Last Updated on 2025年6月14日 by 勝
募集・採用における差別的取扱いの禁止
これは採用活動において最も重要な原則の一つです。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法は、募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・解雇・労働契約の更新など、あらゆる段階において、性別を理由とする差別的取扱いを禁止しています。
(性別を理由とする差別の禁止)
第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
三 労働者の職種及び雇用形態の変更
四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
また、いわゆる間接差別を禁止しています。具体的には、均等法施行規則に定められています。
(実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置)
第二条 法第七条の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 労働者の募集又は採用に関する措置であつて、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
二 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
三 労働者の昇進に関する措置であつて、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの
例えば、次のような行為が禁じられています。
・特定の性別に限定する募集(「男性歓迎」「女性限定」など)
性別を理由とする採用基準の設定
・面接において性別を理由とした質問(「結婚の予定は?」「子供を産んだらどうする?」など)
・募集職種に「セールスマン」「看護婦」といった性別を表す名称を使用すること
・転勤や職務内容について性別を理由とする取り扱いをすること
労働基準法
均等待遇の原則を定めています。
(均等待遇)
第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
労働施策総合推進法
募集採用にあたって年齢に関わらず均等な機会を与えることを義務付けています。
(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
第九条 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
障害者雇用促進法
事業主は、労働者の募集及び採用に関し、障害者であることを理由として差別してはならないと定めています。
(障害者に対する差別の禁止)
第三十四条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。
第三十五条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
障害者の雇入れ努力義務、一定数の障害者を雇用しなければならない旨の規定があります。(障害者雇用促進法37条、43条)
関連記事:障害者雇用率制度
青少年雇用促進法
若者の円滑な就職と職場への定着を促進するための法律です。
企業が新卒者等を募集する際に、募集情報等を提供することが努力義務とされています。
労働者派遣法
違法派遣の場合に直接雇用の申し込みをしたものとみなすとの規定があります。(労働者派遣法40条の6)
関連記事:派遣労働者受入れの注意点
個人情報の取扱い
応募者の個人情報は、非常にデリケートな情報であり、その取扱いには細心の注意が必要です。
個人情報保護法
個人情報を取得する際には、利用目的をできる限り特定し、本人に通知または公表しなければなりません。採用活動においては、「採用選考のため」「入社手続きのため」など、具体的に明示する必要があります。
取得した個人情報が漏洩、滅失または毀損することのないよう、組織的、人的、物理的、技術的な安全管理措置を講じる義務があります。
本人の同意なく、個人情報を第三者に提供することは原則として禁止されています。
厚生労働省の「採用選考における個人情報保護に関する指針」も参考にしなければなりません。
募集・採用の表示に関する規制
求人広告の記載内容にも注意が必要です。
職業安定法
職業安定法は、虚偽の広告をしたり、虚偽の条件を提示して労働者を募集することを禁止しています(第65条)。賃金、労働時間、仕事内容、勤務地など、実際と異なる内容を記載すると罰則の対象となります。
求人者は、求人の申込みに当たって、従事すべき業務の内容、労働時間、賃金その他の労働条件を明示しなければなりません。(第5条の3)
募集時に明示した労働条件を、合理的な理由なく変更することはできません。(第5条の4)
不当景品類及び不当表示防止法
求人広告において、実際よりも著しく優良であると誤認させるような表示(虚偽の表示や誇大な表示)は、不当表示として規制の対象となる可能性があります。
ハローワークの求人に関する規制
ハローワークを通じて求人を行う場合、ハローワークの指導に従う必要があります。法令遵守はもちろんのこと、不適切な求人内容や差別的な表現は受け付けてもらえません。
内定に関する注意点
内定は、解約権留保付労働契約と解釈されることが多く、内定取消しは解雇に準じるものとして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるものでなければ許されません。安易な内定取消しは、紛争の原因となります。
関連記事:内定を出すときの注意点
内定通知と同時に、労働条件通知書を交付し、労働条件を明確にに示さなければなりません。誓約書などを取り交わす際も、その内容が法令に反していないか確認が必要です。
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まとめ
採用にあたって、どのような人を雇い入れるか、どのような条件で雇うかについては原則として雇い入れる側が自由に決めることができます。ただし、法律その他による特別の制限がある場合はその定めに従わなければなりません。
これらの法律を理解し、適切に遵守することで、円滑な採用活動を行い、予期せぬトラブルを避けることができます。これまでもこうしてきた、どこでもそうしている、と考えるのはリスキーです。疑問点や不明な点があれば、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。