カテゴリー: 文書の管理

  • 今さらですが、電子契約書ってなんでしょう?

    電子契約書とは

    電子契約書は「紙の契約書をデジタルで完結させたもの」です。契約書を書面印刷・署名・押印して取り交わす代わりに、インターネット上で契約を交わす仕組みです。通常は電子契約サービスを提供する会社と契約してシステムを利用します。

    電子契約書のメリット

    1. 印紙税が不要
      • 紙の契約書に必要な印紙代が不要になるのでコストが削減できます。
    2. スピードが早い
      • 押印・郵送・押印・郵送のやり取りが不要になります。メール通知だけで作業がすすみます。
    3. 業務効率化
      • 契約締結から保存までオンラインで完結します。外出先や在宅勤務中でも対応可能です。
    4. 改ざん防止・証拠力確保
      • 電子署名やタイムスタンプで「誰が・いつ署名したか」が記録されます。
    5. 契約書の保管・検索が容易
      • 契約書がクラウドで整理・検索でき、紙ファイルの保管スペースが不要になります。
    6. 環境にやさしい
      • 紙・印刷が不要になるためエコです。

    電子契約書のデメリット

    1. 相手先の同意が必要
      • すべての取引先が電子契約に対応しているわけではありません。導入時は「当社は電子契約を基本としますが、ご希望があれば紙契約も対応します」と案内しておくとスムーズです。
    2. システム利用料が発生
      • 電子契約サービスの月額費用や送信料がかかります。
    3. ITリテラシーの差
      • 相手が操作に慣れていないと、手続きが渋滞することがあります。
    4. 保存ルールに注意
      • 税務上の保存は「電子帳簿保存法」に則る必要あります。社内の運用ルール整備が必要です。
    5. 電気・ネット環境への依存
      • 停電やシステム障害時にアクセスできないリスクがあります。

    電子契約サービスを利用する

    電子契約を導入するには、通常は電子契約サービスを提供する会社と契約してそこのサービスを利用します。

    電子契約サービスの提供会社は多数あります。それぞれが契約書作成から署名・送信・管理までクラウド上で完結する利便性を提供しています。

    クラウドサイン、電子印鑑GMOサイン、契約大臣、freeeサイン、SMBCクラウドサイン、Dropbox Sign、Adobe Acrobat Signなどがあります。

    電子契約サービスの機能

    • 契約書アップロード:PDFやWordなどで作成した書類をアップロードしてプロセスをスタートします。
    • 電子署名・タイムスタンプの付与:改ざん防止など、法的証拠力が確保されます
    • 相手先への送信・署名依頼:メールリンクなどを通じ、相手は簡単に署名可能です。
    • 契約書の保管・管理・検索:テンプレート管理やワークフロー対応のケースもあります。
    • 法令対応:電子署名法や電子帳簿保存法への準拠を備えているサービスが多いです。

    電子契約サービスを利用する手順の例

    当方の操作

    1. 契約書を用意
      WordやPDFで契約書を作成し、パソコンに保存しておきます。
    2. 電子契約サービスにログイン
      クラウドサインやDocuSignなどのサービスにアクセスし、自分のアカウントでログインします。
    3. 新しい契約を作成
      サービスの画面で「新規契約」や「契約書を送る」といったボタンをクリックします。
    4. 契約書ファイルをアップロード
      「ファイルを選択」ボタンを押し、パソコンに保存してある契約書PDFを選んで登録します。これが「アップロード」の操作です。つまり「アップロード」とは、紙の契約書を印刷・郵送する代わりに、PDFファイルを契約サービスのシステムに取り込む操作のことです。
    5. 署名してもらう相手を指定
      相手先のメールアドレスを入力します。
    6. 署名位置を設定(サービスによっては不要)
      契約書のどこに署名や押印を入れるかをマウスで指定します。
    7. 送信ボタンを押す
      相手に「契約の確認依頼メール」が届きます。

    相手側の操作

    • メールのリンクを開き、契約内容を確認します。
    • 「同意」「署名」ボタンをクリックします。
    • これで契約成立です。双方の署名入りPDFが保存されます。

