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  • 公益通報と内部告発とは違うのでしょうか?どういうところが違いますか?

    公益通報というのは、公益通報者保護法という法律の裏付けがある通報のことです。法律の条件をみたす内部告発は公益通報に含まれます。単に「内部告発」という場合は、一般的には「勤務先の不正などを社外に明らかにすること」を指します。

    「内部告発」と「公益通報」の違い

    内部告発とは、社員などの内部者が会社の不正や問題点を外部に伝える行為の総称です。法律上の定義はなく、したがって、保護規定もありません。

    公益通報とは、公益通報者保護法に基づき、一定の要件を満たす通報です。法律上の制度なので、通報者は法律で保護される対象になります。

    つまり、内部告発は、必ず保護されるわけではなく、公益通報の要件を満たす場合にのみ法的保護が及ぶという整理です。

    関連記事:公益通報とは何か、どこに通報すればよいの?

    公益通報に当たらない内部告発の法的リスク

    公益通報者保護法の要件を満たさない内部告発は、以下のリスクを負うことがあります。

    • 名誉毀損・信用毀損のリスク(告発内容が間違っていたり不正確であって、その結果、会社や個人に対する損害を与えた場合)
    • 守秘義務違反(営業秘密、顧客情報、医療情報などを外部に流した場合)
    • 懲戒処分(就業規則に違反することがあった場合)

    公益通報以外で保護される可能性があるケース

    公益通報に直接当てはまらなくても、労働者保護、消費者保護の目的で、告発の方法が相当である場合は、一定の保護が認められる余地があります。

    公益通報に直接当てはまらなくても、表現の自由と認められる範囲であれば、問題にされないこともあります。

    ただし、これはケースごとの判断で、公益通報者保護法ほど明確な保護ではありません。


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  • SNSを利用した内部告発は公益通報として保護されるのでしょうか?

    休職の延長を申し出ている従業員がいます。会社の判断を受け入れてもらえず交渉が長引いているのですが、その従業員が交渉内容を自分に都合よく書いたブログを立ち上げました。本人はこのような発信は公益通報として保護されると言っていますが、そうなのですか?

    公益通報として保護されるか?

    公益通報者保護法では、

    • 事業者や行政機関などに対して 「法令違反行為」 を通報すること
    • その通報が 労働者の解雇・不利益取扱いから守られること

    が定められています。つまり「公益通報」として保護されるのは、会社に 刑事罰や行政罰の対象となるような法令違反 があると信じ、かつ相当な理由があってそれを外部に通報する場合です。

    このケースは

    休職延長の可否や対応の仕方は、基本的には労使間の個別紛争であり、通常の対応は、「法令違反行為」である可能性は低いと思われます。

    まして、内容が、単なる不満の拡散、会社を貶める目的での発信、一方的に歪めた発信であれば、公益通報保護の対象外と判断してよいでしょう。

    さらに、公益通報者保護法では、通報先として「SNS」をしていません。この点からも公益通報として保護される要件を欠いています。

    つまり、ご質問にあった、交渉経過を書いたブログ公開は、公益通報者保護法にいう 公益通報 には該当しない可能性が高いと思われます。

    むしろ、会社名や具体的なやりとりを公開しているとすれば、名誉毀損や信用毀損、守秘義務違反 にあたるとして、会社の方から反撃できる可能性もあります。

    ただし、公益通報にならないとしても、内部告発が悪いと言うことではありません。「表現の自由の範囲内」かもしれません。そうした微妙な判断については、弁護士等の専門家の意見を聞くべきでしょう。

    実務的な対応の方向性

    本件の場合であれば、本人には「公益通報の保護対象は、法令違反を外部に通報した場合に限られる」旨を説明してよいでしょう。

    発信内容が事実に反して、会社の名誉・信用を害している場合には、削除要請や注意を行ってもよいでしょう。

    ただし感情的に対応すると炎上する可能性もあるので、SNS上での対抗はリスクがあります。会社としては記録を保存しつつ、名誉毀損・守秘義務違反などに対する法的対応について弁護士と相談することが望ましいでしょう。

    相手に対する警告書の文例

    参考までに、こうした発信をやめるように警告する文章の例を示します。

    ここでは裁判提起や懲戒処分ではなく、まずは「注意・警告」という位置づけを想定しました。実際に手交する際には事前に弁護士とご相談ください。

    警告書(サンプル)

