カテゴリー: 法律

  • 公益通報者に報復的懲戒をすれば刑事罰の対象になる

    公益通報者保護法の改正

    先生: 社長、本日はお時間をいただきありがとうございます。先般、公益通報者保護法が改正され、2025年6月4日に参議院本会議で可決・成立しましたので、その内容と御社への影響についてご説明させていただきたく参りました。

    社長: ああ、ニュースでやっていましたね。詳しくは把握できていませんが、通報者を保護する法律ですよね。うちのような中小企業にも関係ある話なんでしょうか?

    先生: はい、もちろん関係があります。今回の改正は、特に通報者の保護を強化する内容となっており、事業者の皆さまにはより一層の対応がもとめられています。

    報復行為に刑事罰が導入されます

    先生: まず、最も重要な点からお話しします。今回の改正で、通報を理由に報復的な解雇や懲戒処分を行った場合、それに関与した人に対して刑事罰が科されることになりました。

    社長: 刑事罰ですか!具体的にはどういうことでしょう?

    先生: はい。もし通報した従業員を、その通報を理由に解雇やその他の懲戒処分をしたりすると、その行為に関わった担当者や役員に「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。そして、会社にも「3,000万円以下の罰金」が科されます。そして、この部分は、すべての企業が対象です。企業規模による免除はありません。

    社長:すべての企業ということですが、例えば、個人事業主も含まれまれるのですか?

    先生:はい、報復的な解雇や懲戒処分への刑事罰の対象となる「企業」には、個人事業主も含まれます。公益通報者保護法における「事業者」の定義は、「法人その他の団体及び事業を行う個人」とされています。つまり、株式会社のような営利法人だけでなく、公益法人、協同組合、NPO法人、そして個人事業主や、国、地方公共団体なども含まれることを意味します。

    社長:もう一つ、解雇だけでなく始末書や訓戒程度の軽い懲戒でも対象になるのですか?

    先生:はい、この法律でいう「懲戒処分」は、解雇のような重いものだけでなく、訓戒や減給、降格、出勤停止など、広範な不利益な取り扱いが含まれると解釈されています。重要なのは、その懲戒が公益通報への報復目的であるかどうかです。

    社長: それは厳しいですね。行政指導ではなく、いきなり刑事罰になるということですか?

    先生: その通りです。これまでは行政指導や民事上の損害賠償が主な抑止力でしたが、今回は直接的な刑事罰が導入された点が非常に大きい変更点です。

    社長: 不当な配置転換は対象にならないと聞きましたが、それはどうなのでしょう?

    先生: はい、不当な配置転換については、今回は刑事罰の対象からは外されました。しかし、だからといって問題がないわけではありません。通報者への不利益な取り扱いとして、民事上の責任を問われる可能性は依然として残りますので、注意が必要です。

    事業者側の立証責任

    先生: もし御社が通報者を解雇や懲戒処分にした場合、その処分が「通報を理由とするものではない」ということを、会社側が証明する責任を負うことになります。

    社長: え、会社側が証明するんですか?それは大変ですね。

    先生: はい。これまでは通報者が不利益な取り扱いを受けた場合に、通報者がその関連性を立証する必要があるケースもありました。しかし、これからは事業者側がその合理性をより明確に示す必要が出てくると理解してください。

    先生:それと、通報後1年以内の懲戒には特に注意してください。改正では「公益通報後1年以内に解雇や懲戒を受けた場合は通報への報復を受けたと推定する」 という規定が導入されました。「推定する」というのは、覆されない絶対的な判断ではありませんが、通報後1年以内は、通報者にとって有利な「推定」が働くことになったということです。

    その他の改正点

    社長: 他に注意すべき点はありますか?

    先生: はい、いくつかあります。

    内部通報体制の整備義務違反への罰則

    先生:従業員が301人以上の企業には、適切な内部通報窓口の設置や調査体制の整備が義務付けられています。これを怠り、行政からの是正命令にも従わない場合、30万円以下の罰金が科されます。御社は現在300名以下ですが、今後従業員が増える際には特にご留意いただく必要があります。

    守秘義務違反への罰則

    先生:内部通報の受付や調査を担当する従業員、いわゆる「公益通報対応業務従事者」が、通報者の名前など、特定につながる情報を漏らした場合、30万円以下の罰金が科されます。これは内部通報制度の信頼性を保つ上で非常に重要です。

    保護対象の拡大

    先生:今回の改正で、フリーランスの方や退職された方も公益通報の保護対象となりました。業務委託などで関わる方々からの通報も保護の対象になるため、より広範な視点での対応が求められます。

    不利益な取扱いの範囲拡大

    先生:退職金を不支給にしたり、通報者に対して損害賠償を請求したりするといった行為も、不利益な取扱いの範囲に含まれ、禁止されます。

    今後の対応

    社長: なるほど。それで、この改正はいつから施行されるんでしょうか?

