤災害の場合は労働基準法上の事業主責任がないので「補償」がつきません。

療養(補償)給付

病気やケガで病院に行って治療を受ければ、健康保険の場合だと自己負担は3割です。労災保険を使える場合は原則として自己負担無しで治療等を受けることができます。

休業(補償)給付

労働者が療養のために働けなくなり賃金を受けれないときに、健康保険は傷病手当金という制度があり賃金の3分の2を最大1年6か月支給ます。労災保険からは賃金の60%に相当する休業補償給付が支給されます。休業特別支給金が20%あるので、合計で80%が給付されます。しかも、給付の名称等は変わることがありますが、原則として治るまで期限なしで支給されます。

なお、労災保険から休業補償給付が支給されるのは休業4日目からです。3日目までは労災保険で補償されませんが、業務災害の場合は、事業主がその3日分を補償する義務があるので事業主から受け取ることができます。

その他の給付

傷病(補償)年金

労働者が療養開始後1年6ヶ月経過しても治らないとき、その傷病の程度により傷病補償年金が支給されます。

障害(補償)給付

労働者がに障害が残った場合、治癒(ちゆ)した段階で、残った障害の程度に応じて、障害補償給付が支給されます。

遺族(補償)年金

労働者が業務上、または通勤時に事故等により死亡したときに、遺族に遺族補償年金が支給されます。

介護(補償)給付

障害が残り介護を受けているとき、介護補償給付が支給されます。

葬祭料(葬祭給付)

労働者が業務上、または通勤時に事故等により死亡したときに支給されます。

二次健康診断

定期健康診断の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の所見があるとき、二次健康診断と保健指導を受けることができます。

二次健康診断等給付

複数業務要因災害に関する保険給付

それぞれの会社ごとの基準では労災認定されなかった場合でも、勤務している複数の会社における負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して、労災認定ができるかを判断します。

また、複数の会社等で働いている場合には、全ての会社等の賃金額を合算した額を基礎として労災保険の給付額が算定されます。

時効に注意

給付が手厚くても手続きしないで一定の時間がたってしまうと時効によって給付を受けられなくなります。労災保険の時効は、短期給付は2年、長期給付は5年(遺族・障害)です。 時効の期間を過ぎてしまうと請求できません。

一方、会社の安全配慮義務違反の債務不履行責任を根拠に損害賠償請求をする場合には、消滅時効の期間は結果が発生してから10年となっています。しかし、2020年4月1日以降、労災事故による損害賠償請求については5年の消滅時効に統一されました。労災による死亡の場合には、被災労働者が死亡した日の翌日から5年、けがをした場合には、被災労働者の症状が固定した日から5年で、消滅時効にかかることになります。

時効について素人判断すると大変な損をすることがあります。労災の手続きに時間がかかっていると感じたとき、損害賠償請求を考えたときは、早めに弁護士に相談しましょう。

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