    警告書

    〇〇殿

    貴殿におかれましては現在休職中のところですが、当社との間で休職延長に関するやり取りの内容を、貴殿が運営するインターネット上のブログに掲載していることを確認しました。

    しかしながら、当該内容には当社の対応について一方的かつ不正確な記載が含まれており、これにより当社の名誉・信用を毀損するおそれがあると判断しております。また、当該内容は公益通報者保護法における「公益通報」に該当するものではなく、本件のような公開は法的な保護の対象となりません。

    よって、当社は貴殿に対し、当該ブログ記事の削除を速やかに行うよう強く求めるとともに、今後同様の行為を繰り返さないよう厳重に警告いたします。万一、本警告にもかかわらず改善が見られない場合には、就業規則に基づく懲戒処分その他の措置を検討せざるを得ませんので、十分にご留意ください。

    以上

    20XX年〇月〇日

    株式会社〇〇
    代表取締役 〇〇〇〇

    記載のポイント

    • 「一方的・不正確な記載」「名誉・信用を毀損するおそれ」などと記載し、断定的表現は避ける。
    • 公益通報ではないと判断していることを明示する。
    • 削除要請と再発防止を強く求める。
    • 放置すれば懲戒等に発展する可能性にも触れて抑止力を持たせる。

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  • 従業員の学歴詐称が判明したとき、会社はどう対応するべきか?

    「履歴書の学歴詐称」は実務上まれですが、発覚すると問題となることが多いテーマです。結論からいうと、常に懲戒解雇が有効になるわけではなく、その虚偽が業務適性や採用判断に重大な影響を与えるかどうかで判断することになります。

    法令と判例

    法令

    法律には「学歴詐称=処分」と直接的に定めた条文はありません。ただし、労働契約の前提となる事項に虚偽が含まれれば、民法を適用して、錯誤(勘違い)による契約の取り消しや、公序良俗違反による契約無効などが考えられます。

    判例

    この件については、判例がいくつかあります。

    判例では「虚偽の内容が採用に重大な影響を与える場合」に限り懲戒解雇が有効とされています。

    懲戒解雇が有効とされた例

    最終学歴を大学卒と偽ったケース
    学歴が採用条件の一つであり、採用担当者が明確に学歴を重視していた → 懲戒解雇有効

    資格・免許の虚偽申告
    医師免許や運転免許など、業務遂行に不可欠な資格を偽った → 解雇有効。

    懲戒解雇が無効とされた例

    業務能力に直接関係のない学歴の水増し
    業務遂行に支障がなく、本人の勤務実績も良好であった場合、解雇は社会的に相当とは言えないとして、解雇が無効になったケースもあります。

    実務上の整理

    整理してみます。

    学歴が採用の本質的条件(研究職、資格取得要件あり、幹部候補など) であれば、学歴詐称は重大で、懲戒解雇も有効になる可能性が高いと考えられます。

    学歴が業務に影響しない一般職の場合は、虚偽は不誠実な行為ですが、懲戒解雇まで認められるのは難しいでしょう。

    多くの会社規程では、解雇事由のなかに「採用時の申告虚偽」が含まれていますが、裁判になってしまうと、有効かどうかはケースごとに判断されることになります。

    ではどう判断すべきか

    学歴詐称自体は「不誠実な行為」であり放置はできませんが、採用条件や業務遂行に重大な支障がなければ、懲戒解雇では重すぎ、戒告(もっとも軽い懲戒処分)で十分相当と整理されます。判例・実務の流れに照らしても、穏当な対応です。

    以下に、本人に手交する 処分通知書サンプル を示します。

    処分通知書(サンプル)

    令和〇年〇月〇日

    処分通知書

    〇〇株式会社
    代表取締役 〇〇〇〇 印

    従業員 〇〇 〇〇 殿

    戒告処分について

    あなたが当社へ提出した履歴書において、学歴を実際と異なる内容で記載していた事実が判明しました。

    この行為は、会社に対する信頼を損ねる不誠実なものであり、就業規則第〇条(懲戒)に該当します。

    しかしながら、これまでの勤務態度・職務遂行状況に特段の問題は認められず、また虚偽記載が業務遂行に直接の支障を及ぼしたものではないことから、今回については戒告処分といたします。

