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  • 有給休暇中の副業はOK? 退職日前にアルバイトを始める場合の注意点

    はじめに

    退職を控えた社員が「有給休暇の消化中にアルバイトをしたい」と考えるケースが増えています。しかし、そのような働き方には法令上・実務上のリスクが潜んでいます。次のような事例をもとに、考えられる問題点を整理しました。

    【事例】

    私は10年ほど勤務した会社を退職予定です。退職理由は自己都合で、円満退社の予定です。30日分の有給休暇が残っているため、その期間を消化して最終出勤日から30日間は休暇に入ります。ただ、ずっと家にいるのはもったいないので、有給休暇中にアルバイトをする予定です。アルバイト先はすでに決まっており、近所の店舗での短時間勤務です。なお、今の会社には副業禁止規定がありますが、有給中なら関係ないと思っています。

    問題点を3つの視点から整理

    考えられる問題点は主に次の3つです。

    ① 元の勤務先(退職予定の会社) 就業規則違反、副業禁止規定との抵触

    ② アルバイト先 二重就業の把握漏れ、信頼関係のトラブル

    ③ 本人 懲戒の可能性、労災・社会保険の誤認リスク、雇用保険トラブル

    元の勤務先― 副業禁止と就業規則違反

    有給休暇中とはいえ、退職日までは在籍中です。

    就業規則に「在職中の副業を禁止」と定めている場合、副業を行うことは就業規則違反として処分できる可能性があります。

    特に、以下のような事情がある場合は、問題が大きくなる可能性があります。

    • 退職前の勤務先が同業他社である場合(競業行為)
    • 業務情報を持ち出して副業に活かされた場合(秘密保持違反)

    アルバイト先 ― 二重就業による誤解と責任

    本人が退職前であることを申告していない場合、アルバイト先にも次のようなリスクがあります。

    • 二重就業を知らずに雇用した場合のリスク
    • 労働時間の通算管理ができない
    • 競合企業に該当する場合、元の会社と法的トラブルになるおそれ
    • 本人が虚偽申告していた場合、信頼関係が損なわれる

    本人 ―「バレなければ大丈夫」は危険

    有給休暇中でも、退職日までは元の会社の健康保険・厚生年金に加入中です。

    アルバイト先が本人の事情を知らず、誤って社会保険・雇用保険の資格取得届を出すと、手続きが重複しエラーになります。

    マイナンバー制度により、国側では重複を把握できますが、 現場での誤入力・届出ミス・本人確認不足により、二重手続き・誤った保険証発行などのトラブルが生じる可能性があります。

    有給中にアルバイト先でケガをした場合、元の会社の労災は適用されず、アルバイト先での労災申請が必要です。その際に、労働保険の加入状況や就労実態に齟齬があると、給付遅延や否認リスクがあります。

    推奨される対応

    本人:退職日、有給期間、副業の有無について正直にアルバイト先に説明する。

    アルバイト先:雇用前に現在の在籍状況・社会保険加入状況を確認する。

    元の会社:「有給中の副業の扱い」や「就業規則の適用範囲」についてルールを明確にしておく。

    まとめ

    「有給休暇中だから自由に働いても問題ない」と考えるのは危険です。

    退職日までは在籍中であり、就業規則・社会保険・労災などの面で法律上の関係は継続しています。

    トラブルを防ぐためには、本人・元の会社・アルバイト先の三者が正確な情報と理解をもって行動することが重要です。


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  • 与信ってなんですか?課長に聞いてみました

    課長が新人に与信管理を教える会話形式で与信管理を説明します。

    与信管理についての会話

    【登場人物】

    • 課長(営業部/経験20年、与信管理に詳しい)
    • 新人(営業配属1か月目)

    与信管理とはなにか

    新人
    課長、ちょっと質問いいですか?「与信管理」って社内の書類に出てきたんですけど、正直よく分からなくて…。

    課長
    与信管理っていうのは、簡単に言うと「取引先にどこまで掛売りしていいかを決めて、その範囲内で取引を管理すること」だ。

    新人
    掛売りって、商品やサービスを先に渡して、お金はあとで払ってもらうやつですよね?

    課長
    そうそう。それ自体は普通の商習慣だけど、もし相手が倒産したり支払いが滞ったら、こっちの売掛金は回収できなくなる。これを「貸倒れ」っていうんだ。貸倒れは会社にとって大きな損失だから、事前にリスクを見極めて取引できる限度を決めるのが与信管理なんだよ。

    新人
    なるほど…。じゃあ「与信を設定する」っていうのは、その限度額を決めるってことですか?

