Last Updated on 2023年3月8日 by 勝
派遣元の義務等
雇用安定措置
雇用安定措置とは、派遣会社が派遣労働者の雇用の安定を図るために講じなければならない措置のことです。
この背景にはいわゆる「3年ルール」があります。これは、「同じ派遣先に、同じ派遣社員が3年以上続けて勤務できない」という労働者派遣法の定めです。
この上限が適用されて派遣就業が終了した後も就業継続を希望する派遣労働者に対して、派遣会社は以下の措置を講じなければなりません。
① 派遣先企業へ直接雇用を依頼する
② 新たな就業機会(派遣先)を提供する
③ 自社で派遣労働者以外での無期雇用を行う
④ その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置を行う
派遣先の義務等
労働者派遣法では、派遣先企業(派遣社員を受け入れている企業)に対し、「雇入れ努力義務」と「募集情報の提供義務」を規定しています。
雇入れ努力義務
一定の要件を満たす派遣社員を就労させている派遣先企業は、その派遣終了後に引き続き同一の業務に従事させるために労働者を雇用するのであれば、その派遣労働者を雇入れるよう努めなければならない、という定めがあります。
一定の要件とは、次の3つの要件すべてを満たす派遣社員を受け入れている場合です
① 派遣先内の、同一の組織単位(〇〇部や〇〇課などの単位)で同じ業務に1年以上継続して従事している派遣社員であること
② 派遣の受け入れ期間が終了した後に、継続して同一の組織単位で同じ業務に労働者を従事させる目的で雇入れようとする場合
③ ①の派遣社員が派遣先企業での継続した就労を希望しており、派遣元を通じて直接雇用の依頼があった場合(派遣元の雇用安定措置です)
雇用契約は、双方の合意によって成立するので、正社員採用だけでなく有期雇用契約も合意があれば可能です。
募集情報の提供義務
派遣労働者を受け入れている企業は、新たに直接雇用の従業員を募集するときは、受け入れ中の派遣労働者に対して募集情報を周知しなけれなりません。
次の場合に該当します。
派遣先の事業所で労働者(正社員)の募集をするときは、すでに1年以上継続して就労している派遣社員に対して募集情報を周知しなければなりません。「同一の組織単位」ではなく「同一の事業所」です。途中で所属する組織単位が変更になった場合でも、継続期間にカウントされます。
また、派遣先の事業所で労働者(正社員に限らず)を募集する場合、派遣先の同一の組織単位の業務に継続して3年間受け入れる見込みがある派遣労働者がいる場合であって、派遣元からこの派遣労働者に係る直接雇用の依頼があった場合には、その派遣労働者に対して、募集情報を周知しなければなりません。
直接雇用の時期
派遣労働者を受け入れている企業は、その派遣労働者が「3年ルール」に該当したときは派遣の継続ができないので、どうしても継続して業務に従事させたいのであれば、正社員や契約社員として直接雇用しなければなりません。
派遣社員の直接雇用については、労働者派遣法第33条に「派遣会社は派遣先との間で、原則として派遣労働者の雇用期間終了後に派遣先が派遣労働者を直接雇用することを禁止する契約を結んではいけない」旨の規定があります
これは、派遣期間の終了後であれば、派遣先の企業が、派遣社員を直接雇用しても法的に何の問題もないことを意味しています。むしろ、制約したり妨害したりすれば法律に違反します。
一般派遣の場合
一般の登録型派遣においては、労働者は、仕事があるときだけ派遣元である人材派遣会社と雇用契約(労働契約)を結びます。この場合、派遣期間の終了とともに雇用契約も終了します。したがって、派遣期間の終了後であれば、派遣先の企業が派遣社員を直接雇用しても何の問題もありません。
一般派遣の途中で採用する場合
上述したように、派遣期間終了後の直接雇用には何に問題もありませんが、派遣期間中、つまり労働者と派遣元会社との労働契約が残っている場合は注意深く対応しなければなりません。
この場合、直接雇用する前に、労働者と派遣元会社との労働契約を解消させなければなりません。
この労働契約解消を無理に行うと、場合によっては派遣元から損害賠償を求められるリスクもあります。そこまでいかなくても派遣元会社との信頼関係が損なわれることになるので、一般的には、派遣期間が終了してから直接雇用の手続きを行うべきです。
実際に直接雇用するのが派遣期間の終了後であれば、派遣中に直接雇用を打診したり、採用の約束をすることは問題ありません。
紹介予定派遣の場合
紹介予定派遣は、最初から直接雇用を前提とした派遣就労であるため、、紹介予定派遣期間中でも双方が合意すれば直接雇用へ切り替えることができます。
紹介予定派遣を含め派遣元会社による職業紹介によって派遣労働者を直接雇用した場合には、当初の契約にしたがって派遣元会社に紹介手数料を支払う必要があります。
会社事務入門>従業員を採用するときの手続き>派遣労働者受入れの注意点>このページ