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独占禁止法のあらまし

Last Updated on 2023年10月15日 by

独占禁止法は中小企業にも関係する

独占禁止法は、独占的な力を持つ大企業が適用される法律というイメージがありますが、中小企業にも関係する法律です。

独占禁止法は、商業、工業、金融業その他の事業を行う者(事業者)を対象としています。資本金や従業員数に関わらず適用されます。なお、役員・従業員等も事業者に入ります。

「取引先から在庫を無理強いされる」「口頭で指示するばかりで注文書を出してくれない」「メーカーから販売価格を指示される」「同業者から業務提携を誘われた」「同業者から談合を持ちかけられた」こういう問題も独占禁止法で扱われる問題です。

独禁法違反となる行為

共同の取引拒絶・共同ボイコット

(独占禁止法2条9項1号、一般指定1項)

正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

独占禁止法の「一般指定」とは、公正取引委員会が告示によって指定した、すべての業種に適用される不公正な取引方法のことです。

不当廉売

(独占禁止法2条9項3号、一般指定6項)

正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの。

通常、企業努力によって競争者よりも低い価格で商品や役務を供給することは問題ありません。

しかし、体力のある大企業が一時的であっても原価割れの低価格で商品を供給すれば、競争者は市場での競争に負けて退場することになります。競争者いなくなった市場で大企業が思い通りの過価格で販売できるようになるようでは、競争秩序が害されてしまいます。そのため、独占禁止法は不当廉売を規制しています。

再販売価格の拘束

(独占禁止法2条9項4号)

再販売価格の拘束とは、取引先に対して、取引先が販売する際の販売価格を指示してこれを維持させることなどをいいます。

商品の価格設定は、事業者が自由な意思によって決定できることが競争の重要な前提条件です。そのため、独占禁止法は、取引先の価格設定の自由を奪う再販売価格の拘束を規制しています。

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

優越的地位の濫用

(独占禁止法2条9項5号)

五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。(以下略)

優越的地位の濫用とは、取引上優越的地位にある事業者が、その優越性を利用して取引先に不当に不利益を与える行為をいいます。

例えば、返品、対価の支払遅延や減額、買いたたき、協賛金の負担要請などがあります。また、優越的地位の濫用行為は下請取引で行われることが多いため、下請法でも規制されています。

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排他条件付取引

(一般指定11項)

不当に、相手方が競争者と取引をしないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

例えば、自社の製品のみを販売し、他社製品を扱わないことを条件とする特約店契約などがこれに該当します。

ただし、独占禁止法で規制される排他条件付取引は、その行為により公正な競争を阻害するおそれがある場合に限られます。「市場における有力な事業者」がこのような行為を行った場合に、排他条件付取引に該当するとされており、「市場における有力な事業者」は、市場におけるシェアが20%を超えることが一応の目安と考えられています。

再販売価格の拘束

(一般指定12項)

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
一 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
二 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

例えば、特約店契約において、販売地域や販売先を制限する行為や、価格の表示方法等を制限する行為が該当します。

法的措置

排除措置命令

不公正な取引方法を行った事業者に対しては、公正取引委員会が「排除措置命令」をすることができます(独占禁止法20条)。

排除措置命令に従わなかった場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます(独占禁止法90条3号)。

ただし、不公正な取引方法を行ってしまった場合でも、公正取引委員会の排除措置命令に従えば、刑事罰が科されることはありません。

課徴金

不公正な取引方法のうち、一定の不公正な取引方法については、違反事業者に対して課徴金が課されます。

確約手続

公正取引委員会は不公正な取引方法把握する調査を行います。その調査の中で「確約手続」という手続きがあります。

独占禁止法の確約手続とは、比較的軽微な独占禁止法違反の疑いがある場合、会社が自発的に改善計画を策定して改善を「確約」することで、公正取引委員会から排除措置命令や課徴金納付命令の免除を受ける手続です。

犯則調査

公正取引委員会は、独占禁止法の違反事件のうち、犯則事件(独禁法89条、90条、91条の事件)を調査するため必要があるときは、 裁判官の発する許可状により、 事件関係人の営業所への立入検査や関係者からの事情聴取等の調査(犯則調査)を行うことができます(独禁法102条1項、2項)。

賠償請求

不公正な取引方法により損害を被った事業者は、不公正な取引方法を行った事業者に対して損害賠償請求をすることもできます。

この損害賠償請求では、不公正な取引方法を行った事業者は、故意又は過失がなかったことを証明しても損害賠償責任を免れることはできない「無過失責任」となるので注意が必要です(独占禁止法第25条)。


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