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年収の壁についてまとめてみた

Last Updated on 2024年3月5日 by

年収の壁とは

厚生労働省が年収の壁・支援強化パッケージを出したこともあり、年末でもあり、年収の壁が話題になっています。

まず、年収の壁とは何かですが、

会社などで働いている人の扶養に入っている配偶者は、厚生年金保険料や健康保険料を払わなくてよい、さらに税金の控除があるなど、優遇されています。

この扶養に入っている配偶者が、外で働いて給料をもらって、一定の金額を超えてしまうと、所得税がかかるようになったり、厚生年金保険料や健康保険料を支払うことになります。

このボーダーラインになる年収を「年収の壁」と呼んでいます。年収の壁には、103万円、106万円、130万円、150万円があります。

年収がこれらのラインを超えると、税金がかかったり、社会保険料を負担するようになるため、給与が上がっても手取り額が減少するという現象が起こります。そのため、年収がラインを超えないように働き方を調整する人が多いので、人手不足の要因になっているといわれています。

103万円の壁

103万円は所得税の支払いが発生する年収ラインです。

所得税は年収が103万円を超えた分に対してかかる税金です。

もう少し詳しく言うと、給与収入が103万円の場合、給与所得控除額が65万円で所得は38万円になります。所得税の基礎控除が38万円なので、所得合計から控除合計を引いた課税所得金額は0円となって税金がかかりません。

また、所得税とは別のものですが、世帯主が会社から家族手当をもらっている場合に、その支給基準は会社によりますが、多くの会社は所得税のラインである103万円に合わせています。これも103万円の壁です。103万を超えれば所得税がかかる上に、家族手当が減る可能性があるのです。

なお、所得税の他に住民税がありますが、住民税はもう少し低いラインで課税対象になる可能性があります。住民税は自治体によって異なるので一概に言えませんが。

106万円の壁

会社などで働いている人の扶養に入っている配偶者が、従業員数が101人以上の会社などに雇用されて、次の条件のすべてに該当すると、社会保険(厚生年金保険や健康保険)に加入しなければなりません。

1.週の所定労働時間が20時間以上
2.賃金が月額8.8万円以上(時間外割増手当、通勤手当等を除く)
3.雇用期間の見込みが2か月以上
4.学生ではない

この条件の1つである月額賃金8.8万円は、12か月を掛けると約106万円となります。それで、106万円の壁と呼んでいます。

これに該当した場合は、本人が被保険者となります。

130万円までと思っている人もいますが、上記の条件に全て該当すれば106万円で社会保険に加入することになります。

来年(2024年)10月には、51人以上の会社などに雇用される人に拡大されるので、よりこの問題が身近になってくると思います。

なお、社会保険に加入すると、将来の老齢年金が増えたり、その他の給付が充実したりするなど、より手厚い保障を受けるというメリットもあります。また、国民年金や国民健康保険に加入している人は多くの場合、社会保険に加入することで保険料負担が減ります。一概に壁を超えてはいけないということではありません。

130万円の壁

会社などで働いている人の扶養に入っている配偶者は、年収130万円以上になると扶養から外れてしまいます。結果、自身が社会保険に加入しなければなりません。この自ら社会保険に加入しなければならない年収ラインを130万円の壁と呼んでいます。

106万円の壁に該当しなかった方ここで該当します。

130万円を超えたところで、勤務先の社会保険加入条件を満たせば社会保険に加入することになります。勤務先の社会保険に加入しない場合は、国民健康保険と国民年金に加入しなければなりません。

106万円の壁は、時間外割増手当、通勤手当等を除いて計算しますが、130万円の壁の場合は、原則すべて含みます。

150万円の壁

会社などで働いている人の扶養に入っている配偶者は、年収150万円までは、世帯主の配偶者特別控除を満額受けられます。年収が150万円を超えると段階的に夫の控除額が減り、201.6万円を超えると控除額が0になります。

厚生労働省の支援強化パッケージ

106万円の壁に対して

労働者の手取り減少を防ぐため、労働者の収入を増加した事業主を支援する施策が始まります。

従来からあるキャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」を追加するものです。

被保険者になったことで発生する保険料本人負担分相当額を会社が「社会保険適用促進手当」として支給し、会社は国に助成金を申請する仕組みです。

130万円の壁に対して

130万円の壁に対しては、繁忙期の労働時間延長等に伴う一時的な収入変動で超えた場合は、事業主の証明で扶養認定を可能とする施策が始まります。

これは、同一の者について、原則として連続2回が上限です。

年収が130万円を超えても、会社が「一時的なこと」だと証明すれば、2年間は社会保険に入らなくてもよいということです。

労働時間が増えたことによることが条件なので、時給や手当が上がったことで130万円を超えるのであれば対象にならず、社会保険に入らなければなりません。

さて、

この年収の壁は、けっこう古い話題です。

会社員等の配偶者に適用されている第3号被保険者の制度がそもそも不公平なので廃止するべきだという指摘も古くからあります。長いこと続けてきた既得権なので、これに手をつけるには相当の剛腕が必要です。

今回の、厚生労働省の施策で年収の壁に変化が生じるのかどうか、いくらかの効果は期待されていますが、一時的な対策のようです。厚生労働省も、今回の対策は、2025年に予定されている年金制度改革までのつなぎだと考えているようです。


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