    本処分を厳粛に受け止め、今後は誠実に勤務し、同様の行為を繰り返さぬよう強く求めます。

    以上

    ポイント

    「事実の認定」→「規程違反の指摘」→「処分理由」→「処分内容」→「今後への期待」という順で記載すると法的に整理された文書になります。

    感情的なトーンで書いてはいけません。事実ベース+冷静な処分理由の説明が重要です。

    当然、処分決定前に「本人の弁明の機会」を与えておくことが必要です。弁明を聴かない処分は無効のリスクがあります。


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  • 勝手残業が止まりませんが、会社としてはどうすればよいでしょうか?

    従業員が勝手に時間外労働をして、それを課長が追認しているケースが多いので、今後は一切の勝手残業を認めないことにし、その時間の賃金も支払わないと通知しました。現在は守られていますが、今後、勝手な時間外労働があったときに、その時間の賃金を払わないと突っ張ればどういうリスクがありますか?

    法律上の考え方

    法律と判例によれば「使用者の指揮命令下で労働した時間」は時間外労働として賃金支払い義務がある、とされています。

    ポイントは「命令したかどうか」だけではなく「使用者がその労働を認識し得る状態にあったかどうか」です。

    上司が残業を黙認した、追認した。出退勤記録や業務メールなどで会社が把握できる状態にあった、などの場合は「黙示の指揮命令」とみなされ、賃金支払い義務が認められています。

    会社の対応とそのリスク

    基本的には、御社でやられたように、「勝手残業は認めない」と明確に通知し、守らせる指導をすることが大事です。

    指導しているにもかかわらず、従業員が時間外に働き、それを会社が「気づいたのに止めなかった」「成果物を利用した」場合は、追認があったとみなされる可能性が高いと思われます。

    つまり、禁止しているのだから賃金を支払わないとと突っぱねると、労働基準監督署に申告された場合、是正勧告を受ける可能性が大きいです。

    実務対応のポイント

    残業申請制を徹底

    残業は事前申請・許可制にし、許可なき残業は認めないと、あらためて周知します。

    発覚時の対応

    実際に残業があった場合は、原則として賃金は支払う(未払いは危険)ことにしますが、同時に、ルール違反として「指導」し、悪質な場合は「懲戒処分」を行います。

    つまり「賃金は払うが、ルール違反は処分する」という二本立てで管理します。

    課長層への徹底

    上司が「勝手残業を黙認」しないことが重要です。

    管理職に対して「止める義務」「承認ルート以外の残業を認めない」教育を徹底する必要があります。

    まとめ

    賃金未払いで戦うのはほぼ負け筋です。

    未然に防ぐ仕組みを維持しつつ、万一残業があった場合は支払った上で指導するのが現実的です。

    「払わない」とすると、労働基準監督署対応・裁判リスクなどに発展するおそれがあります。

    残業申告についての規程例

    これまでの解説を規程の形に整えてみました。この規程を就業規則の付属文書として制定することで、「残業代は支払う」が、「無断残業は規程違反として処分対象」という方針を明確に示すことができます。

    時間外労働管理規程(文例)

    第1条(目的)

    本規程は、労働基準法その他関係法令を遵守し、従業員の労働時間を適正に管理するとともに、従業員の健康保持及び業務効率化を図ることを目的とする。

    第2条(原則)

    1. 当社における労働時間は、就業規則に定める所定労働時間を原則とする。
    2. 時間外労働は、業務上やむを得ない場合に限り、事前に申請・承認を得た場合のみ認める。

    第3条(申請・承認手続)

    1. 従業員が時間外労働を希望する場合は、あらかじめ所定の様式により、理由及び予定時間を明記して直属の上長に申請しなければならない。
    2. 上長は、業務上の必要性を確認のうえ承認または却下を行い、必要に応じてさらに部署責任者の承認を得る。
    3. 承認された場合に限り、時間外労働を行うことができる。

    第4条(禁止事項)

    1. 承認を受けずに時間外労働を行うことを禁止する。
    2. 上長が承認手続きを経ずに時間外労働を黙認または追認することを禁止する。

    第5条(違反時の取扱い)