    先生: この改正法は、公布から「1年6か月以内」に施行される予定です。具体的な日付はまだ決まっていませんが、来年の冬頃までには施行される見込みです。

    社長: そうですか。まだ少し時間があるとはいえ、これは早めに対応を考えないといけませんね。

    先生: その通りです。今後の対応としては、以下の点が重要になります。

    就業規則の見直し

    先生:懲戒規定など、通報者への報復行為と誤解されないような規定になっているか確認が必要です。

    内部通報制度の再確認・整備

    先生:現行の通報窓口が適切に機能しているか、通報者のプライバシー保護が徹底されているか、もう一度見直しましょう。従業員数が301名に近づいた場合は、特に体制整備の義務が発生しますのでご注意ください。

    従業員への周知・研修

    先生:公益通報者保護法の趣旨や、通報制度の利用方法、そしてハラスメント防止などと合わせて、従業員全員に周知徹底することが非常に大切です。特に管理職の方々には、通報があった際の適切な対応や、報復行為と見なされないための注意点などを充分に理解してもらう必要があります。

    社長: 刑事罰の導入というのは本当に大きいですね。今のうちに、社内の体制をもう一度確認して整備を進めていきたいと思います。

    先生: ぜひ、そのようになさってください。ご不明な点があればいつでもご相談ください。


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  • フリーランス法のあらまし

    フリーランス法とは

    フリーランス保護法とかフリーランス新法と呼ばれています。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。政府は「フリーランス・事業者間取引適正化等法」を略称にしているようですが、ちょっと長いです。ここでは、仮に「フリーランス法」とします。

    フリーランスは労働者ではないため、労働基準法が適用されないこともあり、権利が十分に保護されてこなかったことが問題視されてきました。2023年4月28日の参議院本会議で可決されたフリーランス法は、フリーランスの取引を適正化し、安定した労働環境を整備するための法律です。

    施行日は2024年11月1日です。

    以下、概要を説明します。基本的に法に定めがある事項を記載していますが、すべて抜粋です。詳しくはe-Gov法令検索で。

    今後、政省令やガイドラインにおいて具体的な内容が公表されます。

    特定受託事業者とは

    一般的にフリーランスと呼ばれている人を、法律では「特定受託事業者」としています。

    法第二条によると、特定受託事業者の定義は「一 個人であって、従業員を使用しないもの」または「二 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」となっています。

    つまり、法人化していても、他の役員がいなくて従業員を雇っていない、いわゆる一人社長の場合はフリーランス法の保護対象になります。

    逆に個人事業としてフリーランス的な仕事をしていても、従業員を一人でも雇っていればフリーランス法の保護対象になりません。

    特定受託事業者、つまりフリーランスは仕事を引き受ける側で従業員を使用していないものが該当します。フリーランスであっても従業員を使用している場合はこの法律の対象外となります。

    日常用語では、従業員を使用している人もフリーランスということがありますが、この法律におけるフリーランスには該当しません。また、製造または仕入れした商品を納入することは業務委託ではないので、同様にこの法律におけるフリーランスには該当しません。

    短時間・短期間等の⼀時的に雇⽤される者は、上記でいう「従業員」には含まれません。具体的には、1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、継続して31日以上の雇用を見込む場合が従業員に該当します。

    特定業務委託事業者

    フリーランスに仕事を依頼する事業者を「特定業務委託事業者」といいます。

    特定業務委託事業者の資本金が1千万を超えている場合は、下請法も適用されます。

    関連記事:中小受託取引適正化法のあらまし

    法律の内容

    フリーランス法の目的は、取引上、立場の弱いフリーランスの就業環境を整備することにあります。

    給付の内容その他の事項の明示等

    業務委託事業者は、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。(法第三条一項)

    つまり「前と同じようにお願いします」「とりあえず取り掛かって下さい」などのような口頭で発注は禁止されます。

    報酬の支払期日等

    業務委託をした場合における報酬の支払期日は、特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。(法第四条)