    電子契約サービスは必須か

    結論からいうと、電子契約サービスの会社を必ず使わないと電子契約できないわけではありません。

    契約は「申込み」と「承諾」の合意があれば成立するので、メールで「この条件で契約します」と双方がやり取りするだけでも契約は成立 します。

    ただし実務では、以下の理由で専用サービスの利用が安心・便利とされています。

    • 本人確認が難しい
      メールやPDFのやり取りだけだと「本当に本人が承諾したのか?」と後で争われる可能性があります。
    • 改ざん防止
      PDFはあとから書き換え可能です。専用サービスは「タイムスタンプ」「電子署名」で改ざんを防止できます。
    • 保存・管理のしやすさ
      送った契約書をクラウド上で一元管理できます。

    少額の取引や信頼関係がある相手なら、メールやPDFのやりとりだけで取引する場合があります。しかし、契約書や覚書を取り交わすような重要な取引では、証拠力を確保するために電子契約サービスを使うのが一般的です。


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  • 作成した資料が他者の著作権を侵害しないために注意するべきこと

    著作権の注意点

    法令や官公庁記事の利用

    法令・通達を所管する官公庁のホームページからコピーすることがあると思いますが、法律・政省令・告示・判決などは「著作物ではない」ので自由に利用できます。

    官公庁のサイトにある「制度の説明記事」「図解」「Q&A」などは、職員が文章化した「表現」であり、原則として著作権が生じます。

    ただし、多くの省庁サイトでは「出典を明示すれば自由に引用・転載可能」などの利用条件が示されています。なかには、利用を禁じている官公庁サイトもあるので注意が必要です。

    書籍・民間記事からの利用

    表現をそのまま引用する場合

    文章をそのまま紹介する場合には、著作権法上の「引用」として扱う必要があります。引用の要件としては、

    • 公表された著作物であること
    • 必要性があること
    • 主が自分の文章で従が引用した部分という主従関係が明確であること
    • 自分の話と引用部分が明確に区別できること
    • 出典を明示すること

    が求められます。

    引用と認められる要件を少し詳しく説明します。

    著作権法第32条には、「引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と定められています。この条文と過去の裁判例などから、一般的に以下の要件を満たす必要があるとされています。この要件が、一つでも欠けると著作権侵害となる可能性があります。

    1. 公表された著作物であること
      • 引用できるのは、すでに公表されている著作物に限られます。
      • 非公開の論文や未発表の作品、個人のSNSアカウントの鍵付き投稿などは引用できません。
    2. 引用の必要性があること
      • なぜその著作物を引用しなければならないのか、明確な理由が必要です。
      • 単に装飾や面白さのため、あるいは自分の文章のボリュームを増やすためといった目的では、正当な引用とは認められません。
    3. 主従関係が明確であること
      • 「主」は自分の著作物、「従」は引用した部分という関係性が不可欠です。
      • 自分の文章がほとんどなく、他者の著作物をコピペした部分が大部分を占めるような場合は、「引用」ではなく「転載」とみなされ、著作権侵害となる可能性が高いです。
    4. 引用部分が明確に区別されていること
      • 引用した部分が、自分のオリジナルな部分と見てすぐに区別できるようにする必要があります。
      • 具体的には、文章の場合は「カギ括弧(「」)」や「引用符(””)」で囲む、インデント(字下げ)や背景色を変えるといった方法が一般的です。
      • 画像や図版の場合は、キャプション(説明文)を付けるなどして、引用であることを明確にします。
    5. 出所(引用元)が明示されていること
      • 誰のどの著作物から引用したのかを、明確に表示しなければなりません。
      • ウェブサイトからの引用であれば、「サイト名」と「URL」を明記します。
      • 書籍からの引用であれば、「書籍のタイトル」「著者名」「出版社名」「発行年」を記載するのが一般的です。

    内容(知識・情報)だけを参考にして自分の言葉でまとめる場合

    書籍等を参考にしたとしても、自分の言葉で書いた文章は、基本的には、著作権侵害にならないことになっています。模倣しすぎると「翻案」とみなされる可能性があります。

    配布範囲と私的利用の誤解

    いわゆる私的利用であれば認められることもありますが、事業活動として配布することは、私的利用の範囲には入りません。必ず権利処理や引用ルールを守る必要あります。

    引用と転載の違い

    「引用」は、あくまで自分の意見や主張を補強するために、必要最小限の範囲で他者の著作物を利用する行為です。正しい「引用」であれば、著作権者の許諾がなくても利用できます。

