Last Updated on 2025年6月21日 by 勝
雇い止めとは
有期労働契約は、期間が満了すれば当然に退職になるのが一般的ルールです。当初の契約が終了するのですから、解雇という問題は発生せず、自然に退職になります。これを「雇い止め」といいます。
雇止めをするためには、まず雇用契約を締結する段階で、契約更新に関する事項が明示されていなければなりません。
契約更新についての記載例
□ 自動更新する
□ 更新することがある
□ 契約の更新はしない
「更新することがある」という契約であれば、どういう基準で決めるのかを明示しなければなりません。
例
□ 契約期間満了時の業務量により判断する
□ 労働者の勤務成績、態度により判断する
□ 労働者の能力により判断する
□ 会社の経営状況により判断する
□ 従事している業務の進捗状況により判断する
等
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雇止めの理由を記した証明書
雇止めに際して、労働者から更新拒否の理由について証明書を請求されたときには遅滞なく交付しなければなりません。これは、雇い止め後に請求された場合も同じです。なお、労基法第22条の退職証明とは別のものです。
この告示について発出された通達、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準 (通達)平 20.1.23基発第 0123005号」には、これに記載する「雇止めの理由」は、 単に「契約期間が満了したため」ではならないとしています。
例えば、として次のような例をあげています。
□ 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
□ 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、 本契約は当該上限に係るものであるため
□ 担当していた業務が終了・中止したため
□ 事業縮小のため
□ 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
□ 職務命令に対する違反行為を行ったこと、 無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
等
雇い止めが無効になるケース
原則として契約期間が満了すれば雇用契約は終了しますが、一定の場合にはこの雇い止めが無効と判断されることがあります。これは「雇い止め法理」と呼ばれ、労働契約法第19条に規定されています。
雇い止めが無効となる主なケースは、以下の2つのいずれかに該当し、かつ雇い止めに客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合です。
有期労働契約が過去に繰り返し更新されており、雇い止めが無期雇用労働者の解雇と社会通念上同視できると認められる場合
具体的には、以下のような事情が総合的に考慮されます。
契約更新の回数や通算の雇用期間が長い場合
何度も契約更新が繰り返され、長期間雇用が継続していると、実質的に期間の定めのない契約と変わらないと判断されやすくなります。
業務内容が恒常的・基幹的なものである場合
臨時的な業務ではなく、正社員と同様の恒常的な業務に従事していた場合。
更新手続きが形骸化している場合
契約更新の際に面談や説明がほとんどなく、形式的に契約書にサインするだけなど、更新手続きが実態を伴っていない場合。
他の労働者の更新状況
同様の地位にある他の労働者が、基本的に雇い止めされることなく更新され続けている場合。
労働者が有期労働契約の更新を期待することについて、合理的な理由がある場合
具体的には、以下のような事情が総合的に考慮されます。
使用者が継続雇用を期待させるような言動をしていた場合
「これからもよろしく」「長期で働いてほしい」などの言動があった場合。
契約期間や更新回数の上限が明示されていなかった、または十分に説明されていなかった場合
契約書に更新の上限が明記されておらず、労働者が無期限に更新されると期待するのが自然であった場合。
業務が継続的に存在し、その業務に労働者が不可欠であった場合。
上記のいずれかの要件を満たし、かつ以下の要件も満たす必要があります。
労働者の契約・更新の申し込みがある
労働者が有期労働契約の更新の申し込みをしたこと、または期間満了後遅滞なく契約の申し込みをしたこと。
雇い止めに客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合
さらに、これらの要件を満たしても、雇い止めに客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合は、雇い止めが有効となることがあります。客観的に合理的な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
・事業の縮小や廃止、経営難など、使用者側のやむを得ない事情。
・労働者の職務怠慢、勤務態度不良(無断欠勤・遅刻の繰り返しなど)、不正行為、能力不足など、労働者側に原因がある場合。ただし、これらの理由が客観的な証拠に基づき、十分に警告や指導が行われていたかどうかも判断要素となります。
・担当業務が終了したこと。
雇い止めが無効かどうかは誰が判断するのか?
雇い止めが無効かどうかは、最終的には裁判所が判断します。
労働者と使用者間で雇い止めについて争いが生じた場合、まず話し合いや労働局によるあっせん、労働審判などの手続きがとられることがあります。
しかし、これらの手続きで解決に至らない場合は、労働者が雇い止めの無効を主張して、地位確認(雇用契約が継続していることの確認)や賃金支払いを求めて裁判を起こすことになります。
裁判所は、上記の「雇い止め法理」に基づき、個別の事案における様々な事情(契約更新の回数や通算期間、業務内容、使用者側の言動、更新手続きの実態、雇い止めの理由など)を総合的に考慮して、雇い止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるかどうかを判断します。
雇止めが無効とされた場合、ただちに無期契約に転換になるのではありません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されたことになります。