カテゴリー: 採用

  • コネ採用はありか、なしか?会社が考えるべきメリットとリスク

    有力な取引先の社長から、自分の息子を雇ってほしいという依頼があり、断りきれずに採用しました。商売の上で良い影響があるだろうという判断もありました。ところが、社内から思いがけず強い反発がありました。今回は納得させましたが、実は、今後も機会があればそのような採用をして、人脈を広げていこうと思っていました。アドバイスをいただけますか。

    有力な取引先との関係維持は事業にとって非常に重要であり、そのために人脈を広げることは経営判断として当然のことです。ただ、社内の反発があるとすれば、組織を運営していく上で無視できない懸念点です。より円滑な解決策を見出すための考え方をいくつか提案させてください。

    採用理由を明確にする

    取引先の息子さんの採用は、会社の利益を考えた上での判断でした。これは経営者として正しい側面があります。しかし、社内の反発もまた、会社の健全な運営を願う気持ちから生じたものだと思われます。両者の意見は、会社の成長という同じ目標に向かっているはずです。

    このあつれきを乗り越えるためには、「採用の目的」を明確にし、社内に共有することが重要になります。単に「取引先の息子だから」ではなく、「その取引先と関係が深まる具体的な効果」「当社で預かって将来の幹部候補として育成するため」など、具体的な目的を添えて説明することで、採用の妥当性を理解してもらいやすくなります。

    採用基準の明確化

    今回のケースで反発があったのは、採用が「特別なルート」で行われたと見なされたからかもしれません。社内の従業員、特に幹部社員にとっては、自分たちが築き上げてきた会社の文化や採用プロセスが軽んじられたと感じた可能性があります。

    今後、人脈を通じた採用を検討される際は、一般的な採用プロセスと統合することを考えてみてはいかがでしょうか。例えば、以下のような方法が考えられます。

    • 人脈採用の基準を設ける: 取引先からの紹介であっても、求めるスキルや経験、人柄といった明確な基準を設ける。
    • 一般的な採用プロセスにのせる: 面接や評価のプロセスに幹部社員も参加させ、採用の決定に彼らの意見も反映させる。

    これにより、採用が透明化され、従業員の納得感も高まります。

    信頼関係の再構築

    今回の件について、改めて意見を聴取する必要があるかもしれません。

    • なぜ反発したのか、本音を聞く場を設ける。
    • 今後の採用方針をどうするべきか、提言を聞く。

    経営者として会社全体のことを考える一方で、現場を支える従業員の気持ちにも配慮する姿勢を見せることで、組織はより強固なものになります。

    コネ採用のリスク

    基本的にはコネ採用を一律排除するべきではないのですが、コネ採用(人脈採用)にはリスクがあることも確かです。どのようなリスクが考えられるか、承知した上で対応しなければなりません。

    採用の公平性と透明性の欠如

    採用プロセスが、応募者の能力や実績ではなく、人脈によって左右されるため、公平性が損なわれる可能性があります。一般の採用プロセスにのせたとしても、採用が前提となっている以上、同様の懸念があります。

    コネ採用により、本来であれば優れた人材であったかもしれない他の候補者が、不当に排除されてしまうことも起こり得ます。また、コネ採用が多発すると、社内の透明性が失われ、従業員の会社に対する信頼も低下する原因になりかねません。

    組織の多様性の低下

    同じ人脈から採用が続くと、似たような考え方やバックグラウンドを持つ人が集まりやすくなります。これにより、組織全体の多様性が失われ、新しいアイデアやイノベーションが生まれにくくなる可能性があります。

    従業員間の不満とモチベーションの低下

    コネで入社した社員が、公平な評価を受けていないと感じることがあるかもしれません。たとえその社員が優秀であったとしても、「コネで入ったから優遇されているのではないか」といった不満や疑念を生み、チームワークの乱れや従業員全体のモチベーション低下を招くことがあります。

    組織文化への悪影響

    コネ入社した社員が、その人脈を盾にして社内のルールや人間関係を軽視するような態度を取る場合があります。また、もし期待した成果を出せなかった場合でも、その人脈を理由に厳しく評価できないという状況も起こり得ます。これらのことは、組織文化に悪い影響を及ぼし、健全な組織運営を妨げる要因になりかねません。


    会社事務入門求人から選考試験までの留意点>このページ

  • 従業員の学歴詐称が判明したとき、会社はどう対応するべきか?

