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最低5日の有給休暇を取得させる義務

Last Updated on 2022年9月12日 by

最低5日は有給休暇取得が必要

10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、そのうち5日は、有給休暇が発生した日から1年以内に、使用者が時季を指定して取得させる義務があります。

このルールは、正社員だけでなく、短時間勤務で有給休暇の比例付与を受けているパートタイマーも、有給休暇日数が年間10日以上になる場合は適用されます。

対応が必要ない会社もある

労働基準法第39条の第5項の「計画的付与」を実施している企業は、特に別な対応をする必要はありません。要求される水準は実施済みだからです。

それと、有休消化率が良くて、5日以上は皆とっているよ、という会社も特にバタバタする必要はありませんが、実際に5日以上とっているかどうかのチェックは必要です。

有給休暇の残日数管理が重要

とは言え、有休消化率が良い会社でも、取得が5日に満たないまま1年を過ぎる人がいれば問題になりますから、労働者ごとに、取得状況のチェックをしなければなりません。

基準日から1年以内という条件があるので、気付くのが遅くて対応できなければ法律違反になってしまいます。

また、今回の法改正に伴い、年休管理簿を作らなければなりません。

これまでも、よほど無頓着な会社でない限り何らかの管理簿はあったと思うのですが、今度は3年の保存義務がある法定帳簿扱いになります。

条文を読んでみましょう

労働基準法第39条第6項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

上は、前からあった規定です。いわゆる計画的付与に関する規定です。労使協定を結ぶことで実施できます。

下が、有給休暇を最低5日させることを、使用者に義務付けた条項です。

労働基準法第39条第7項
使用者は、年次有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10日以上である労働者に係るものに限る。)の日数のうち5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

第7項については労使協定が必要ありません。個々の労働者と話し合って有給休暇を消化してもらうのが基本です。

この場合、労働者の希望する取得日があればそれを優先するのが基本です。

特に希望する取得日がない場合は、そのままにしておくと取得しないままになってしまう恐れがあるので、業務上比較的余裕がある時期を指定することができます。年末年始・夏季休暇の日数を追加する形も考えられます。

取得しない労働者への対応

また、この規定は「与えなければならない」と使用者に義務を課していますが、与えようとしても個々の労働者が拒むという事態も考えられます。その対策として、取得しない場合に人事考課で評価を下げる、懲戒の対象にするなどの強制的な対応はしてはならないと考えられています。年次有給休暇をいつ取得するかはあくまでも労働者の権利だからです。

使用者が最低5日の有給休暇をとらせなければ、労働基準法第37条第7項違反ということで三十万円以下の罰金になる可能性があります。一方、労働者に対する罰則はありません。

ということで、最低限の有給休暇を取得しない労働者に対しては、前述したように強制的なことはできないので、取得しない事情を聞き取り、または調査して(多くの場合は休むと代わりがいないので後で自分の仕事が忙しくなるだけなどの業務分担の問題がからんでいます。また、ごくまれですが、何か不都合なことをしているので休んでいる間にそれを発見されたくないというケースもあります。)取得できる環境の整備に取組なければなりません。

労働基準法第39条第8項
前項の規定にかかわらず、労働者の請求する時期に与えた場合又は労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合において労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをし、有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

8項は、きちんと請求時期に与えている場合や、計画的付与を実施している場合には、格別のことをしなくてもよいという規定です。

個々に話し合いで決める形にするか、第6項の労使協定による計画的付与にするかは、それぞれの会社の判断です。

これまで有給の夏季休暇や正月休みを実施していた会社が、それを取り消して、改めて有給休暇として与えるようなことをすれば、実質的に有給休暇が減ることになるので労働条件の不利益変更にあたります。

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