    「転載」は著作物の全部または大部分を掲載することです。転載は、引用と違って著作権者の許諾が必要です。たとえば、他者の記事をそのまま自分のブログに貼り付ける行為は「転載」にあたり、無断で行えば著作権侵害となります。


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  • 人事情報などの機密情報へのアクセス制限について解説

    賃金台帳などの機密性が高い資料へのアクセス制限は、複数の方法を組み合わせて行われます。主な方法として、従業員の権限に応じたアクセス制限、端末の制限、認証方法の強化などがあります。

    従業員の権限に応じたアクセス制限

    これは最も基本的な方法です。従業員を役割や職務に応じてランク付けし、アクセスできる情報の範囲を厳密に定めます。

    職務に応じた権限設定: 賃金台帳や労働者名簿には、給与計算や人事管理を行う担当者のみがアクセスできるようにします。一般の従業員や、それ以外の部署の管理職は、原則として閲覧できないように設定します。

    「職務権限表」の作成: 誰がどの情報にアクセスできるか、書面や電子データで明確に定めた「職務権限表」を作成・運用することで、アクセス権限を管理します。

    接続できる端末の制限

    特定の端末やネットワークからのみアクセスを許可する方法です。これにより、不正な端末からの情報漏洩リスクを減らします。

    IPアドレス制限: 社内の特定のネットワーク(例:経理部のLAN)に接続された端末からのみ、賃金台帳のデータベースにアクセスできるように設定します。

    デバイス認証: 会社が許可した特定のPCやタブレット端末でなければ、クラウドサービスにログインできないように設定します。これにより、個人のPCやスマートフォンからのアクセスを制限できます。

    認証方法の強化

    パスワードに加えて、複数の認証要素を組み合わせることでセキュリティを強化します。

    二段階認証(Two-Factor Authentication, 2FA): IDとパスワードに加えて、登録済みのスマートフォンに届くワンタイムパスワードや、生体認証(指紋・顔認証)を併用してログインする方法です。

    シングルサインオン(SSO): 複数のクラウドサービスを、一度のログインで利用できるようにする仕組みですが、高度な認証と組み合わせることでセキュリティを維持しつつ利便性を高めることができます。

    これらの方法は、単独ではなく複数組み合わせて実施することで、より強固なアクセス制限を構築できます。たとえば、「人事部の担当者(権限設定)が、会社のPC(端末制限)から、二段階認証で(認証強化)、賃金台帳にアクセスする」といった運用が一般的です。

    多くのクラウドサービスが対応しているアクセス制限

    一般的なクラウドサービスは、ほとんどが多種類のアクセス制限に対応しています。特に、ビジネス向けに提供されているクラウドサービスでは、高度なセキュリティ機能が標準装備されていることが多いです。

    権限管理

    多くのクラウドサービスは、ユーザーごとに役割(ロール)を設定できます。たとえば、「管理者」「編集者」「閲覧者」といった役割を割り当て、賃金台帳のような機密性の高いファイルには、人事担当者のみがアクセスできる「人事管理者」ロールを付与するといった運用が可能です。

    IPアドレス制限

    特定のオフィスやネットワークからのアクセスのみを許可するIPアドレス制限も、多くのサービスで利用できます。これにより、社外からの不正なアクセスを防ぐことができます。

    二段階認証(多要素認証)

    パスワードに加え、スマートフォンアプリやメールに送信されるワンタイムパスワードなど、複数の認証要素を組み合わせる多要素認証(MFA)は、セキュリティ強化の基本として広く普及しています。多くのクラウドサービスでこの機能が提供されています。

    ただし、これらの機能が標準で含まれているかどうかは、利用しているクラウドサービスのプランや契約内容によって異なります。無料プランや個人向けプランでは、利用できる機能が限定されている場合があるため、機密性の高い情報を扱う場合は、法人向けの高セキュリティなプランを選択する必要があるかもしれません。

    導入前には、利用を検討しているサービスが、自社の求めるアクセス制限に対応しているか、機能リストやサポート窓口で確認することをお勧めします。


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  • 初めての文書管理システム:何をどうすればよいの?