    「履歴書の学歴詐称」は実務上まれですが、発覚すると問題となることが多いテーマです。結論からいうと、常に懲戒解雇が有効になるわけではなく、その虚偽が業務適性や採用判断に重大な影響を与えるかどうかで判断することになります。

    法令と判例

    法令

    法律には「学歴詐称=処分」と直接的に定めた条文はありません。ただし、労働契約の前提となる事項に虚偽が含まれれば、民法を適用して、錯誤(勘違い)による契約の取り消しや、公序良俗違反による契約無効などが考えられます。

    判例

    この件については、判例がいくつかあります。

    判例では「虚偽の内容が採用に重大な影響を与える場合」に限り懲戒解雇が有効とされています。

    懲戒解雇が有効とされた例

    最終学歴を大学卒と偽ったケース
    学歴が採用条件の一つであり、採用担当者が明確に学歴を重視していた → 懲戒解雇有効

    資格・免許の虚偽申告
    医師免許や運転免許など、業務遂行に不可欠な資格を偽った → 解雇有効。

    懲戒解雇が無効とされた例

    業務能力に直接関係のない学歴の水増し
    業務遂行に支障がなく、本人の勤務実績も良好であった場合、解雇は社会的に相当とは言えないとして、解雇が無効になったケースもあります。

    実務上の整理

    整理してみます。

    学歴が採用の本質的条件(研究職、資格取得要件あり、幹部候補など) であれば、学歴詐称は重大で、懲戒解雇も有効になる可能性が高いと考えられます。

    学歴が業務に影響しない一般職の場合は、虚偽は不誠実な行為ですが、懲戒解雇まで認められるのは難しいでしょう。

    多くの会社規程では、解雇事由のなかに「採用時の申告虚偽」が含まれていますが、裁判になってしまうと、有効かどうかはケースごとに判断されることになります。

    ではどう判断すべきか

    学歴詐称自体は「不誠実な行為」であり放置はできませんが、採用条件や業務遂行に重大な支障がなければ、懲戒解雇では重すぎ、戒告(もっとも軽い懲戒処分)で十分相当と整理されます。判例・実務の流れに照らしても、穏当な対応です。

    以下に、本人に手交する 処分通知書サンプル を示します。

    処分通知書(サンプル)

    令和〇年〇月〇日

    処分通知書

    〇〇株式会社
    代表取締役 〇〇〇〇 印

    従業員 〇〇 〇〇 殿

    戒告処分について

    あなたが当社へ提出した履歴書において、学歴を実際と異なる内容で記載していた事実が判明しました。

    この行為は、会社に対する信頼を損ねる不誠実なものであり、就業規則第〇条(懲戒)に該当します。

    しかしながら、これまでの勤務態度・職務遂行状況に特段の問題は認められず、また虚偽記載が業務遂行に直接の支障を及ぼしたものではないことから、今回については戒告処分といたします。

    本処分を厳粛に受け止め、今後は誠実に勤務し、同様の行為を繰り返さぬよう強く求めます。

    以上

    ポイント

    「事実の認定」→「規程違反の指摘」→「処分理由」→「処分内容」→「今後への期待」という順で記載すると法的に整理された文書になります。

    感情的なトーンで書いてはいけません。事実ベース+冷静な処分理由の説明が重要です。

    当然、処分決定前に「本人の弁明の機会」を与えておくことが必要です。弁明を聴かない処分は無効のリスクがあります。


    会社事務入門懲戒処分をするときの注意点>このページ

  • 採用手続きの書類が一部未提出だが入社させてよいか?

    入社予定者からの書類が一部提出されていない段階で、入社予定日になってしまった場合、どのように扱うべきでしょうか?

