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  • 医師による面接指導とはどういうものか?

    労働安全衛生法に基づき義務付けられている医師による面接指導は、長時間労働者への面接指導と、ストレスチェックによる高ストレス者への面接指導です。

    長時間労働者への面接指導

    これは、労働者の過重労働による健康障害を予防するために設けられた制度です。

    対象者は

    時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり100時間を超える者:事業者は、対象となる労働者に対して面接指導の実施を義務付けられます。

    時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者:この場合、労働者からの申し出があれば、事業者は面接指導を実施する義務があります。

    研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度適用者:特定の条件を満たす場合も、この面接指導の対象となります。

    関連記事:長時間労働者への医師による面接指導とはどういうものか?

    ストレスチェックによる高ストレス者への面接指導

    これは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的とした制度です。

    対象者は

    ストレスチェックの結果、医師が「高ストレス者」と判定した労働者。

    ただし、面接指導を受けるかどうかは労働者本人の意思に委ねられており、本人の申し出があった場合に事業者は面接指導を実施する義務があります。

    関連記事:ストレスチェック後の医師による面接指導とはどういうものか?

    医師による保健指導

    これら2つの「面接指導」とは別に、「保健指導」というものがあります。

    これは、健康診断の結果、異常の所見があった労働者に対して行われる指導で、事業者の努力義務とされています。面接指導が「労働時間」や「ストレス」といった特定の要因に基づく健康管理であるのに対し、保健指導は「健康診断の結果」に基づく健康管理という点で異なります。

    人事としてこれらの制度を運用する際は、各面接指導の対象者を正確に把握し、労働者への周知徹底、そして面接指導後の医師の意見に基づいた適切な措置を講じることが重要となります。

    ここで言う医師は産業医なのか?

    「医師による」という規定は、「産業医による」ことだけを意味するものではありません。労働安全衛生法では、企業の規模や状況に応じて、産業医以外の医師が関与することも認められています。

    常時50人未満の労働者を使用する事業場では、産業医の選任義務はありません。この場合、長時間労働者に対する面接指導は、事業者が労働者の健康管理を行うことができると認められる産業医以外の医師(地域産業保健センターの医師など)に依頼することも可能です。

    また、産業医を選任している事業場でも、専門的な知見が必要な場合や、産業医のスケジュールの都合などで、精神科医などの専門医に面接指導を依頼することもあります。

    労働安全衛生法では、面接指導を行うのは「医師」と規定されており、「産業医」とは限定していません。そのため、産業医以外の医師(例:労働者本人が選んだ主治医、会社が契約した外部医師)でも実施できます。

    ただし、産業医が選任されている場合は、面接指導結果や所見を産業医に共有し、事後の健康管理と連携する必要があります。


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  • 医師による面接指導をオンラインでやることは可能ですか?

    医師による面接指導をオンラインで行うことは、可能です

    医師による面接指導とは

    労働安全衛生法に基づき、義務付けられている医師による面接指導は以下の2種類があります。

    1. 長時間労働者への面接指導
    2. ストレスチェックによる高ストレス者への面接指導

    これらの面接指導をオンラインで行うことができれば、時間と移動の制約を緩和し、面談の機会を増やすことができます。

    以前は対面での面接指導が原則とされていましたが、IT技術の進展や新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年11月に厚生労働省の通達が改正され、一定の要件を満たせば情報通信機器(オンライン)を用いた面接指導が認められるようになりました。