    当社では、社内文書が無秩序に増えて、それぞれの担当者がそれぞれのやり方で管理している状態です。組織だった文書管理システムを導入したいのですが、どのようなやり方が考えられでしょうか?

    いろいろな文書管理システム

    社内文書が無秩序に増えてしまうと、業務効率の低下や情報の属人化を招きかねませんね。会社で組織的な文書管理システムを導入する際には、以下の3つの方法が考えられます。

    既存のクラウドストレージを活用する

    すでにGoogle WorkspaceやMicrosoft 365を導入している場合、それらのストレージサービス(Google ドライブ、SharePoint/OneDrive)の機能を活用する方法があります。

    • メリット:
      • 追加のコストを抑えられる。
      • 社員がすでに使い慣れているツールなので、導入障壁が低い。
      • 共同編集やアクセス権限設定、検索機能など、基本的な文書管理機能が備わっている。
    • デメリット:
      • 高度なワークフロー管理や文書のライフサイクル管理は難しい場合がある。
      • 大規模な文書を扱う場合、ファイル構造のルールを厳格に定める必要がある。

    導入のポイント:

    まず、全社統一のフォルダ構成ルールを策定することから始めましょう。「部署名 > プロジェクト名 > 文書種別」といった階層を定義し、全社員に周知徹底します。また、誰がどのフォルダにアクセスできるか、権限設定を明確にすることも重要です。

    文書管理に特化したシステムを導入する

    「Aipo」や「Knowledge Suite」、「Confluence」などの、文書管理や情報共有に特化したシステムを導入する方法があります。

    • メリット:
      • テンプレート機能やワークフロー、バージョン管理など、文書管理に最適な機能が豊富に揃っている。
      • 検索機能が強力で、必要な文書を素早く見つけられる。
      • 文書の改訂履歴が残り、コンプライアンス強化にもつながる。
    • デメリット:
      • システムの導入費用や月額費用が発生する。
      • 社員が新しい使い方を覚えるためのトレーニングが必要になる場合がある。

    導入のポイント:

    いくつかのシステムを比較検討し、自社の業務フローに合った機能(例:承認フロー、タスク管理連携など)を持つサービスを選びましょう。多くのサービスで無料トライアル期間が設けられているので、実際に試してみるのがおすすめです。

    社内wikiツールを導入する

    「Qiita Team」や「esa」などの、知識共有に特化したwikiツールを導入する方法があります。

    • メリット:
      • マニュアルや議事録、ノウハウといったナレッジ共有に非常に向いている。
      • Markdown記法など、シンプルで書きやすいエディタが特徴。
      • 検索性が高く、タグ付けやカテゴリ分けで情報を整理しやすい。
    • デメリット:
      • ExcelやWordファイルといった既存のファイル形式の管理には向いていない場合がある。
      • 機密性の高い正式な契約書などの管理には不向き。

    導入のポイント:

    まずは部署ごとの業務マニュアルやFAQ、議事録など、ナレッジ系の文書から試験的に導入してみるのが良いでしょう。社員が気軽に情報を投稿できる文化が醸成されれば、組織全体の生産性向上につながります。

    導入成功のための共通のステップ

    どの方法を選ぶにしても、以下のステップを踏むことが成功への鍵となります。

    1. 現状分析と要件定義:まず、どんな文書を、誰が、どのように管理しているかを洗い出しましょう。そして、新しいシステムに何を求めるか(例:検索性を高めたい、承認フローを自動化したい)を明確にします。
    2. ルールとガイドラインの策定:導入するシステムに合わせて、フォルダの命名規則、文書の作成・更新・削除ルールなどを全社的に定めます。このルールが徹底されなければ、再び無秩序な状態に戻ってしまう可能性があります。
    3. スモールスタートと段階的導入:いきなり全社的に導入するのではなく、特定の部署やプロジェクトで試験的に運用を開始し、課題を洗い出すのが有効です。
    4. 教育とサポート体制の構築:新しいシステムの使い方に関するマニュアルを作成したり、質問を受け付ける窓口を設けたりするなど、社員がスムーズに移行できるようサポートする体制を整えましょう。

    まず、社内でどのような文書を主に扱っているか、そして新しいシステムに最も求める機能は何かを整理してみると、最適な選択肢が見えてくるかもしれませんね。


    会社事務入門事務処理のいろいろと事務処理の効率化散らからないオフィスの秘密!文書管理の基本とデジタル化の進め方>このページ

  • 「伝わる」報告書の書き方:テンプレート作成からルール作りまで

    日々の業務で避けては通れないのが、報告書の作成です。出張報告書、修理完了報告書、竣工式終了報告書など、その種類は多岐にわたります。しかし、「この報告書、結局何が言いたいの?」「情報が散らばっていて読みにくい…」と感じたことはありませんか?