    課長
    その通り。たとえば調査して「この会社なら月に500万円まで掛売りしても大丈夫」と判断したら、その500万円が与信限度額だ。もし与信限度額を超えた注文が来たら、前金をもらうとか、納期を分けるとか、取引を断るとか、条件を工夫しなければならない。

    調査はどうするのか

    新人
    取引先の信用って、どうやって調べるんですか?

    課長
    主な方法はこんな感じだ。

    1. 信用調査会社の報告書(帝国データバンクや東京商工リサーチ)
    2. 決算書を提出してもらって分析
    3. 登記情報などで担保情報をチェック
    4. 実際に訪問して現場の様子を見る
    5. 支払状況を継続的にチェックする

    新人
    決算書って…中小企業相手だと失礼じゃないんですか?

    課長
    そんなことはないよ。ある程度の掛取引をするなら、決算書提出はごく一般的だ。依頼するときは「社内規定で一定額以上の掛取引は財務状況の確認をお願いしています」と理由を添えれば、ほとんどの会社は応じてくれる。応じてくれないような会社は、何か後ろめたいこと隠れていると思って、取引を見送った方が良いくらいだ。

    新人
    なるほど…。つまり与信管理って、取引開始前に相手先を調査したうえで限度額を決めて、その後も定期的にチェックすることなんですね。

    限度額はどう決める

    新人
    ところで、課長、さっきの限度額って、私が決めても良いんですか?

    課長
    いや、担当者が独断で決めることはないよ。ウチの会社ではこうだ。

    課長
    まず①担当者が事前調査をする。信用調査会社のレポートを取ったり、決算書をもらって財務分析をする。あと、支払実績や業界の状況もチェックだ。

    次に②与信案を作成する。たとえば「この会社は自己資本比率が高くて利益も安定しているから、月500万円まで掛売り可能」といった形で、根拠をまとめるんだ。

    その案を③上司が審査する。課長や部長が「妥当だな」と思えば次のステップに進む。

    次のステップというのは④決裁権限者が承認する段階だ。会社の規程で金額ごとに決裁者が決まっていて、たとえば500万円までは部長、2,000万円までは役員、それ以上は社長決裁…みたいな感じだ。大きな金額や特殊な案件なら、会議を開く場合もある。

    最後に⑤社内システムに登録して、営業や経理で共有する。これで「この取引先はどこまで掛売りOKか」が社内で統一されるんだ。

    社内システムに登録されれば、与信限度を超えた納品書は発行されない仕組みになっている。

    新人
    なるほど…。じゃあ営業は、まず信用調査をして与信案を作るところまでが役割なんですね。

    課長
    そうだな。しかも限度額は一度決めたら終わりじゃない。⑥定期的な見直しも大事だ。年1回は見直すし、もし支払い遅延や業績悪化の兆候があれば、すぐに再調査しなければならない。

    新人
    分かりました!つまり、与信管理は売る前にリスクを見極めて限度を設定し、承認フローを通して会社としての判断を固める手続きですね。しかも、決まったからと安心しないで、継続して取引先を観察する必要があるってことですね。

    課長
    その通り。営業は売上を作るだけじゃなく、会社の資金を守る責任もあるからな。与信管理を軽く見ると、一回の貸倒れで利益が吹っ飛ぶこともある。しっかり覚えてほしいですね。


    関連記事:与信管理とは何をどう管理することなのか?

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  • 従業員による自主的なクラブ活動に労災保険が適用されるか?

    従業員による自主的なクラブ活動であっても会社としてのリスクはゼロではありません。「会社の業務の一環とみなされるか」という観点から、ご説明します。

    会社としてのリスクについて

    会社が資金援助していれば、会社の活動の一環とみなされる可能性がたかまります。会社が直接的に資金援助をしていなくても、以下の要素にあてはまれば、会社の業務に関連する活動と見なされる可能性があります。

    安全配慮義務との関係:原則として業務外活動は会社の責任範囲外ですが、会社が活動を実質的に主催・指揮していると見なされる場合は、安全配慮義務や使用者責任が問われる可能性があります。

