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労働災害

労災上乗せ保険について

Last Updated on 2023年10月20日 by

労災上乗せ保険とは

従業員が業務中に病気やケガをしたときには、政府が運営する労働者災害補償保険(労災保険)によって災害補償が行われます。

しかし、労災保険がカバーしてくれるのは、損害の全てではありません。

従業員が被災した時に「労災保険が適用できるならそれでよいのではないか」と思っている経営者も少なくありません。

確かに会社に全く落ち度がない事故等であれば、見舞金程度で済むかもしれません。

ところが、

労働災害が起こった原因が、会社に何らかの不手際があるなど、会社の責任を問えるような場合には、従業員や遺族が会社に対して損害賠償を請求することがあります。

そして、そのような損害賠償請求は増えています。

そうした損害賠償金は、労災保険だけではカバーしきれないので、不足の分は会社が支払わなければなりません。場合によっては巨額になることがあります。

そのようなリスクに備える保険が、労災上乗せ保険です。

労災上乗せ保険の一般的内容

労災上乗せ保険は、労災保険だけではカバーしきれない補償範囲をカバーしてくれます。

強制加入である政府の労災保険は自賠責保険のようなもの、労災上乗せ保険は任意保険のようなもの、と考えてもよいでしょう。

日頃の管理が簡単

労災上乗せ保険には、契約時に名簿を書いて提出する必要がない、無記名方式の保険が多くあります。

人の入れ替わりが多い事業場でも、掛け忘れがなくて安心です。同じ作業現場でも日によってメンバーが替わる建設現場などでは、無記名方式の保険がとても役に立ちます。

従業員の福利厚生になる

企業が労災上乗せ保険に加入すれば、万一のときに労災保険以上の補償があるので、従業員に対する福利厚生が充実することになります。

保険料は損金処理できる

会社が払う労災上乗せ保険の保険料は、全額を損金として処理をすることができます。

労災上乗せ保険は、労働災害総合保険など、いろいろな名称で、損害保険会社から発売されています。

上乗せ保険を導入したときの規程例

法定外補償給付規程

第1条 会社は、労災保険給付以外の災害の補償及び損害のてん補の目的で、会社が認定した範囲で法定外補償給付を行う。

2 前項の規定にかかわらず、次の場合には法定外補償給をしないか、制限することがある。

(1)従業員が、悪意、故意、過失もしくは自由意志の仲介によって死亡、または傷病にかかった場合、あるいは傷病の程度を増進させ、もしくはその回復を妨げた場合は法定外補償給をしないか、制限することがある。
(2)災害が第三者の行為によって生じた場合の保険給付は、加害者からの損害賠償及び補償を受けることを先にし、その限度において法定外補償給をしないか、制限することがある。
(3)法定外遺族補償を受けるべき者の受領代表者は、相続人たる遺族であり、かつ保険給付の遺族補償受給権限者とする。ただし、その受給権者に支給することが不適当であると会社が認めた時は、その遺族の受領代表者を変更し、または遺族以外の者に支給することがある。
(4)従業員または遺族は、法定外補償給付を受ける権利を譲渡することはできない。

(任意保険への加入)
第2条 会社は、本規程による法定外補償給付をなすため、任意保険の加入手続きを行うものとする。

(給付内容)
第3条 本規程による保険給付、法定外補償給付の種類、内容、支払期限・免責、支払時期、保険代位、各保険の発行時期等については、労働基準法及び労災保険法、および任意保険制度の各法令、約款の定めるところによるものとする。

(各種保険、共済手続きへの協力)
第4条 従業員は、本規程による任意保険に関する保険加入手続及び保険金の請求・変更手続に関し、会社の求めに応じ、所定の届出書、請求書等の作成を会社に委任し、またはそれらの作成に協力するものとする。

(法定外補償給付の損害賠償との関係)
第5条 法令による災害補償、第4条に規定する法定外補償給付は、民法による民事賠償と相互に関連するものとし、それぞれの補償あるいは保険給付の全ては、同一の傷病理由についての遺失利益、慰謝料及び療養諸費等の負担の一切に含むものとし、その補償及び保険給付等のすべての価額の限度において民法の損害賠償等の責めを免れる。

2 前項の災害補償・法定外補償給付の合わせた額が、同一の理由に基づく損害賠償額を超えるときは、会社はその超える額については、当該災害の他の損害に充当する。

附則 この規程は令和〇年〇月〇日から実施する。


就業規則に根拠規定が必要です。
災害補償|就業規則

実際に法定外補償給付についての規程を作成する際は、保険契約を締結する保険会社と協議して、作成してください。

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