    それは、書き手と読み手の間に「情報の非対称性」が生まれているからです。書き手は背景を理解していますが、読み手はそうではありません。このギャップを埋め、誰が読んでも内容が正確に伝わる報告書を作成するためのポイントを「テンプレート作成」「ルール作り」の2つの視点から解説します。

    テンプレート作成のポイント:誰もが迷わず書ける型を作る

    報告書の作成をゼロから始めると、時間もかかり、フォーマットのばらつきも生じます。そこで、報告の目的に応じたテンプレートを事前に用意しておくことが非常に有効です。

    報告書の目的と読み手を明確にする

    テンプレートを作る前に、まずはその報告書の目的主な読み手を定義しましょう。

    • 目的:情報共有、意思決定、記録など
    • 読み手:直属の上司、他部署の担当者、経営層など

    例えば、出張報告書であれば、上司が今後の営業戦略を立てるための情報収集が目的かもしれません。修理完了報告書であれば、お客様への引き渡しと社内での事例共有が目的となります。目的に応じて、記載すべき内容の深さや焦点を変える必要があります。

    必須項目を洗い出す

    次に、目的と読み手に基づいて、必ず記載すべき項目を洗い出し、テンプレートの項目として設定します。

    • 出張報告書:件名、提出日、氏名、出張目的、出張期間、訪問先、面会者、商談結果・成果、今後のアクションプラン、所感
    • 修理完了報告書:件名、提出日、担当者、お客様名、機器名、発生した不具合、修理内容、交換部品、かかった時間、今後の注意点
    • 竣工式終了報告書:件名、提出日、担当者、プロジェクト名、開催日時、開催場所、参加者(社内外)、式次第、当日の様子(写真など)、課題・反省点、今後の展望

    項目ごとに「何を記載すべきか」の補足説明(例:「今後のアクションプラン:誰が、いつまでに、何を行うのかを具体的に記載」)を添えておくと、書き手は迷わずに済みます。

    レイアウトと書式を統一する

    見出しのレベル、フォントの種類とサイズ、行間、文字の色など、書式を統一することで、報告書全体の一貫性が保たれ、読みやすさが格段に向上します。特に、見出しは内容の構造を示す重要な要素です。大見出し、中見出し、小見出しを明確に使い分けるルールを定めておきましょう。

    ルール作りのポイント:書き方の「共通言語」を築く

    テンプレートはあくまで骨組みです。その中身を誰が書いても同じ品質になるように、具体的な書き方のルールを策定することが重要です。

    結論を最初に書く

    報告書では、まず「結論」を最初に提示することが鉄則です。読み手は結論から知りたいと考えるからです。

    • 出張報告書:「〇〇社との商談の結果、新規契約を獲得することができました。」
    • 修理完了報告書:「〇〇(機器名)の不具合について、原因を特定し、修理が完了しました。」
    • 竣工式終了報告書:「〇〇プロジェクトの竣工式は、滞りなく成功裏に終了しました。」

    このように、冒頭で結論を簡潔に述べることで、読み手は全体の概要を素早く把握できます。

    専門用語や略語を使わない、使う場合は定義する

    社内で日常的に使っている専門用語や略語も、部署や役職が違う人には伝わらない可能性があります。

    • 原則として、誰にでもわかる言葉で書く
    • やむを得ず使う場合は、初出で正式名称と略称を併記する(例:顧客関係管理(CRM))

    客観的な事実と主観的な所感を明確に分ける

    報告書は事実に基づいた情報が不可欠です。しかし、そこから得られた所感や考察も重要です。この二つを混同しないように明確に区別して記載しましょう。

    • 事実:「面談時間は〇〇分、参加者は〇〇名でした。」
    • 所感:「先方は新しい提案に前向きで、次回のアポイントメントにつながりそうです。」

    特に、所感は単なる感想ではなく、事実に基づいた分析や考察を記載することが求められます。

    報告書の記載例

    出張報告書

    提出日: 2025年8月5日

    氏名: 山田 太郎

    出張期間: 2025年8月1日(金)〜2025年8月3日(日)

