Last Updated on 2019年11月26日 by 勝
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複数の職場での労働時間を通算する
パートで働く人を中心に、複数の職場を掛け持ちで働いているひとがいます。
会社は、異なる事業場で働く人たちの労働時間を合計して把握する必要があります。
労働基準法第38条第1項に「事業場を異にする場合も、労働時間の適用に関する規定の適用については通算する」と定められています。この「事業場を異にする」は、「事業主を異にする場合を含む」という通達があります。
割増賃金の計算
労働時間管理の基本の一つに、週40時間、日8時間という時間制限があります。
二つの職場で働いた時間を足して、この時間を超えたら、割増賃金を払わなければなりません。この場合は、法定労働時間を超えた時点で働いてた職場、原則として後の職場に割増賃金を支払う義務があります。
例えば、ある労働者が日中にA店舗で5時間、夕方からB店舗で5時間働いた場合は、5時間+5時間=10時間となり、8時間を超える時点で働いていたB店舗は2時間分については割増賃金を払わなければなりません。
ただし、午前の職場で4時間、夕方の職場で4時間の契約をしている場合は、午前の職場で超過勤務をさせれば全体として8時間を超えることが明らかなので、この場合は午前の職場に割増賃金を支払う義務があります。
一般的には上述のように後の会社ということになっていますが、労働契約の順序によるという考え方もあります。
これは、アルバイトをしているかどうか常に確認することは現実的でなくても、採用時点で、他の仕事をしているかどうか確認することが現実的だからです。
時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制には、
① 延長できる限度時間(月45時間・年間360時間以内)
② 特別条項の上限(年720時間以内)
③ 1か月の労働時間を100時間未満(時間外労働と休日労働の合計)
④ 2か月ないし6か月の平均労働時間を月680時間以内(時間外労働と休日労働の合計)
という4つの上限があります。
このうち、①と②については事業場に対して適用される規制です。
つまり、その事業場で労働者が何時間働いたかが重要で、仮にある労働者が複数の事業場で働いていたとしても、その労働時間を通算して考える必要はないということです。
一方、③と④は労働者個々に適用されるので、異なる事業場同士でも労働時間を通算する必要があります。
よって、同じ月にAという事業場で月50時間、Bという事業場で月55時間働いた場合、「1か月100時間未満」の上限を超えるため法違反となります。
これらは厚生労働省のQ&Aに、転勤の際の労働時間の通算で説明されていますが、副業・兼業であっても基本的な考え方は同じと考えるべきでしょう。他の職場での労働時間を申告させる必要があります。
ダブルワークの把握
労働者本人が、職場に隠して別な職場で働いていることもあると思います。その場合、会社が相当の注意を払っても知りえなかった場合には免責を主張できると思います。
相当の注意の例としては、パートタイム就業規則等に申告の義務付けを明記し、雇用の際にダブルワークについて確認する、また、途中でダブルワークになったときに申告することを周知するなどです。
会社が相当の注意を払っていなかったと認められれば、従業員が隠して働いていた場合でも、会社に責任が生じる可能性があります。
責任があるとされた場合は、割増賃金未払いに対する責任だけでなく、過重労働による健康被害等にも責任が出てくると考えられます。
なお、面倒だからと、パート勤務者のダブルワークを禁止するのは、職業選択の自由があるし、生活の資を奪うことになるので無理です。
昨今、仕事の多様化の論議があり、その中には、フルタイマーの兼業禁止を見直す方向もあります。
これからは、ダブルワークはパートの問題にとどまりません。兼業を認めるということを前提とすれば、自社の従業員が働いている別の会社との連絡体制など、新たな課題が生じることになります。