    1. 従業員が承認を得ずに時間外労働を行った場合であっても、実際に労働した時間については法令に基づき賃金を支払う。
    2. 前項の場合、当該従業員は本規程違反として指導・注意を受け、繰り返す場合には懲戒処分の対象となる。
    3. 上長が承認を経ずに時間外労働を黙認または追認した場合、当該上長は管理責任を問われ、指導・注意を受け、繰り返す場合は降格等の人事上の不利益を受けることがある。

    第6条(周知徹底)

    会社は、本規程の内容を全従業員に周知し、労働時間管理の徹底に努める。

    第7条(附則)

    本規程は、○年○月○日より施行する。


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  • 採用手続きの書類が一部未提出だが入社させてよいか?

    入社予定者からの書類が一部提出されていない段階で、入社予定日になってしまった場合、どのように扱うべきでしょうか?

    会社にとってのリスク

    一部または全部の書類が未提出のまま入社を認めれば、会社にとって以下のようなリスクを伴う可能性があります。

    コンプライアンス上のリスク: 提出された書類に虚偽の記載があった場合、時間がたってからだと、内定取り消しや解雇のタイミングが遅れて、トラブルが複雑化する可能性があります。また、社会保険(年金、雇用保険など)の手続きに必要な書類が揃わないと、手続きが遅れ、会社と従業員の双方に不利益が生じる可能性があります。

    事務作業の非効率性: 入社後も書類提出の催促が必要となり、人事担当者の事務負担が増加します。書類の提出漏れや紛失といったミスも起こりやすくなります。

    規則との矛盾: 就業規則に「所定の採用手続」と定めているにもかかわらず、その手続きを完了させずに社員として受け入れることは、会社のルールと実態が一致していない状態です。これにより、他の規則についても「厳守しなくてもよい」という認識が広がるリスクがあります。

    一般的な企業の対応

    多くの企業では、入社日までにすべての必要書類を揃えることを厳格に義務付けています。これは、会社が従業員を雇用する上で、採用条件を満たしているかの最終的な確認と、社会保険等の採用手続きをスムーズに行うための基本的な管理体制だからです。

    内定者には、提出書類のリストを事前に渡し、入社日までに準備を促します。

    入社日前に書類がすべて揃っているかを確認し、不足があれば入社日を延期するなどの対応が必要です。

    温情的対応が直ちに問題を引き起こすわけではありませんが、将来的なリスクを避けるためにも、入社手続きを厳格化することを強くお勧めします。


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  • 店に強盗がくるかもしれない!店としてどう対策するか考えてみた

    ①従業員が強盗被害で怪我をした場合の労災適用、②経営者の法的責任、③予防的対策や保険、④従業員への事前教育、などの観点から解説します。

    一般的なこと

    労災適用

    従業員が怪我などをした場合に、店内あるいは配達途中などの被災であれば労災保険が適用されます。

    業務中・勤務中に第三者(強盗)から受けた暴行や負傷も、業務災害として労災認定されます。

    治療費に関しては健康保険ではなく労災でカバーされるので、従業員本人に金銭的負担は生じません。

    経営者の法的責任

    経営者も被害者であることは確かですが、従業員に対する「安全配慮義務」(労働契約法)があります。

    強盗が予見できないレベルの突発的事件なら責任追及は限定的ですが、「従業員の安全確保に全く無関心で、鍵や防犯設備を怠っていた」といった場合には、損害賠償責任を問われる余地もあります。

