カテゴリー
Q&A

Q&A 自己都合退職と会社都合退職はどういうところが違うの?

Last Updated on 2025年7月12日 by

自己都合と会社都合、何が違うんですか?課長に聞いてみた!

新人人事担当(以下、新): 課長、先日、退職される方の手続きで、自己都合退職と会社都合退職という区分があることを知ったのですが、この違いがよくわからなくて…。特に、退職されるご本人にとって、何がどう違うのか、気をつけるべき点は何なのか、教えていただけますでしょうか?

課長: いい質問だね。人事担当として、この違いはしっかり理解しておく必要があるよ。労働者の方のその後の生活に大きく関わることだからね。

自己都合退職と会社都合退職の基本的な違い

課長: まず、基本的な違いから説明しよう。

自己都合退職は、労働者自身の意思で退職ことをいうする。例えば、「転職したい」「結婚して引っ越す」「親の介護が必要になった」といった、個人の事情による退職だね。

会社都合退職は、会社側の都合で労働者が退職を余儀なくされる場合を指す。具体的には、「会社の倒産」「リストラ(整理解雇)」「希望退職制度への応募」「会社の移転で通勤が困難になった」などが代表的だ。場合によっては、パワハラや嫌がらせなど、会社側の問題で働き続けられなくなった場合も、会社都合と認められることがあるよ。

新: なるほど、退職の原因が自分にあるか、会社にあるか、ということですね。

手続きの違い

課長: そうだね。そして、この「自己都合」か「会社都合」かによって、退職時の手続きやその後の待遇が大きく変わってくるんだ。労働者側から見て、特に気をつけるべき手続きの違いは次の通りだ。

退職願・退職届の提出

自己都合退職のときは、原則として、労働者自身が会社に退職願や退職届を提出する必要がある。就業規則で定められた期間(一般的には1ヶ月~2ヶ月前が多い)までに、上司に退職の意思を伝え、その後、正式な書類を提出するのが一般的だ。一度提出した退職届は、原則として撤回できない点に注意が必要だよ。

会社都合退職のときは、労働者側から退職願や退職届を出す必要はない。会社側が解雇通知などを発行することになる。希望退職制度に応募する場合は、会社が提示する書類に署名する形になるね。

引き継ぎ期間

自己都合退職の場合で、次の転職先が決まっている場合などは、引き継ぎ期間を考慮して、余裕を持った退職日を設定することが重要だ。会社としっかり相談して、円満退職を目指すのが望ましいね。

会社都合退職の場合は、会社からの一方的な解雇が実施されて急に退職日が決まることも少なくない。十分な引き継ぎ期間が確保できないこともある。

退職する労働者が気をつけるべき点

課長: さて、ここが一番重要だ。労働者の立場で、自己都合と会社都合のどちらになるかで、その後の生活に大きな影響が出るから、特に以下の点に注意してほしい。

雇用保険の基本手当(失業手当)の受給条件

自己都合退職の場合は、基本手当が支給されるまでに、「7日間の待期期間」に加えて、1か月又は3か月の給付制限がある。つまり、退職後すぐに基本手当はもらえず、約1か月~3か月の無収入期間が生じる可能性が高い。

会社都合退職の場合は、7日間の待期期間のみで基本手当が支給される。給付制限期間がないため、自己都合に比べて早く基本手当を受け取ることができる。

それと給付額が違ってくる。会社都合退職の方が、基本手当の給付日数が長くなる傾向にある。

新: え、基本手当がもらえるまでの期間と、もらえる期間も違うんですか!これは大きいですね。

課長: そうなんだ。だからこそ、本当は会社都合に該当するのに自己都合として処理されそうになった場合は、きちんと異議を申し立てるべきなんだよ。場合によっては「特定受給資格者」や「特定理由離職者」として、自己都合でも会社都合に近い扱いになるケースもあるから、ハローワークで相談することも大切だ。

退職金の支給額

会社の退職金規程によるが、自己都合退職の場合、一般的に会社都合退職よりも退職金が減額されるケースが多い。会社への貢献度という観点から、会社都合の方が有利に設定されていることが多いんだ。

また、希望退職制度では、退職金の上乗せが提示されるケースもあるね。

転職活動への影響

自己都合退職は、面接などで退職理由を問われた際に、ポジティブな理由(キャリアアップのため、など)を説明しやすい。一般的に転職活動で不利になることは少ない。

会社都合退職は、会社の倒産やリストラなど、会社側に明らかな原因がある場合は、転職活動に大きな影響はない。しかし、自己の責任による解雇(懲戒解雇など)の場合は、転職活動で不利になる可能性がある。面接で退職理由を詳しく聞かれることも想定されるので、どう答えるか準備しておくことが重要だ。

その他

健康保険・年金は、自己都合退職も会社都合退職も違いはない。会社を退職すると、健康保険は任意継続、国民健康保険への切り替え、家族の扶養に入る、などの選択肢から手続きしなければならない。年金も国民年金への切り替え手続きが必要になるので、ハローワークでの手続きと合わせて、市区町村役場での手続きも忘れないようにしよう。

新: わかりました!失業保険の待期期間や給付日数、退職金、そして転職活動での印象まで、こんなに違うんですね。退職する方から相談があったら、これらの点を踏まえて、状況をしっかり確認することが大切だと感じました。

課長: その通りだ。労働者の不利益にならないよう、適切な退職区分になるように配慮するのは人事の重要な役割だよ。もし、会社都合なのに自己都合で処理されそうになったり、どちらの区分になるか判断に迷うようなケースがあったりしたら、いつでも私に相談してくれ。

新: はい!ありがとうございます!


会社事務入門Q&A 徹底解説シリーズ>このページ