    ただし、オンラインで面接指導を実施する際には、対面と同等の効果を確保するために、いくつかの重要な留意事項と要件が定められています。

    オンライン面接指導の要件

    主に以下の点が重要となります。

    医師の要件

    面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医であること。

    もしくは、以下のいずれかの条件を満たす医師であることが望ましいとされています。

    過去1年以上にわたり、対象事業場の労働者の日常的な健康管理業務を担当していること。

    過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがあること。

    過去1年以内に、当該労働者と直接対面で指導等を実施したことがあること。

    通信環境と機器の要件

    労働者の心身の状態を十分に把握できる映像・音声の品質が確保されていること。

    安定した通信環境が確保されていること。

    Webカメラやマイクなど、必要な機器が整っていること。

    プライバシーとセキュリティの要件

    面接指導の内容が第三者に漏洩しないよう、労働者のプライバシーに配慮した環境で実施すること(個室など)。

    使用する情報通信機器について、情報セキュリティが確保されていること。

    録画・録音を行う場合は、事前に労働者の同意を得ることが望ましいとされています。

    緊急時対応体制の要件

    オンライン面接指導中に、医師が緊急に対応すべき兆候を把握した場合に備え、近隣の医師や産業保健スタッフと連携し、緊急時に対応できる体制が整備されていること。

    事前の手続き

    オンラインでの面接指導の実施について、衛生委員会で調査審議を行い、その方法や留意事項を事前に労働者全体に周知しておく必要があります。

    これらの要件は、オンラインでも対面と同じように、医師が労働者の表情や声色、雰囲気などから心身の状態を適切に把握し、適切な指導を行うためのものです。

    したがって、事情によって、産業医とオンラインで面談を行うことは法律上認められていますが、上記の要件を確実に満たすよう、機材等を整備することが不可欠です。

    また、契約している産業医(または面接指導を依頼する医師)とこれらの要件について事前に相談することをお勧めします。


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  • 面接序盤で判断してしまうことのリスクと対応

    面接担当者の心構え

    短時間で判断するのは危険です

    • 人は第一印象に大きく影響される(初頭効果
    • その後の情報を第一印象に合わせて解釈してしまう(確証バイアス
    • 序盤で判断すると、本来の能力や適性を見逃す可能性が高まる

    「絶対採用しない」と思っても最後まで面接を続ける理由

    • 公平性の確保:全候補者に同じ条件・同じ時間で面接する必要がある
    • 企業イメージ保護:途中で面接を打ち切ると、応募者の印象が悪くなり、口コミや評判に影響するリスクがある
    • 逆転の可能性:序盤で緊張していた応募者が、後半で実力や人柄を発揮することがある

    態度や表情への注意

    判断が固まってしまうと、無意識に以下のようなサインが出やすくなります。

    • 声のトーンが冷たくなる
    • アイコンタクトが減る
    • 話を早く切り上げるような相槌や返事をしてしまう

    応募者は面接官の表情・雰囲気に敏感に反応します。
    面接時間を通じて表情を一定に保ち、質問や相槌のテンポ・態度を均等にすることが大切です。

    実務的な対策

    1. 質問シートに沿って進行する
      → 感情ではなく評価項目に基づいて判断する
    2. 序盤では採否を決めないルールを作る
      → 「面接後半まで結論を出さない」と自分に言い聞かせる
    3. 面接終了後、数分置いて評価を書く
      → 感情が落ち着いてから採否判断を行う

    面接担当者の心得

    • 「最初の印象はあくまで仮評価」と考える
    • 面接官の役割は、応募者全員が面接時間いっぱい能力や人柄を発揮できる環境を作ること
    • そのためには、途中で気持ちが固まっても態度に出さず、最後まで一定の姿勢で臨むことが重要

    面接官向け事前チェックリスト

    上記の内容に基づいて「面接官用の事前チェックリスト」を作りました。面接直前に見直すことで面接の心構えを毎回意識できます。

    【使い方】

    • 面接前にチェックを入れて意識をセット
    • 面接後にも振り返りチェックで自己評価
    • 公平公正な面接に役立ててください

    【面接前】

    • [ ] 質問シート・評価項目を手元に準備した
    • [ ] 「序盤では採否を決めない」と意識した
    • [ ] 面接時間いっぱい応募者に話してもらうつもりで臨む

    【面接中】

    態度・表情

    • [ ] 表情を一定に保っている(眉間にしわを寄せない・笑顔を保つ)
    • [ ] アイコンタクトを継続して取っている
    • [ ] 声のトーンや話すスピードが途中で変わっていない
    • [ ] 質問の質や深さが応募者によって変わっていない