    基本的に支払いサイトは60日以内です。条文の他の部分には30日以内になる場合についての定めがあります。

    特定業務委託事業者の遵守事項

    特定業務委託事業者はフリーランスに対し原則として次に掲げる行為をしてはならない。

    1.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物の受領拒否
    2.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない報酬の減額
    3.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物などの返品
    4.相場に比べて著しく低い報酬の不当な決定
    5.正当な理由のない指定商品の購入または役務の利用の強制

    次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。

    1.委託する事業者のために、金銭、役務そのほかの経済上の利益の提供を要請すること
    2.フリーランス側の責めに帰すべき理由のない給付内容の変更、またはやり直しの要請

    (法第五条)

    申出等

    フリーランスは、法第二章の規定(ここまでの記載)に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。(第六条)

    就業環境の整備

    募集情報の的確な表示

    特定受託事業者の募集に関する情報を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。

    広告等による情報は、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

    (第一二条)

    妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮

    特定業務委託事業者は、フリーランスに対して、妊娠、出産若しくは育児又は介護と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない。(第一三条)

    業務委託に関して行われる言動に起因する問題

    特定業務委託事業者は、フリーランスに対して、次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

    1.性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

    2.特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。

    3.取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

    (第一四条)

    1はセクハラ、2はマタハラ、3はパワハラについての定めです。

    解除等の予告

    特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)をしようとする場合には、フリーランスに対して、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。(第一六条)

    違反があると損害賠償請求の根拠になります。

    罰則

    法に違反すると、公正取引委員会ならびに中小企業庁長官または厚生労働大臣により、助言や指導、報告徴収・立入検査などが行われ、命令違反および検査拒否などがあれば、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。


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  • 労働施策総合推進法のあらまし

    目的

    第1条 この法律は、(略)労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図る(略)。

    年齢差別の禁止

    (第9条)

    関連記事:募集採用の年齢制限について

    再就職援助計画等

    (第24条〜第27条)

    再就職援助計画

    大量離職届

    外国人雇用状況の届出

    (第28条)

    関連記事: 外国人労働者雇用上の注意点>ハローワークへの手続き

    優越的な関係を背景とした言動に起因する問題

    雇用管理上の措置等

    (第30条の2)

    関連記事:パワハラに対する会社の対応

    国、事業主及び労働者の責務

    事業主の責務と同時に、同僚、上司、部下等の労働者に対して言動への注意を求めています。

    第30条の3抜粋 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
    3 事業主は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
    4 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

    紛争の解決の援助

    第三十条の五 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

    当事者は、労働局長の助言・指導を求めることができます。個別労働紛争解決制度によるものと同様です。

    関連記事:個別労働紛争の当事者に対する労働局長の助言・指導

    調停

    (第30条の6)(第30条の7)

    当事者は、労働局長に調停を求めることができます。調停は個別労働紛争解決制度による委員会が行います。

    関連記事:労働施策総合推進法に基づく調停等の制度

    助言、指導及び勧告並びに公表

    第30条の5による助言・指導は紛争に対するものですが、第33条は、労働施策推進法の施行に関するものです。

    第三十三条 厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる。


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  • 景品表示法のあらまし

    景品表示法とは

    景品表示法は、消費者向けの広告や、販売の際の景品提供について規制する法律です。正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。

    過大な景品の提供を禁止

    企業が自社の商品やサービスを販売するにあたって景品を提供する場面で、過大な景品の提供を禁止する内容です。

    第四条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。

    一般懸賞

    一般懸賞は、商品・サービスの購入者に対して、くじ等の偶然性、競技・遊戯の優劣によって景品類を提供することです。

    例えば、お買い上げ500円ごとにくじ券を配布して抽せんで景品を差し上げることです。この場合、取引価格が5000円未満の場合だと最高額は取引価格の20倍まで、5000円以上の場合は10万円まで。景品の総額は懸賞に係る売上予定総額の2%までとなります。

    共同懸賞

    商品・サービスの購入者に対して、一定の地域・業界事業者が共同で景品類を提供する懸賞です。例えば、商店街の歳末大売り出しでの抽選券の配布等です。この場合、景品の最高額は取引価格にかかわらず30万円まで。総額は懸賞に係る売上予定額の3%までとなります。

    来店者への懸賞による景品類の提供

    商品又は役務の購入を条件とせずに、来店者に対して景品類を提供する場合の取引の価額は原則として100円となり、来店者を対象として行う懸賞において提供できる景品類の最高額は100円の20倍である2000円です。ただし、別な取り扱いもあります。

    不当な広告表示を禁止

    主に消費者に向けて自社の商品やサービスを広告する場面において、企業による不当な広告表示を禁止する内容です。

    第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
    一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

