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労働保険

役員や家族等の労働保険は加入条件に注意が必要です

Last Updated on 2023年10月11日 by

役員の扱い

法人の役員は原則として労災保険や雇用保険が適用されません。ただし、従業員としての身分がある場合(いわゆる使用人兼務役員)は被保険者になれる場合があります。

雇用保険の手続き

役員であっても、部長、支店長、工場長などの会社の従業員としての身分も兼ねている場合は、就労実態や給料の額などからみて労働者としての性格が強く認められるのであれば、例外的に雇用保険の被保険者として認められることがあります。

この適用を受けるには、公共職業安定所所長の承認が必要です。ハローワークに雇用保険被保険者資格取得届を提出するときに、同時に「兼務役員等の雇用実態証明書」を提出しなければなりません。

その際、定款、議事録、登記簿謄本、就業規則、賃金規程、役員報酬規程、賃金台帳などを用意します。必要書類が多いので事前に確認してから提出しましょう。

特に、賃金規程、役員報酬規程、賃金台帳等によって、当該役員の給与の役員報酬部分と従業員賃金部分の別が明確に説明できるものである必要があります。

適用が認められた場合は、当該兼務役員分の雇用保険料は、(役員報酬分を除いた)従業員分賃金に対して保険料率を乗じて計算します。離職票に記載する賃金支払い額も同様です。失業給付等においては、従業員分賃金で算出された額が給付されます。

労災保険の手続き

ハローワークのように一人一人について手続きする必要はありません。

雇用保険が資格取得の申請時に判断されるのに対し、労災保険は、個々の労働者毎に加入の手続きをする必要がないため、労災事故が発生した後に請求をし、そこで初めて労働者性について判断されるためです。

従業員としての身分をもつ役員が労災事故にあったときに、労災保険での扱いを望んだとしても、労災保険の給付を受けることができない場合もあります。また、身分としての労働者性が認められたとしても、役員としての仕事をしているときの事故は対象になりません。

労災保険料の計算は、雇用保険料と同様に、役員としての報酬と従業員としての賃金を分離して、役員としての報酬を除いた部分を対象として記載します。給付を受けるときは、失業給付等と同様に従業員分賃金をもとに給付の金額が算定されます。

労災保険の適用が受けられない可能性があるので、労災保険の特別加入を検討することをお勧めします。ただし、企業規模などの制限があります。
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同居の親族・家族従業者の扱い

同居の親族・家族従業者は原則的には雇用保険の被保険者、労災保険の対象者になりませんが、条件によっては被保険者等になることができます。

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雇用保険の手続き

同居の親族であっても常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において、以下の要件をすべて満たす方については、被保険者として取扱うことができます。

1、日常的に仕事を行う際に、事業主の指揮命令に従っていることが明白なこと
2、就業の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること
3、事業主と利益を一にする地位(取締役等)にはないこと

この適用を受けるには、公共職業安定所に「同居の親族雇用実態証明書」を提出する必要があります。

この場合、形式的には法人であっても実質的には代表者の個人事業であると認められるケースは、同じように扱われることがあります。公共職業安定所にご相談して下さい。

労災保険の手続き

常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において一般事務又は現場作業等に従事し、かつ、次の要件をすべて満たす方については、労災保険法上の労働者としてあつかわれます。

1.日常的に仕事を行う際に、事業主の指揮命令に従っていることが明白なこと

2.就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もそれに応じて支払われていること。

特に、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等及び賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り日及び支払の時期等について、就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。


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