募集採用の年齢制限について詳しく解説

採用

年齢制限は原則禁止です

労働施策総合推進法により募集採用について年齢で制限することは原則として禁止されています。つまり、募集は原則として「年齢不問」で出さなけれなりません。

労働施策総合推進法第9条 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

募集・採用における年齢制限についてですね。

結論から申し上げますと、労働者の募集・採用において、年齢を制限することは法律(労働施策総合推進法、旧:雇用対策法)により、原則として禁止されています

これは、年齢に関わりなく、すべての人に均等な雇用の機会を与えることを目的として、平成19年(2007年)の法改正で義務化されました。

例外的に年齢制限が認められるケース

原則は禁止ですが、合理的・客観的な理由がある場合に限り、例外的に年齢制限を設けることが認められています。ただし、例外事由に該当する場合でも、求人票にその理由を具体的に明記する必要があります。

主な例外事由は、厚生労働省により以下の6つが定められています(一部抜粋)。

例外事由(厚生労働省令)認められる内容記載例
1. 定年年齢を上限とする募集定年年齢(60歳や65歳など)を上限として、その年齢未満の者を期間の定めのない労働契約の対象として募集する場合。60歳未満の方を募集(定年60歳のため)」
2. 法令による制限労働基準法や警備業法など、他の法令の規定により特定の年齢層の就業が禁止または制限されている業務に募集・採用する場合。18歳以上の方を募集(警備業法による制限)」
3. 長期キャリア形成長期間の継続勤務によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合。(職務経験不問が前提)35歳未満の方を募集(長期勤続によるキャリア形成のため)」
4. 技能・ノウハウの継承技能やノウハウの継承を図る観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定して募集・採用する場合。「○職種の労働者40代が極めて少ないため、40歳~49歳の経験者を募集」
5. 高年齢者等の雇用促進60歳以上の高年齢者、または特定の年齢層の雇用を促進する国の施策(雇い入れ助成金など)の対象となる者に限定して募集・採用する場合。60歳以上の方を募集」
6. 芸術・芸能分野など芸術・芸能の分野や、特定産業の特殊な職業において、年齢が能力や適性の本質的な要件となっている場合。「モデルとして、20代の方を募集」

具体的な表現

募集・採用の記載について、法律の趣旨に沿って「認められる表現(OK)」と「認められない表現(NG)」の例を具体的に解説します。

重要な原則:

  1. 原則として年齢制限はNG
  2. 例外的に年齢制限をする場合は、必ずその「例外事由」と「理由」を明記しなければNGとなる。
  3. 特定の年齢層を優遇するような「歓迎」表現も、原則としてNG

年齢を「条件」として制限する場合の記載例

例外事由認められる表現(OK)認められない表現(NG)
定年を上限とする募集60歳未満の方を募集(定年60歳のため)60歳以下の方を募集(理由なし)
・ 40歳以上60歳未満の方を募集(下限年齢の設定はNG)
・ 60歳未満の方を募集(1年契約、更新あり)(有期雇用はNG)
長期キャリア形成を図る募集35歳未満の方を募集(長期勤続によるキャリア形成を図るため)35歳までの方を募集(理由なし)
・ 35歳未満の方を募集(〇〇業務の経験者に限る)(職務経験を問うのはNG)
・ 20歳以上35歳未満の方を募集(下限年齢の設定はNG)
法令による制限がある募集18歳以上の方を募集(労働基準法による深夜業禁止のため)・ 18歳以上の方を募集(理由なし)
高校生不可(明確な法令根拠がないため、年齢制限としてNG)
高年齢者限定の募集60歳以上の方を募集・ 60歳以上70歳未満の方を募集(上限年齢を設けるのはNG)
芸術・芸能分野演劇の子役として、10歳以下の方を募集(表現の真実性のため)・ イベントコンパニオンとして、20代の方を募集(単なる販売促進はNG)

特定の年齢層へのアピールに関する記載例

特定の年齢層に限定せず、幅広い応募を促すためには、応募資格ではなく「事実の記載」にとどめることがポイントです。

目的認められる表現(OK)認められない表現(NG)
若年層にアピールしたい20代・30代のスタッフが中心に活躍中です。20代歓迎 ・ 年齢不問。ただし、35歳未満の方歓迎
中高年にアピールしたいミドル・シニアのスタッフも多数活躍中です。中高年歓迎ミドル・シニア応援
40代以上の方もぜひご応募ください
業務内容を表現当社の主要顧客は20代の女性が中心です。20代の女性をターゲットとした洋服の接客販売(年齢を条件と誤解させる可能性があるため注意)

【解説】

  • 「~歓迎」「~応援」という表現は、特定の年齢層を優遇すると見なされ、他の年齢層の応募を妨げる可能性があるため、原則として避けるべきとされています。
  • 「~が活躍中」「~のスタッフが中心」といった「現状の事実」を記載することは、応募資格や条件に設定していないため、問題ないとされていますが、それでも年齢を理由に採否を判断していると誤解を招かないよう注意が必要です。

ケーススタディ

若者向けの商品に特化した店舗です。中高年以上の方が販売員をやるのは到底無理だと思います。30歳以下という条件で募集したいのですがどうでしょうか。

若者向けの商品に特化した店舗であっても、「30歳以下」という条件で募集することは、原則として認められません

これは、年齢制限が認められる例外事由に、その理由が該当しない可能性が高いためです。

募集が認められない主な理由

募集・採用における年齢制限は、能力や適性に関係なく年齢のみで機会を奪うことを防ぐために原則禁止されています。

このケースでは、「若者向けの商品に特化している」という理由が、法律で認められている例外事由に当てはまるかどうかが焦点になります。

「長期キャリア形成」の例外に該当しない

長期キャリア形成(例外事由3号イ)は、「35歳未満」などの若年者を、職務経験を問わず、無期雇用で採用する場合に認められます。しかし、これは「若手の商品知識やトレンド感覚」を理由とするものではなく、「将来的な企業の中核人材育成」が目的です。

「芸術・芸能分野」の例外に該当しない

この例外(例外事由6号)は、モデルや俳優など、表現の真実性のために特定の年齢層が不可欠な場合に適用されます。アパレル店や一般の小売店での販売・接客は、これに該当しません。

「業務遂行上不可欠な能力」ではない

若者向け商品の販売でも、30歳を超えた人が能力を発揮できないと断定できる客観的な根拠はありません。商品知識や接客能力、トレンド感覚などは、年齢ではなく、個人の能力や努力、研修で身につけられるものです。単に「若い感覚が必要だから」という主観的な判断は、年齢制限の正当な理由として認められません。

法律に沿った募集方法

若者向け店舗が若い人材を求めている場合に、法令違反とならずに募集を行うための方法としては、以下の方法が考えられます。

方法募集の具体例ポイント
例外事由3号イの適用35歳未満の方を募集(長期勤続によるキャリア形成を図るため) ※職務経験不問」具体的な年齢を制限できますが、必ず「長期キャリア形成のため」と理由を明記し、職務経験は問わないことが条件です。
事実の記載20代のスタッフが中心となって活躍している職場です」応募資格として年齢を制限するのではなく、現状の事実を伝える表現にとどめます。
ペルソナ(人物像)の記載「〇〇ブランドの洋服が好きな方」「最新のトレンドに興味がある方」年齢ではなく、業務に必要な適性や興味を明確にし、応募者に判断を委ねます。

ご自身の会社や、これから応募を考えている求人がどのような状況にあるかによって、年齢制限の可否は変わってきます。詳しくは厚生労働省や最寄りの都道府県労働局、ハローワークの資料をご確認ください。