    優良誤認表示

    「実際のものよりも著しく優良であると示す」ことを優良誤認表示といいます。

    商品・サービスの性能や品質が、本当の性能や品質よりも非常に優れたものであるように見せて、消費者がよいものだと誤解するような広告のことです。

    有利誤認表示

    「事実に反して・・・・・他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す」ことを有利誤認表示といいます。

    広告で示している値段、割引の内容、数量、支払い条件などの条件が、事実はそうでないのに、他の事業者から買うより非常に有利なものであるように見せて消費者を誤解させるような広告のことです。

    ステルスマーケティング

    景品表示法に関する内閣府告示で、いわゆる「ステルスマーケティング」が不当表示に指定されました。(2023年10月1日に施行)

    ステルスマーケティングとは「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」をすることです。

    示されている運用基準によれば、例えば以下のようなことが該当します。

    事業者が第三者に対して当該第三者のSNSや口コミサイト等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合。

    EC(電子商取引)サイトに出店する事業者が、いわゆるブローカー(レビュー等をSNS等において募集する者)や自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合。

    事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合。

    上記の場合、事業者が広告内容を明示的に指示していないとしても、宣伝を行うインフルエンサーなどが自主的に表示内容を決定しているとは認められない関係性がある場合には、ステルスマーケティングとして不当表示に当たる場合があります。

    詳細

    以上は概要です。詳細は消費者庁ホームページに掲載されています。


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  • 消費者契約法のあらまし

    消費者契約法とは

    消費者契約法は、消費者と事業者が契約を結ぶときに立場の弱い消費者に不利益が生じないように、消費者保護を定めた法律です。

    消費者契約法の骨子は次の2つです。

    1.不当な勧誘により締結してしまった契約は、後から「取消し」できます。
    2.消費者の利益を不当に害する契約条項は、「無効」となります。

    消費者の取消権

    消費者契約法では、以下のような不当な勧誘による契約について、あとから消費者が取り消しする権利(取消権)を定めています。

    1 消費者は退去をお願いしているのに強引に居座った(不退去)

    2 消費者は帰りたいと伝えているのに強引に引き留めた(退去妨害)

    3 勧誘すると告げずに退去困難な場所へ同行して勧誘
    例)山や海など交通の便が悪いところなどへ出かけた先で商品を売り込む

    4 威迫する言動を交えて消費者の第三者への相談の連絡を妨害
    例)学生に対して「大人だから自分で決めないと」と親への相談を妨害して勧誘する

    5 社会経験の乏しさを利用して就職セミナーなどで消費者の不安をあおった(不安をあおる告知)

    6 社会経験の乏しさを利用してデート商法などで消費者の好意を利用した(好意の感情の不当な利用)

    7 高齢による判断力低下を利用して消費者の不安をあおった(判断力の低下の不当な利用)

    8 消費者が成年後見制度を利用すると契約を解除する条項
    霊感などの知見を用いた告知
    例)消費者に対し「病気になったのは悪霊のせい」など不安をあおる
    特別な能力によって消費者の不安をあおった(霊感等による知見を用いた告知)

    9 契約前に目的物の原状を変更して回復を著しく困難にする行為
    例)指輪の鑑定を依頼されて勝手に宝石部分を取り外し、もとに戻せなくする

    10 契約前なのに消費者から強引に損失補償を請求した(契約締結前に債務の内容を実施等)

    11 消費者にとって分量や回数などが多すぎる(過量契約)

    取消権の行使期限

    消費者契約法では、「取消し」ができる期間を以下のように定めています。

    追認できる時点から1年(霊感などによる知見を用いた場合は3年間)

    契約の締結時から5年(霊感などによる知見を用いた場合は10年間)

    「追認できる時点」とは、消費者が契約内容の誤認や勧誘による困惑を脱して、取り消しの原因だった状態が消滅したときを意味します。

    無効になる契約内容

    「事業者は損害賠償の責任を負わない」「消費者はどんな場合でもキャンセルできない」など、以下のような消費者の利益を不当に害する契約条項は無効となります。

    1 事業者が責任の有無を自ら決める、責任があっても損害賠償責任はないとする条項
    2 消費者に一切のキャンセルや返品・交換を認めないとする条項
    3 消費者が成年後見制度を利用すると契約を解除する条項
    4 消費者が負う損害金やキャンセル料が高すぎる条項
    5 消費者の権利を制限するなどして一方的に不利にする条項