    対外的な信用・イメージ:怪我やトラブルが発生すると、労災か否かにかかわらず、会社名と結びついて報道・噂になることがあります。

    施設利用リスク:社屋や工場内の施設を練習で使用して、第三者が巻き込まれた事故では、会社に損害賠償請求が及ぶ場合があります。

    労災保険の適用について

    労災保険の給付対象になるかどうかは、最終的に労働基準監督署が判断します。判断基準としては、以下の点が考慮されます。

    参加の強制性: 会社からの参加の強制や推奨があったか、不参加者への不利益な扱いがあったか。

    会社からの指示: 会社が活動内容について指示することがあったか。

    会社の費用負担等:費用の一部または全部を会社が負担していたか、業務時間内の活動を会社が認めることがあったか、会社の施設を練習場所等として提供していたか。

    活動の目的: 会社がその活動を通じて、具体的な利益(広告効果など)を得たか、得ようとしていたか。

    こうしたことがあれば、業務とみなされる可能性が否定できません。

    対策

    以下の対策を講じることをお勧めします。会社所属、あるいは会社関係のチームとして公認する気があれば別ですが、責任を回避したい場合は、会社とは無関係な活動であることを明確にするべきでしょう。

    クラブの規約に関係を明記させる:会社との関係を誤解されないよう、任意参加・自己責任で、会社とは無関係であることを明文化する。活動案内や申込書にも同様の内容を記載する。

    社内施設の利用をルール化する:練習場所等に社内施設を貸す場合は利用ルールと安全責任の所在を明確して、使用願と許可の手続きを厳正に行う。

    会社名の使用を禁止する: 会社として関与していないことを明確にするために、チーム名に会社名や会社を類推できる名称を使用することを禁止する。

    ボランティア保険への加入: 自主的な活動であっても、怪我や事故のリスクがある以上、チームとして、充分な保障が受けられるスポーツ保険やボランティア保険に加入すること奨励する。

    これらの対策を講じることで、万が一の事態に備え、会社としてのリスクを軽減することができます。専門的な助言が必要な場合は、社会保険労務士や弁護士にご相談ください。


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  • 従業員を社外ボランティア活動に参加させる際の注意点

    社員の方々に休日を利用して、地域の清掃や、お祭りなどに地域貢献活動として参加してもらう場合には、いくつか注意すべき点があります。社員の方々が気持ちよく参加できるよう、以下のポイントを参考にしてください。

    強制参加にしない

    休日は社員にも予定があります。参加を強制しないことが大事です。給与を支給するかしないかにかかわらず、社員の自主的な意志に基づく参加である必要があります。

    参加は任意であることを明確に伝えましょう。「参加は自由です」「参加を強制するものではありません」といった言葉を、募集の際に必ず記載しましょう。

    不参加者への配慮参加しないことで、評価に影響したり、職場で居心地が悪くなったりしないよう、社内全体で理解を深める必要があります。上司から参加を促すようなことも避けましょう。

    休日出勤の扱いを明確にする

    一般的には、休日に行う活動であれば、基本的には日曜出勤として扱う必要があると思われます。また、参加に際して発生する交通費や、活動に必要な備品(軍手、清掃道具、祭り半纏・浴衣など)については会社負担とするのが妥当でしょう。

    賃金や代休の付与があるのか、それともボランティア活動として無報酬なのかを、事前に明確に伝える必要があります。

    完全に自主的なボランティア参加であれば、無報酬とする選択肢もあります。その場合でも、会社が参加を呼びかけるのであれば、一定の費用について会社が負担するなど、社員の金銭的負担を軽減する配慮を検討しましょう。

    安全面の確保と備品の準備

    安心して活動に参加してもらうために、安全対策は欠かせません。

    熱中症対策(水分補給の徹底)、怪我の防止、万が一に備えた救護体制など、活動内容に応じた安全対策を講じましょう。

    軍手や帽子、ゴミ袋、清掃道具、タオル、飲料水など、活動に必要なものは会社で用意しましょう。

    事前告知とスケジュール調整

    活動の計画は、できるだけ早めに立て、社員の方々がプライベートの予定を調整できるよう配慮が必要です。活動日の1〜2ヶ月前には告知し、参加者を募るようにしましょう。

    「何時から何時まで」と、活動の開始時間と終了時間を明確に伝え、長時間の活動にならないよう配慮しましょう。

    これらの注意点を踏まえ、社員の方々が気持ちよく、そして安全に地域貢献活動に参加できるような体制を整えてみてください。

    事故があったときの責任

    ボランティア活動への参加中の事故等については、「紹介しただけで強制していないので会社の責任はない」「無給のボランティア活動なので会社の責任はない」とは言い切れません。また、状況によっては労災認定される可能性もあります

