労働者名簿とは
労働者名簿とは、労働者の氏名や採用した日などを記載した書類で、労働基準法で作成が義務付けられています。
労働基準法第107条
使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
2 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
記載すべき事項
記載しなければならない事項が決まっています。
□ 氏名
□ 生年月日
□ 性別
□ 住所
□ 業務の種類
業務の種類とは、経理、営業などのことです。だいたいの業務内容が分かるように書きましょう。
□ 履歴
履歴とは異動や昇進などの社内履歴を記載します。入社前の履歴についても、最終学歴、直前の仕事は記載しておきましょう。
□ 雇用年月日
□ 退職年月日と事由
自己都合で退職したときは「自己都合退職」だけでよいのですが、従業員を解雇した場合は、なぜ解雇したのか事由を記載する必要があります。
□ 死亡年月日と原因
私傷病であれば「病死」等でよいのですが、労災にあたる場合はその原因を記載します
以上の9項目です。
必要な記載事項を全て書かなければなりません。
変更があったときの訂正は「遅延なく」となっています。つまり、変更の度に訂正しなければならないので注意しましょう。
住所変更、配属変更などの記載を忘れがちなので注意しなければなりません。
原則として全員について作成
労働者名簿を作成する必要がある従業員は、パートやアルバイトを含み原則として全従業員です。
例外として、日々雇用契約を結ぶ日雇労働者だけは作成義務がありません。
出向者の場合は、移籍して出向している場合には出向先に作成義務があります。在籍の形で出向している場合は出向元と出向先の両方で名簿の作成しなければなりません。
派遣社員は賃金を支払っている派遣元に作成義務があるので、派遣先の会社においては作成する必要はありません。
個人事業、法人事業、従業員数などにかかわらず全ての使用者に作成義務があります。
労働者名簿の様式
厚生労働省のページ「主要様式ダウンロードコーナー」に掲載されています。ただし、必ずしもこれを用いなければならないわけではなく、記入項目を満たしていれば、基本的にどのような形式でも構いません。
保存期間
労働者名簿の保存期間は5年(当分の間は3年)です。作成した日からではなく、従業員の退職や解雇、または死亡日から起算します。
電磁的方法で作成する場合
労働者名簿を電磁的方法(電子データ)で作成・保存する際は、法令で定められた要件を満たし、必要な情報をすぐに確認・提出できる体制を整える必要があります。
主な注意点と要件
- 表示・印字可能性:
- 法令で定められた労働者名簿の要件(記載事項)を具備していること。
- パソコンやスマートフォンなどの画面上に表示できること。
- 印字(印刷)できること。
- 即時提示性:
- 労働基準監督官の臨検(調査)時などに、直ちに必要事項を明らかにし、提出できるシステムであること。
- 複数の事業場がある場合は、各事業場からアクセス・出力できる仕組みが必要です。
- 誤消去の防止:
- 誤操作や誤認識によってデータが削除されない対策が講じられていること。
- 長期保存性:
- 法令で定められた保存期間(退職、解雇または死亡の日から5年間)、復元可能な状態で保存することができる措置を講じていること。
その他の重要な注意点
個人情報保護の徹底
労働者名簿には機密性の高い個人情報が含まれるため、情報漏洩の防止が必須です。
- アクセスできる権限者を限定する。
- パスワード設定や暗号化などのセキュリティ対策を講じる。
- USBメモリなどによる社外への持ち出しを原則禁止するルールを定める。
- マイナンバーは労働者名簿の記載事項ではないため、名簿に記載しない。
事業場ごとの作成・管理
- 労働者名簿は事業場(店舗やオフィスなど)ごとに作成・備え付ける必要があります。電子データで一括管理している場合でも、事業場ごとに区分して管理し、各拠点からすぐにアクセス・出力できる体制が必要です。
データ消失への備え
- データの破損や消失に備え、定期的なバックアップを取り、長期間安定して保存できる措置を講じることが重要です。
これらの注意点を守り、労働基準監督署の調査などに適切に対応できる管理体制を構築しましょう。