    判断のタイミング

    • [ ] 序盤で「採用/不採用」を決めていない
    • [ ] 気持ちが固まっても態度に出していない
    • [ ] 途中で打ち切らず、最後まで同じペースで進行している

    【面接後】

    • [ ] 面接終了後に数分置いて評価を記入した
    • [ ] 感情ではなく評価項目のスコアで判断した
    • [ ] メモは事実ベースで記録し、印象だけに頼っていない

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  • 面接質問シート & 評価表(新卒採用)

    新卒採用向けの「面接質問シート&評価表」を用意しました。
    新卒は職務経験がないため、「学業・学生時代の経験」「成長意欲」「ポテンシャル」「人柄」が評価の中心になります。

    新卒採用 面接質問シート & 評価表

    応募者情報

    • 氏名:________________
    • 面接日:____年__月__日
    • 面接官:_______________
    • 応募職種:______________
    • 学校名・学部学科:__________

    【1】自己紹介・学生生活の概要

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    簡単に自己紹介をお願いします
    学生時代に特に力を入れたことは何ですか?
    学業や課外活動で誇れる成果はありますか?

    【2】学び・経験の深掘り

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    学業で得た知識やスキルをどのように活かせると思いますか?
    課題や壁に直面したとき、どう乗り越えましたか?
    チームや仲間と協力して達成した経験はありますか?

    【3】志望動機・会社理解

    質問応募者回答メモ(◎〜×)コメント
    なぜ当社を志望しましたか?
    当社でやりたいこと・挑戦したいことは何ですか?
    入社後に成長したい分野やスキルは何ですか?

    【4】人柄・適応力

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    周囲からどんな人だと言われますか?
    新しい環境や変化にどのように適応しますか?
    意見の違う相手と協力するにはどうしますか?

    【5】将来の展望

    質問応募者回答メモ(◎〜×)コメント
    3〜5年後、どのような社会人になっていたいですか?
    当社でどのように成長・貢献していきたいですか?

    【6】逆質問

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    当社やこの仕事について質問はありますか?
    入社前に不安や確認したいことはありますか?

    総合評価

    • 学業・経験の活かし方:◎ー○ー△ー×
    • コミュニケーション力:◎ー○ー△ー×
    • 成長意欲:◎ー○ー△ー×
    • 協調性:◎ー○ー△ー×
    • 総合判定:採用ー保留ー不採用

    コメント
    ________________________________________


    新卒用面接のポイント

    • 「何ができるか」より「どう成長できるか」を見る
    • 学生時代の経験から行動特性や価値観を引き出す
    • 回答内容よりも、態度・柔軟性・素直さを重視する

    関連記事:採用面接マニュアル

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  • 面接質問シート & 評価表(中途採用)

    そのまま面接で使える「質問シート+評価表」です。面接時に書き込みやすいよう、質問欄と評価欄を並べてあります。

    中途採用 面接質問シート & 評価表

    応募者情報

    • 氏名:________________
    • 面接日:____年__月__日
    • 面接官:_______________
    • 応募職種:______________

    【1】職務経歴・スキル確認

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    これまでの職務経歴を簡単に説明してください
    前職での役割や担当業務は?
    成果や実績として特に誇れることは?

    【2】スキル・経験の深掘り

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    当社で活かせるスキルや経験は?
    業務改善や効率化の経験はありますか?
    困難に直面した場面と、その対応方法は?

    【3】転職理由・志望動機

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    転職を考えた理由は?
    なぜ当社を志望したのか?
    入社後に実現したいことは?

    【4】適応力・人柄

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    意見が分かれた場合の対応方法は?
    環境や業務内容の急な変更への対応例は?
    周囲からどんな人と言われるか?

    【5】将来の展望

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    3〜5年後のキャリアビジョンは?
    当社で成し遂げたいことは?

    【6】逆質問

    質問応募者回答メモ評価(◎〜×)コメント
    当社やポジションについて質問は?
    入社前に確認しておきたいことは?