    相談窓口

    全国の消費生活センター等

    消費者ホットライン
    全国どこからでも、3桁の電話番号「188」に電話すると消費生活相談窓口を案内してくれます。

    以上は、令和5年6月1日改正施行を含む概要です。詳細は次のサイトをご参照下さい。


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  • 特定商取引法のあらまし

    特定商取引法とは

    特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。正式名称は「特定商取引に関する法律」といいます。

    特定商取引法は「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」など消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、取引類型ごとに、トラブル防止のルールを定めています。

    対象類型

    特定商取引法の対象となる取引類型は以下の7つです。

    訪問販売

    事業者が自宅や職場への訪問販売(SF商法、キャッチセールス、アポイントメントセールスも含む)により、商品や権利の販売又は役務の提供を行う取引の事です。

    通信販売

    事業者が新聞、雑誌、折り込み広告、インターネット等で広告し、郵便、電話、ファクス、インターネット等を利用して購入申し込みを受ける取引のことです。

    次項目の類型である 「電話勧誘販売」に該当するものを除きます。

    電話勧誘販売

    事業者が電話で勧誘を行い、申込みを受ける取引のことです。 電話をいったん切った後、消費者が郵便や電話等によって申込みを行う場合にも該当します。

    連鎖販売取引(マルチ商法など)

    個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘する形で、販売組織を拡大して行う商品、役務の販売のことです。

    特定継続的役務提供(英会話教室など)

    長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のことです。 現在、エステ、語学教室、学習塾、家庭教師派遣、パソコン教室、結婚相手紹介サービス、美容医療が対象です。

    業務提供誘引販売取引(内職商法など)

    「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のことのことです。

    訪問購入

    消費者の自宅等を訪問し、物品を買い取るいわゆる「押し買い」のことです。

    行政規制

    特定商取引法は、上記の取引類型に応じて以下のような規制を定めています。

    氏名等の明示の義務付け

    勧誘開始前に、事業者名、勧誘目的である旨などを消費者に告げることを義務付けています。ECサイトの場合は、EC サイトにこれらの内容を表記することを義務付けています。(第16条)

    営業かどうかわからない電話(電話に出た際に、会社名や担当者名を名乗らずに、いきなり商品やサービスの説明を始めるケースや、営業電話であることを隠し、アンケート調査や世間話のように装って、最終的に商品やサービスの勧誘を行うケース)は、特定商取引法第16条に違反する可能性があります。営業電話であるかどうか確認されたにもかかわらず曖昧な返事をすることも同様です。

    不当な勧誘行為の禁止

    不実告知(虚偽説明)、重要事項(価格・支払条件・契約解除等)の故意の不告知や威迫困惑を伴う勧誘行為等を禁止しています。

    広告規制

    通信販売や連鎖販売取引で広告をする際には、重要事項を表示することを義務付けています。

    虚偽・誇大な広告の禁止

    広告の表示事項等について、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。

    オプトイン規制

    消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者が電子メール広告を送信することを原則禁止しています。また、消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者がファクシミリ広告を送信することを原則禁止しています。

    書面交付義務

    契約締結時に、重要事項を記載した書面を交付することを義務付けています。重要事項とは、商品やサービスなどの質や用途に関する内容や、対価などの取引条件などが該当します。

    特定商取引法の民事ルール

    クーリングオフ

    通信販売以外の取引では、消費者が意に反する契約により、不当な損害を受けないよう、契約書面を受け取ってから、一定期間はクーリング・オフにより契約の解除が出来ます。(法第15条の3)

    クーリングオフの期間は、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入は8日間、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引の場合は20日間です。

    意思表示の取り消し

    勧誘時に、事業者が嘘の説明や間違った情報を提示したり、伝えるべきことを故意に伝えなかったりしたために消費者の判断を誤らせた場合には、消費者は「意思表示の取り消し」が認められています。(法第15条の4)取り消しができる期間は、追認することができる時から1年です。

    過量販売

    訪問販売、電話勧誘販売について、日常生活において通常必要とされる分量を超える商品・サービスを契約した場合、契約締結の時から1年以内であれば解除することができます。

    中途解約

    連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引は、複雑な取引で、取引に不慣れな個人が契約内容を理解しないまま契約しがちであること、特定継続的役務提供取引については長期間にわたる契約で、サービスの質や効果が分かりにくい取引であることから、中途解約して適正な額の返金を受けることができることが定められています。

    消費者が支払う損害賠償等の制限

    消費者が中途解約する際等に、事業者が請求できる損害賠償額に上限が設定されています。


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