Last Updated on 2023年10月6日 by 勝
労働契約と法令の関係
労働契約の場面では、一般的には使用者の立場が強いため、使用者の意向に沿った契約が締結される可能性があります。
そこで、労働基準法等では、法律の基準に達しない労働契約はその部分について無効であることを定めています。
法律が上です。
労働基準法第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
例えば、労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間を超えてはならない(一部例外があります)と規定しています。この規定が適用される事業場では、1日9時間という条件で、労働者も納得して採用されたとしても、法定の労働時間を超えた部分は無効なので、この労働条件は1日8時間に修正されます。また、使用者には罰則も適用されます。
賃金については最低賃金法が賃金の最低基準を定めています。最低賃金法の手続きによって定められた最低賃金(当道府県別等に定められます)を下回る賃金を定めれば、下回る部分は無効になります。
例えば、最低賃金が時給1000円と定められている都道府県で、仮に労働者から「私は年金があるので低い賃金で働きます」という申し出を受けて時給800円に決めたとすれば、最低賃金法が適用されて賃金は自動的に1000円に修正されます。また、使用者には最低賃金法違反の罰則が適用されます。
労働契約と労働協約の関係
労働組合と使用者が団体交渉をして締結した協定を労働協約と言います。
労働協約と労働契約の関係については労働組合法に定められています。
労働協約が上です。
労働組合法第16条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。
労働協約は原則として組合員だけに適用されます。ただし、労働協約が同種の労働者の4分の3以上に適用されている場合は、組合員以外にもその労働協約が適用されます。
労働協約よりも個々の労働契約が有利な内容であったとしても、労働協約の方が優先し、労働契約の有利な内容が引き下げられるというのが一般的な解釈です。労働者は労働組合を通じて労働条件を決定するという労働組合法の立場によるものです。
労働契約と就業規則の関係
就業規則とは、職場内で守られるべき規律や共通の労働条件など職場での統一的なルールを定めたものです。
就業規則と労働契約の関係については労働契約法に定められています。
就業規則が上です。
労働契約法第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
ただし、労働契約が有利な部分については労働契約が適用されます。
例えば、就業規則に休憩1時間と規定されていれば、その就業規則が適用される労働者に対して、労働契約で30分とすることはできず、その契約は自動的に休憩1時間に修正されます。
また、就業規則に定年制の定めがあったとしても、その労働者に対して「定年制を適用しない」という労働契約があれば、労働契約のほうが有利なので、労働契約の内容が適用されます。