    見舞金の取扱い

    労災保険で補償されるので、原則として会社が治療費等を負担する必要はありません。

    会社から「見舞金」や「休業中の賃金補填」を行うことはよくあります。これは法的義務ではなく任意ですが、一般的に行われています。

    会社にも落ち度があった場合は、被災した従業員から損害賠償を請求される可能性があります。

    予防的な防犯対策

    防犯カメラ・警備会社との契約・強盗対策マニュアル作成などは安全配慮義務の一環ともいえます。

    従業員の安全意識を高めるために「レジに大金を置かない」「非常ボタンの設置」「防犯ブザーの所持」などを検討するとよいでしょう。

    活用できる保険

    業務災害補償保険(任意保険)
    労災の上乗せで慰謝料や休業補償をカバーできます。

    店舗総合保険
    強盗による現金・商品盗難、什器破損などに対応できる保険があります。

    傷害保険(従業員対象)
    労災でカバーしきれない部分が補償可能になる保険です。

    従業員に対する事前教育

    強盗など不測の事態に備えたマニュアルを準備しましょう

    緊急時の通報手順(110番、警備会社への連絡)を店内に掲示しましょう。

    防犯機器の使い方(非常ベル、通報装置など)はときどき訓練が必要です。

    とても大事なポイントですね。
    結論から言うと――「戦ってほしい」と明示するのは避けるべきです。

    もしものときは

    安全優先

    従業員の生命・身体の安全が最優先です。強盗は刃物や銃などを持っている可能性があり、不用意に抵抗すれば怪我や死亡のリスクが高まります。

    可能であれば、非常ボタンや警察への通報を最優先します。

    同時に、お客様を安全な場所へ誘導します。

    金品は犯人の要求に従うのを原則とします。

    防犯訓練について

    店舗等で刺股を用いた訓練を行うことがあります。防犯意識を高めることには大変有効ですが、「刺股訓練」と「実戦での使用」は、目的や法的な扱いが少し異なることに留意が必要です。

    刺股訓練の意味

    主目的は 「職員の防犯意識を高める」「非常時の行動を事前に考える」 ことです。

    特に学校の場合は、児童・生徒の避難誘導までの時間を稼ぐ「防御手段」として位置づけられています。

    銀行なども、警備会社や警察到着までの時間稼ぎを想定しているケースが多いです。

    実際の場面では

    日本の刑法では「正当防衛」「緊急避難」が認められているので、 他者や自分の生命・身体が危険にさらされている場面では、刺股を用いた制止行為は違法ではありません。

    不適切な使い方で逆に被害が拡大する可能性があるので、誰もが刺股を扱ってよいというわけではありません。

    また、犯人が無抵抗になった後も攻撃を続けると「過剰防衛」になり得るので注意が必要です。

    刺股などの防犯具使用は、「犯人制圧を目的」とするよりも、従業員や顧客が逃げる時間を稼ぐ距離を取って身を守る
    という位置づけにしましょう。

    店舗用防犯マニュアル(従業員向け)

    1. 基本方針

    • 最優先は命の安全(従業員・お客様とも)。
    • 犯人には抵抗せず、金品は要求に従ってよい。
    • 犯人を制圧することは目的としない。

    2. 事件発生時の行動フロー

    1. 危険を察知したら
      • 落ち着いて状況を把握。
      • 可能であれば非常ボタン・防犯ベルを作動させる。
    2. 犯人が侵入したら
      • 現金・商品は要求に応じ、命を守ることを最優先とする。
      • 可能であれば、非常ベル操作と警察へ110番通報。
    3. お客様がいる場合
      • 無理のない範囲で、静かに避難を誘導。
    4. 刺股・防犯具の使用について
      • 退避や時間稼ぎのために距離を取る手段として使用する。
      • 無理に取り押さえようとしない。
    5. 犯人が去ったら
      • 直ちに警察へ通報し、追跡は方向確認等にとどめ無理に追いかけない。
      • 負傷者がいれば直ちに救急搬送を手配する
      • 店舗の被害状況をメモ・撮影する。

    3. 発生後の対応

    • 従業員の怪我等については労災保険を申請する
    • 必要に応じて従業員に見舞金や休業補填を行う。
    • 速やかに保険会社へ連絡する(店舗総合保険、業務災害補償保険など)。

    4. 予防的な対策

    • 防犯カメラ・録画装置の設置と定期点検。
    • レジに多額の現金を置かない(釣銭管理を徹底)。
    • 警備会社との契約、非常ボタン・防犯ブザーの設置。
    • 閉店・開店時の複数人対応、夜間は特に注意。

    5. 従業員への事前教育

    • 強盗発生時の行動フローを共有し、定期的に行う訓練に参加する。
    • 「命を最優先に、抵抗しない」という基本を徹底する。
    • 防犯具(刺股・防犯スプレー等)がある場合は、使い方=退避のためのツールであることを伝える。

    6. 心理的ケア

    • 事件後は休養の確保や必要に応じて専門機関によるカウンセリングを手配する。

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