    会社にとってのリスク

    一部または全部の書類が未提出のまま入社を認めれば、会社にとって以下のようなリスクを伴う可能性があります。

    コンプライアンス上のリスク: 提出された書類に虚偽の記載があった場合、時間がたってからだと、内定取り消しや解雇のタイミングが遅れて、トラブルが複雑化する可能性があります。また、社会保険(年金、雇用保険など)の手続きに必要な書類が揃わないと、手続きが遅れ、会社と従業員の双方に不利益が生じる可能性があります。

    事務作業の非効率性: 入社後も書類提出の催促が必要となり、人事担当者の事務負担が増加します。書類の提出漏れや紛失といったミスも起こりやすくなります。

    規則との矛盾: 就業規則に「所定の採用手続」と定めているにもかかわらず、その手続きを完了させずに社員として受け入れることは、会社のルールと実態が一致していない状態です。これにより、他の規則についても「厳守しなくてもよい」という認識が広がるリスクがあります。

    一般的な企業の対応

    多くの企業では、入社日までにすべての必要書類を揃えることを厳格に義務付けています。これは、会社が従業員を雇用する上で、採用条件を満たしているかの最終的な確認と、社会保険等の採用手続きをスムーズに行うための基本的な管理体制だからです。

    内定者には、提出書類のリストを事前に渡し、入社日までに準備を促します。

    入社日前に書類がすべて揃っているかを確認し、不足があれば入社日を延期するなどの対応が必要です。

    温情的対応が直ちに問題を引き起こすわけではありませんが、将来的なリスクを避けるためにも、入社手続きを厳格化することを強くお勧めします。


    会社事務入門従業員を採用するときの手続き>このページ

  • 面接序盤で判断してしまうことのリスクと対応

    面接担当者の心構え

    短時間で判断するのは危険です

    • 人は第一印象に大きく影響される(初頭効果
    • その後の情報を第一印象に合わせて解釈してしまう(確証バイアス
    • 序盤で判断すると、本来の能力や適性を見逃す可能性が高まる

    「絶対採用しない」と思っても最後まで面接を続ける理由

    • 公平性の確保:全候補者に同じ条件・同じ時間で面接する必要がある
    • 企業イメージ保護:途中で面接を打ち切ると、応募者の印象が悪くなり、口コミや評判に影響するリスクがある
    • 逆転の可能性:序盤で緊張していた応募者が、後半で実力や人柄を発揮することがある

    態度や表情への注意

    判断が固まってしまうと、無意識に以下のようなサインが出やすくなります。

    • 声のトーンが冷たくなる
    • アイコンタクトが減る
    • 話を早く切り上げるような相槌や返事をしてしまう

    応募者は面接官の表情・雰囲気に敏感に反応します。
    面接時間を通じて表情を一定に保ち、質問や相槌のテンポ・態度を均等にすることが大切です。

    実務的な対策

    1. 質問シートに沿って進行する
      → 感情ではなく評価項目に基づいて判断する
    2. 序盤では採否を決めないルールを作る
      → 「面接後半まで結論を出さない」と自分に言い聞かせる
    3. 面接終了後、数分置いて評価を書く
      → 感情が落ち着いてから採否判断を行う

    面接担当者の心得

    • 「最初の印象はあくまで仮評価」と考える
    • 面接官の役割は、応募者全員が面接時間いっぱい能力や人柄を発揮できる環境を作ること
    • そのためには、途中で気持ちが固まっても態度に出さず、最後まで一定の姿勢で臨むことが重要

    面接官向け事前チェックリスト

    上記の内容に基づいて「面接官用の事前チェックリスト」を作りました。面接直前に見直すことで面接の心構えを毎回意識できます。

    【使い方】

    • 面接前にチェックを入れて意識をセット
    • 面接後にも振り返りチェックで自己評価
    • 公平公正な面接に役立ててください

    【面接前】

    • [ ] 質問シート・評価項目を手元に準備した
    • [ ] 「序盤では採否を決めない」と意識した
    • [ ] 面接時間いっぱい応募者に話してもらうつもりで臨む

    【面接中】

    態度・表情

    • [ ] 表情を一定に保っている(眉間にしわを寄せない・笑顔を保つ)
    • [ ] アイコンタクトを継続して取っている
    • [ ] 声のトーンや話すスピードが途中で変わっていない
    • [ ] 質問の質や深さが応募者によって変わっていない

    判断のタイミング

    • [ ] 序盤で「採用/不採用」を決めていない
    • [ ] 気持ちが固まっても態度に出していない
    • [ ] 途中で打ち切らず、最後まで同じペースで進行している

    【面接後】

    • [ ] 面接終了後に数分置いて評価を記入した
    • [ ] 感情ではなく評価項目のスコアで判断した
    • [ ] メモは事実ベースで記録し、印象だけに頼っていない

