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採用の事務

採用の自由とその限界

Last Updated on 2021年10月14日 by

採用の自由とは

採用の自由とは、使用者が「自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」という自由です。これは、最高裁が三菱樹脂事件で示しました。

解雇が抑制されるわが国の雇用慣行のもとで、採用の自由は、企業の有する人事権の一つとされています。

採用の自由の内容

募集方法の自由

使用者がどのような方法で労働者を募集しても自由です。

学校や公共職業安定所を通さなくても構いません。公募しなくても構いません。縁故で募集しても構いません。

採用数の自由

いつ募集するか、何人雇い入れるか、どのような能力をもつ労働者を雇い入れるかなどについても使用者が自由に決めることができます。

調査の自由

雇い入れる予定の労働者について調査することも原則として自由です。

三菱樹脂事件における最高裁判決は「企業者が雇用の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。としています。

ただし、社会通念上許されない手段方法による調査、応募者のプライバシーなどの侵害にあたるような調査を行うことはできません。

また、応募者本人の同意を得ないで行ったHIV抗体検査がプライバシー侵害の違法行為とされた裁判例もあります(東京地裁 警視庁警察学校事件)。

選考の自由

どのような者をどのような基準で採用するかは使用者の自由です。

採用においては、思想信条を理由に不利に扱ったとしても許容されます(上記判例)。

ただし、採用後はそのような差別は許されません。「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。(労働基準法第3条)」が適用されます。

法律による制限

上記の判例にも、「法律その他による特別の制限がない限り」という条件がついています。

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法は、募集および採用に関して、性別による差別を行うことを禁止しています(第5条)。

均等法第7条は、いわゆる間接差別を禁止しています。具体的には、均等法施行規則に定められています。

均等法施行規則第2条
一 労働者の募集又は採用に関する措置であつて、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
二 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
三 労働者の昇進に関する措置であつて、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの

労働施策総合推進法

募集採用にあたって年齢に関わらず均等な機会を与えることを義務付けています(第9条)。

障害者雇用促進法

障害者の雇入れ努力義務、一定数の障害者を雇用しなければならない旨の規定があります。(障害者雇用促進法37条、43条)、

労働者派遣法

違法派遣の場合に直接雇用の申し込みをしたものとみなすとの規定があります(労働者派遣法40条の6)。

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