    出張目的:

    〇〇社の新製品「△△」に関する商談と情報収集

    訪問先:

    株式会社〇〇(東京都千代田区)

    面会者:

    営業部 部長:田中 様

    営業部 課長:佐藤 様

    商談結果・成果:

    • 「△△」の導入について、具体的な要件やスケジュールをヒアリング。
    • 先方から、導入にあたっての課題(コスト、既存システムとの連携)について伺った。
    • これらの課題に対し、弊社のソリューションを提案。
    • 次回の打ち合わせで、詳細な提案書を提出することで合意。

    今後のアクションプラン:

    1. 山田:提案書の作成(〜2025年8月15日)
    2. 山田:次回の打ち合わせ日程調整(〜2025年8月8日)
    3. 鈴木(チームメンバー):提案書の内容についてレビューを依頼

    所感:

    今回の出張で、〇〇社のニーズと課題を深く理解することができました。特に、コスト面での懸念が大きいため、費用対効果を明確に打ち出した提案が重要になると感じています。先方の田中部長は提案に前向きな様子でしたので、今回の商談を成功に繋げられるよう、迅速に対応を進めていきます。

    修理完了報告書

    報告日: 2025年8月5日

    報告者: 山田 太郎

    お客様名: 株式会社〇〇

    機器名: デジタル複合機 XYZ-1234

    発生した不具合:

    電源が入らない

    修理内容:

    • 電源部の基盤にショートしている箇所を発見。
    • 基盤を新しいものに交換。
    • 交換後、正常に電源が入ることを確認し、動作テストを実施。

    交換部品:

    電源基盤(品番:ABC-123)

    修理所要時間:

    1.5時間

    今後の注意点:

    基盤の保護のため、直射日光が当たる場所や高温多湿な環境での使用はお控えください。また、電源コードの抜き差しは丁寧に行っていただくようお伝えしました。

    備考:

    お客様には修理完了後、動作確認にご協力いただき、ご納得いただけました。

    竣工式終了報告書

    提出日: 2025年8月5日

    提出者: 山田 太郎

    プロジェクト名: 〇〇新工場建設プロジェクト

    開催日時: 2025年8月1日(金) 10:00〜11:30

    開催場所: 〇〇新工場 敷地内

    参加者:

    • 社内: 鈴木(取締役)、佐藤(工場長)、伊藤(プロジェクトマネージャー) 他10名
    • 社外: 株式会社〇〇 代表取締役 田中様 他関係者20名

    式次第:

    1. 開式の辞
    2. 代表挨拶(鈴木 取締役)
    3. 来賓祝辞(田中 代表取締役)
    4. テープカット
    5. 閉式の辞

    当日の様子:

    天気にも恵まれ、厳粛な雰囲気の中で式典が進行しました。来賓の方々からは、プロジェクトの成功を称賛する温かいお言葉を多数いただきました。テープカットも滞りなく執り行われ、新工場の新たなスタートを飾るにふさわしい式典となりました。

    課題・反省点:

    式典後の懇親会への誘導がややスムーズでなかったため、次回の開催時には動線をさらに明確にする必要がある。

    今後の展望:

    今回の竣工式を機に、新工場での生産活動を本格的に開始し、事業のさらなる拡大を目指します。

    まとめ:報告書作成を「個人のスキル」から「組織の力」へ

    「伝わる」報告書は、個人のスキルに依存するものではありません。今回ご紹介したテンプレート作成ルール作りは、組織全体で報告書作成の「共通言語」を確立し、コミュニケーションの質を高めるための取り組みです。

    ぜひ、日々の報告書からこれらのポイントを実践してみてください。そして、報告書作成の効率化と品質向上を、チーム全体の力で進めていきましょう。


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  • 契約書が見つからない!を防ぐための管理ルールとシステム活用法

    「あの契約書、どこにいったっけ?」

    会社の成長とともに増え続ける契約書。いざという時に必要な書類が見つからない、紛失してしまった、といったトラブルは、ビジネスにおいて大きなリスクとなり得ます。

    この記事では、契約書管理の重要性から、様々な管理方法のメリット・デメリット、そして法律上の注意点までを徹底解説します。

    なぜ、契約書管理は重要なのか?