    会社事務入門求人から選考試験までの留意点>このページ

  • 面接質問シート & 評価表(新卒採用)

    新卒採用向けの「面接質問シート&評価表」を用意しました。
    新卒は職務経験がないため、「学業・学生時代の経験」「成長意欲」「ポテンシャル」「人柄」が評価の中心になります。

    新卒採用 面接質問シート & 評価表

    応募者情報

    • 氏名:________________
    • 面接日:____年__月__日
    • 面接官:_______________
    • 応募職種:______________
    • 学校名・学部学科:__________

    【1】自己紹介・学生生活の概要

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    簡単に自己紹介をお願いします
    学生時代に特に力を入れたことは何ですか?
    学業や課外活動で誇れる成果はありますか?

    【2】学び・経験の深掘り

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    学業で得た知識やスキルをどのように活かせると思いますか?
    課題や壁に直面したとき、どう乗り越えましたか?
    チームや仲間と協力して達成した経験はありますか?

    【3】志望動機・会社理解

    質問応募者回答メモ(◎〜×)コメント
    なぜ当社を志望しましたか?
    当社でやりたいこと・挑戦したいことは何ですか?
    入社後に成長したい分野やスキルは何ですか?

    【4】人柄・適応力

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    周囲からどんな人だと言われますか?
    新しい環境や変化にどのように適応しますか?
    意見の違う相手と協力するにはどうしますか?

    【5】将来の展望

    質問応募者回答メモ(◎〜×)コメント
    3〜5年後、どのような社会人になっていたいですか?
    当社でどのように成長・貢献していきたいですか?

    【6】逆質問

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    当社やこの仕事について質問はありますか?
    入社前に不安や確認したいことはありますか?

    総合評価

    • 学業・経験の活かし方:◎ー○ー△ー×
    • コミュニケーション力:◎ー○ー△ー×
    • 成長意欲:◎ー○ー△ー×
    • 協調性:◎ー○ー△ー×
    • 総合判定:採用ー保留ー不採用

    コメント
    ________________________________________


    新卒用面接のポイント

    • 「何ができるか」より「どう成長できるか」を見る
    • 学生時代の経験から行動特性や価値観を引き出す
    • 回答内容よりも、態度・柔軟性・素直さを重視する

    関連記事:採用面接マニュアル

    会社事務入門求人から選考試験までの留意点>このページ

  • 面接質問シート & 評価表(中途採用)

    そのまま面接で使える「質問シート+評価表」です。面接時に書き込みやすいよう、質問欄と評価欄を並べてあります。

    中途採用 面接質問シート & 評価表

    応募者情報

    • 氏名:________________
    • 面接日:____年__月__日
    • 面接官:_______________
    • 応募職種:______________

    【1】職務経歴・スキル確認

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    これまでの職務経歴を簡単に説明してください
    前職での役割や担当業務は?
    成果や実績として特に誇れることは?

    【2】スキル・経験の深掘り

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    当社で活かせるスキルや経験は?
    業務改善や効率化の経験はありますか?
    困難に直面した場面と、その対応方法は?

    【3】転職理由・志望動機

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    転職を考えた理由は?
    なぜ当社を志望したのか?
    入社後に実現したいことは?

    【4】適応力・人柄

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    意見が分かれた場合の対応方法は?
    環境や業務内容の急な変更への対応例は?
    周囲からどんな人と言われるか?

    【5】将来の展望

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    3〜5年後のキャリアビジョンは?
    当社で成し遂げたいことは?

    【6】逆質問

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    当社やポジションについて質問は?
    入社前に確認しておきたいことは?

    総合評価

    • スキル適合度:◎ー○ー△ー×
    • 社風適合度:◎ー○ー△ー×
    • 即戦力性:◎ー○ー△ー×
    • 成長・発展性:◎ー○ー△ー×
    • 総合判定:採用ー保留ー不採用

    コメント
    ________________________________________


    ポイント

    • 回答メモ欄は箇条書きでもOK
    • 評価は後でまとめてつけても良い
    • 複数面接官の場合はそれぞれ記入

    関連記事:中途採用面接マニュアル

    会社事務入門求人から選考試験までの留意点>このページ