    総合評価

    • スキル適合度:◎ー○ー△ー×
    • 社風適合度:◎ー○ー△ー×
    • 即戦力性:◎ー○ー△ー×
    • 成長・発展性:◎ー○ー△ー×
    • 総合判定:採用ー保留ー不採用

    コメント
    ________________________________________


    ポイント

    • 回答メモ欄は箇条書きでもOK
    • 評価は後でまとめてつけても良い
    • 複数面接官の場合はそれぞれ記入

    関連記事:中途採用面接マニュアル

    会社事務入門求人から選考試験までの留意点>このページ

  • 職能資格等級表とはどういうものか?「等級」と「号俸」の関係も解説

    職能資格等級表とは、職能給制度で使う「社員の能力や役割を段階的に整理した一覧表」のことです。社員の能力レベルを等級に分け、その等級ごとに求められる能力や役割を明文化したものです。

    職能資格等級表

    職能資格等級表の目的

    ・能力評価や昇格の基準を明確化する

    ・社員に「自分が何を身につければ昇格できるか」を理解させる

    ・公平・一貫性のある賃金運用を可能にする

    職能資格等級の構成の基本例

    等級呼称主な役割・責任必要能力・スキル代表職位昇格目安
    1級初級指示を受けて定型業務を遂行基本的な業務知識・技能一般職(新人)入社1〜3年
    2級中級業務を自律的に遂行専門知識の習得、問題解決力一般職(中堅)3〜5年
    3級上級後輩の指導・業務改善指導力、チーム調整力主任5〜8年
    4級監督部署の目標管理・戦略立案高度な判断力、マネジメント力係長・課長補佐8〜12年
    5級管理部署責任者として全体統括経営的視点、部門戦略策定力課長以上12年以上

    運用イメージ

    人事評価の際、この等級表と照らし合わせて「現在の能力がどの等級に該当するか」を判断。

    等級が上がると職能給(基本給部分)が昇給する。

    多くの企業では、この等級表を社員にも公開し、昇格の道筋を見える化しています。

    等級表作成の注意点

    基準が抽象的すぎると評価が曖昧になり、不公平感が生まれる。

    時代や事業環境の変化に合わせて定期的な見直しが必要。

    実務上は「実力より年齢で昇格」という運用になりがちなので、評価制度と連動させることが重要。

    「等級」と「号俸」の関係

    職能資格制度は「等級」だけで運用されることは少なく、多くの場合は「号俸」の二段階構造で運用されています。給与額をきめ細かくコントロールするための方法です。

    等級:社員の能力レベル・役割の大枠を示す階層(1級、2級…)

    号(号俸):同じ等級内での細かな給与段階(1号、2号…)

    イメージとしては、「等級=大きな段」、「号=その段の上に並んだ細かいステップ」という感じです。

    多くの企業は「等級昇格=昇格試験や昇格評価が必要」、「号昇給=年次評価で判断」という運用をしています。

    人件費シミュレーションをしながら等級間・号間の昇給幅を決めるのが重要です。

    なぜ号を設定するのか

    昇給の柔軟性
    等級を頻繁に上げると人件費の変動が大きくなるため、まずは等級内で号を上げて調整。

    評価結果を細かく反映
    年間の評価が「優」「良」「可」などの場合、優は2号昇給、良は1号、可は据え置き…と反映できる。

    給与表が安定する
    長期的に人件費計画を立てやすくなる。

    運用例(サンプル)

    例:職能資格等級表と号俸表を組み合わせた場合

    等級月額(円)昇給幅(円)
    2級1号220,000
    2級2号224,000+4,000
    2級3号228,000+4,000
    2級4号232,000+4,000
    3級1号240,000等級昇格で+8,000

    昇給の例

    年度評価「A」→ 2号昇給(例:224,000円 → 232,000円)

    年度評価「B」→ 1号昇給(例:224,000円 → 228,000円)

    年度評価「C」→ 昇給なし

    メリット・デメリット

    メリット

    等級を大きく変えなくても昇給できるため、昇格ハードルを維持できる。

    評価制度との連動がしやすく、モチベーション管理に使える。

    デメリット

    制度が複雑になりやすい(給与表の管理負担)。

    社員が「何年経てば何号になる」と年功的に考える傾向が出やすい。


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