    契約書は、会社にとって重要な法的証拠です。適切に管理されていないと、以下のような問題が発生する可能性があります。

    訴訟リスクの増大: 契約内容の確認に時間がかかり、対応が遅れる。

    コンプライアンス違反: 法律で定められた保管期間を守れず、罰則の対象となる。

    ビジネス機会の損失: 必要な契約書をすぐに取り出せず、商談が滞る。

    これらのリスクを回避するためには、体系的な管理ルールと、それを支えるシステムが不可欠です。

    紙ベースの管理:基本にして最もシンプル

    伝統的な管理方法である紙ベースの管理は、物理的な原本を保管する安心感があります。

    メリット

    導入コストが低い: ファイルやキャビネットがあればすぐに始められます。

    法的要件を満たしやすい: 原本保管が求められるケースに確実に対応できます。

    デメリット

    検索性が低い: 必要な書類を探すのに時間がかかります。

    紛失・劣化のリスク: 火災や水害などで失われる可能性があり、紙の劣化も避けられません。

    保管スペースが必要: 書類が増えるほど、保管場所が圧迫されます。

    管理ルールのポイント

    ファイリングルール(案件名、取引先、日付など)を統一する。

    キャビネットや書庫の鍵を管理し、アクセスを制限する。

    保管期間終了後の廃棄ルールを定める。

    PDF化によるグループウェア管理:デジタルの第一歩

    紙の契約書をスキャンしてPDF化し、社内グループウェアやファイルサーバーで管理する方法です。

    メリット

    検索性が向上: ファイル名やキーワードで検索できるため、探す時間が短縮されます。

    保管スペースの削減: 物理的な保管場所が不要になります。

    共有が容易: 必要な人にすぐにデータを共有できます。

    デメリット

    原本管理は別途必要: 法律上、原本保管が必要な書類も多いため、紙の原本も併せて管理する必要があります。

    セキュリティ対策が必要: 意図しないデータ流出のリスクがあります。

    スキャン作業の手間: 契約書が増えるほど、PDF化の作業が負担になります。

    管理ルールのポイント

    スキャンしたファイルの命名規則を統一する。

    原本とPDFの紐づけ方法を明確にする。

    アクセス権限を設定し、閲覧者を制限する。

    クラウドサービスを使った管理:最もスマートな方法

    契約書管理に特化したクラウドサービスを利用する方法です。

    メリット

    高い検索性: 契約書の内容まで全文検索できるサービスもあります。

    厳重なセキュリティ: 多くのサービスで、高度なセキュリティ対策が施されています。

    ワークフロー機能: 契約締結までの承認プロセスをシステム上で管理できます。

    更新通知機能: 契約の更新時期を自動で知らせてくれます。

    デメリット

    導入コストがかかる: 月額利用料や初期費用が発生します。

    サービス選定の手間: 自社のニーズに合ったサービスを見つける必要があります。

    システム依存: サービスが停止した場合、一時的に閲覧できなくなるリスクがあります。

    管理ルールのポイント

    サービスの利用方法に関する社内マニュアルを作成する。

    アカウント管理とパスワード管理を徹底する。

    定期的にバックアップを取る。

    法律上の制約と注意点

    契約書管理において、法律上の制約を無視することはできません。特に以下の点に注意が必要です。

    電子帳簿保存法(電帳法)

    2022年の法改正により、一定の要件を満たせば、紙で受け取った契約書もスキャンして電子データとして保存することが可能になりました

    ただし、タイムスタンプの付与や真実性を確保するための措置など、様々な要件があります。

    原本保管の必要性

    一部の法律では、紙の原本保管が義務付けられている場合があります。

    例えば、不動産登記に関する書類や公正証書などです。弁護士や専門家に相談し、自社の書類が該当しないか確認しましょう。

    契約書管理は、単に書類を整理するだけでなく、会社のコンプライアンスを守り、事業をスムーズに進めるための重要な土台です。

    自社の状況や予算に合わせて、最適な管理方法とルールを構築し、大切な契約書を完璧に守りましょう。


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