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フリーランス法のあらまし

Last Updated on 2023年11月20日 by

フリーランス法とは

フリーランス保護法とかフリーランス新法と呼ばれています。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。政府は「フリーランス・事業者間取引適正化等法」を略称にしているようですが、ちょっと長いです。ここでは、仮に「フリーランス法」とします。

フリーランスは労働者ではないため、労働基準法が適用されないこともあり、権利が十分に保護されてこなかったことが問題視されてきました。2023年4月28日の参議院本会議で可決されたフリーランス法は、フリーランスの取引を適正化し、安定した労働環境を整備するための法律です。

施行は2024年秋の予定です。

以下、概要を説明します。基本的に法に定めがある事項を記載していますが、すべて抜粋です。詳しくはe-Gov法令検索で。

今後、政省令やガイドラインにおいて具体的な内容が公表されます。

特定受託事業者とは

一般的にフリーランスと呼ばれている人を、法律では「特定受託事業者」としています。

法第二条によると、特定受託事業者の定義は「一 個人であって、従業員を使用しないもの」または「二 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」となっています。

つまり、法人化していても、他の役員がいなくて従業員を雇っていない、いわゆる一人社長の場合はフリーランス法の保護対象になります。

逆に個人事業としてフリーランス的な仕事をしていても、従業員を一人でも雇っていればフリーランス法の保護対象になりません。

特定業務委託事業者

フリーランスに仕事を依頼する事業者を「特定業務委託事業者」といいます。

特定受託事業者には「従業員を使用するもの」という定義があります。

法律の内容

フリーランス法の目的は、取引上、立場の弱いフリーランスの就業環境を整備することにあります。

給付の内容その他の事項の明示等

業務委託事業者は、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。(法第三条一項)

つまり「前と同じようにお願いします」「とりあえず取り掛かって下さい」などのような口頭で発注は禁止されます。

報酬の支払期日等

業務委託をした場合における報酬の支払期日は、特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。(法第四条)

基本的に支払いサイトは60日以内です。条文の他の部分には30日以内になる場合についての定めがあります。

特定業務委託事業者の遵守事項

特定業務委託事業者はフリーランスに対し原則として次に掲げる行為をしてはならない。

1.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物の受領拒否
2.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない報酬の減額
3.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物などの返品
4.相場に比べて著しく低い報酬の不当な決定
5.正当な理由のない指定商品の購入または役務の利用の強制

次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。

1.委託する事業者のために、金銭、役務そのほかの経済上の利益の提供を要請すること
2.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない給付内容の変更、またはやり直しの要請

(法第五条)

申出等

フリーランスは、法第二章の規定(ここまでの記載)に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。(第六条)

就業環境の整備

募集情報の的確な表示

特定受託事業者の募集に関する情報を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。

広告等による情報は、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

(第一二条)

妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮

特定業務委託事業者は、フリーランスに対して、妊娠、出産若しくは育児又は介護と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない。(第一三条)

業務委託に関して行われる言動に起因する問題

特定業務委託事業者は、フリーランスに対して、次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

1.性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

2.特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。

3.取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

(第一四条)

1はセクハラ、2はマタハラ、3はパワハラについての定めです。

解除等の予告

特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)をしようとする場合には、フリーランスに対して、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。(第一六条)

違反があると損害賠償請求の根拠になります。

罰則

法に違反すると、公正取引委員会ならびに中小企業庁長官または厚生労働大臣により、助言や指導、報告徴収・立入検査などが行われ、命令違反および検査拒否などがあれば、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。


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