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下請法のあらまし

Last Updated on 2024年11月2日 by

下請法とは


下請法とは、下請事業者の利益を守り、取引の適正化を図ることを目的とする法律です。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」です。

下請法は独占禁止法を補完する法律と位置づけられていて、下請事業者に対する親事業者の不当な取り扱いを規制しています。

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下請法の対象になる取引

下請法の規制対象となる取引の内容は、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」の4つに大別されていますが、適用対象となる取引は多岐にわたっています。

製造委託

物の製造や加工を、発注者側で製造業者が規格、品質、形状などを指定したうえで、他の事業者に発注する取引です。

修理委託

修理業者が物の修理を他の事業者に委託する取引です。

情報成果物作成委託

情報成果物(プログラムやデザイン、コンテンツなど)を、提供・作成を行う事業者が、他の事業者に作成作業を委託する取引です。「TVゲームソフトや会計ソフトなどのプログラム」の作成委託とそれ以外の「映像コンテンツ、商品デザインや設計図面など」の作成委託があります。

役務提供委託

各種サービスの提供を行う事業者が、役務の提供を他の事業者に委託する取引です。「運送・物品の倉庫保管と情報処理」と、それ以外の「ビル・機械メンテナンス、コールセンター業務など」の役務提供委託があります。

適用の基準

下請法は、取引を委託する事業者の資本金、受注する事業者の資本金によって、「親事業者」「下請事業者」に該当するかが決まります。

資本金1千万以下で該当しない場合、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が該当する場合があります。

関連記事:フリーランス法のあらまし

製造委託・修理委託・情報成果物委託(プログラム作成のみ)・役務提供委託(運送・物品の倉庫保管と情報処理のみ)

自社の資本金が3億円を超える事業者が、資本金3億円以下の事業者に委託する場合、発注者は親事業者、受注者は下請事業者に該当します。

自社の資本金が1千万円を超え3億円以下の事業者が、資本金1,1千万円以下の事業者に委託する場合、発注者は親事業者、受注者は下請事業者に該当します。

情報成果物委託(プログラム以外)・役務提供委託(運送・物品の倉庫保管と情報処理以外)

自社の資本金が5千万円を超える事業者が、資本金5千万円以下の事業者に委託する場合、発注者は親事業者、受注者は下請事業者に該当します。

自社の資本金が1千万円を超え、5千万円以下の事業者が、資本金1千万円以下の事業者に委託する場合、発注者は親事業者、受注者は下請事業者に該当します。

親事業者の義務

書面の交付義務

(第3条)

口頭発注によるトラブルを回避するため、親事業者は、発注に際して具体的な内容を記載した発注書面を下請事業者に交付しなければなりません。発注書面に記載が必要な事項も定められています。

支払期日を定める義務

(第2条の2)

支払期日が曖昧だと支払遅延につながるおそれがあり、ひいては下請事業者の経営が不安定になる可能性があります。そこで、下請代金の支払期日を事前に定めるよう義務づけられています。支払期日は60日以内とされています。

書類の作成・保存義務

(第5条)

親事業者は下請取引が完了した場合、取引記録を作成し2年間保存する義務があります。取引記録の記載項目も定められています。

遅延利息の支払義務

(第4条の2)

親事業者が支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、下請事業者に遅延利息を支払うよう義務づけられています。

親事業者の禁止行為

(第4条)

受領拒否

下請事業者に責任がないにもかかわらず発注した物品等の受け取りを拒否することが禁止されています。正当な理由のない発注取消や納期の延期も受領拒否にあたります。

支払遅延

下請事業者への代金の支払いは、発注した物品などの受領日から60日以内に行わなければなりません。受領した物品などについて社内の検査が済んでいないことは支払遅延の理由にはならないとされています。また、下請事業者からの請求書の提出が遅れていることを理由に督促をしないで支払いを遅延させることも禁止行為に該当します。

減額

下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注時に定められた金額から一定額を減じて支払うことが禁止されています。値引き、協賛金など、名目や方法や金額の多寡によらず一切認められません。

返品

下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注した物品等を受領後に返品することが禁止されています。ただし、不良品があった場合の返品については、受領後6か月以内に限り認められます。

買いたたき

買いたたきとは、発注する物品などに通常支払われる対価よりも著しく低い下請代金を親事業者が不当に定めることです。

物の購入強制・役務の利用強制

正当な理由なく、強制的に親事業者が指定する製品・原材料などを購入させたり、保険やリース等の役務を利用させたりすることが禁止されています。

報復措置

下請事業者が禁止行為があった事実を公正取引委員会や中小企業庁に通告したことを理由として下請事業者に取引停止などの報復措置を取ることが禁止されています。

有償支給原材料等の対価の早期決済

下請事業者が、親事業者が有償で支給する原材料を使用して物品の製造などを行っている場合、発注している物品に対する下請代金の支払期日よりも前に、原材料の代金を支払わせることが禁止されています。

割引困難な手形の交付

下請代金を手形で支払う場合、銀行など一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付することが禁止されています。

不当な経済上の利益の提供要請

親事業者が、自社のために下請事業者に金銭や役務、その他の経済上の利益を不当に提供させることが禁止されています。

不当な給付内容の変更、やり直し

下請事業者に責任がないにもかかわらず、費用を負担せずに発注の取り消し、内容変更、やり直し、追加作業をさせて下請事業者の利益を不当に害することが禁止されています。

違反すれば

公正取引委員会による調査の結果、違反の事実が確認されれば、勧告を受けることになります。

勧告は、違反行為の取りやめ、原状回復、再発防止措置の実施などが含まれます。勧告がなされた場合、原則として会社名とともに違反事実の概要、勧告の概要が公表されます。

違反行為によっては罰金を科せられます。


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