    以下に、いくつかのケースに分けて、会社の責任や労災の可能性について解説します。

    会社の責任について

    「強制していない」「ボランティア活動だ」という事実だけでは、会社の責任を免れることは難しいと思われます。

    会社の業務の一環とみなされる可能性

    参加者名簿を作成したり、参加を促すためのメールを会社名義で送信したりするなど、会社の組織的な関与が認められます。

    活動内容が、会社の広報活動イメージアップに繋がる目的であると判断されることがあります。

    「会社の業務に関連する活動」だったと判断されると、会社に安全配慮義務違反があったとして、損害賠償責任を問われる可能性があります。

    労災の可能性について

    労災保険は、「業務上の事由」または「通勤途中の事故」による怪我や病気に適用されます。

    「業務上の事由」とみなされる可能性

    会社の指示や、直接的に指示していなくても暗に強制性があった場合は、業務として参加していたとみなされる可能性があります。

    会社の業務と密接な関連性が認められれば、会社の利益に資する活動として業務関連性が認められる可能性があります。

    労災として認められるかどうかは、個別の事案ごとに労働基準監督署が判断します。

    結論と対策

    「強制していない」「ボランティア活動だ」、だから責任はない、という考えは危険です。万が一の事故に備え、以下の対策を講じることを強くお勧めします。

    参加者が個人的に加入するだけでなく、会社として包括的なボランティア保険に加入することを検討してください。これにより、参加者全員の活動中の怪我や、万が一の賠償責任に備えることができます。

    何もしなくても事故等があれば結果責任を負うことがあります。であれば、会社が当初から会社活動の一環として、リスクの事前想定、安全対策用品の準備、現場での安全を考慮した指揮命令系統などに、積極的に関与することも選択肢です。

    専門的な判断が必要な場合は、社会保険労務士や弁護士に相談することをお勧めします。


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  • 産業医が「意見」を述べるのはどういうときですか?

    産業医が意見を述べる場面は多岐にわたります。その意見は主に事業者に述べられ、その強制力は状況によって異なります。

    意見を述べる主な場面

    産業医が意見を述べる場面は、労働安全衛生法や関連法令に基づき、主に以下のものが挙げられます。

    健康診断の結果に基づく意見: 健康診断で異常の所見があった労働者について、就業上の措置(就業場所の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など)に関する意見を事業者に述べます。

    長時間労働者への面接指導後の意見: 長時間労働者に対する面接指導の結果、その労働者の健康を確保するために必要な措置について意見を述べます。

    ストレスチェック後の高ストレス者への面接指導後の意見: ストレスチェックで高ストレスと判定され、面接指導を受けた労働者について、就業上の措置に関する意見を述べます。

    職場巡視後の意見: 月1回(特定の要件を満たす場合は2か月に1回)の職場巡視を行い、作業方法や衛生状態に問題がある場合に改善を求める意見を述べます。

    衛生委員会での意見: 衛生委員会に出席し、職場の衛生管理や労働者の健康確保に関する事項について、医学的な専門家としての意見を述べます。

    休職・復職判定に関する意見: 傷病により休職していた労働者の復職の可否や、復職後の就業上の配慮(短時間勤務、業務内容の制限など)に関する意見を述べます。

    意見を述べる相手

    産業医が意見を述べる相手は、原則として事業者(会社)です。具体的には、労働者の健康管理を統括する人事担当者や、事業場の責任者である事業場長などに対して意見が伝えられます。

    意見の強制力

    産業医の意見には、法的な強制力はありません。しかし、多くの場面で事業者はその意見を尊重し、必要な措置を講じる義務があります。

    労働安全衛生法上の義務: 健康診断や面接指導後の意見に関して、労働安全衛生法では「事業者は、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずること」と定められています。これにより、事業者は産業医の意見を軽視することはできません。

    安全配慮義務: 企業には、労働者が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります。産業医の意見を無視して労働者の健康が損なわれた場合、この義務違反として、損害賠償責任などを問われる可能性があります。

    したがって、産業医の意見は直接的に「〇〇しなければならない」という強制力を持つわけではありませんが、事業者が意見を無視することは、法律上の義務違反や安全配慮義務違反につながるリスクが高いため、実質的には強い影響力を持つと言えます。


    会社事務入門産業医とはどういう制度ですか?産業医の職務と権限>このページ

  • 産業医は衛生委員会に「出席」しなければならないか?

    規定上、産業医は衛生委員会のメンバー(委員)として指定されている場合がほとんどです。欠席が続くことは望ましくありません。

    衛生委員会の構成

    労働安全衛生法により、衛生委員会のメンバーには以下の者が含まれることが義務付けられています。

    • 総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者
    • 衛生管理者
    • 産業医
    • 労働者の中から、事業者が指名した者

    産業医を衛生委員会の委員として選任することは、労働安全衛生法で義務付けられています(第18条第2項)。

    このため、法律上、常時50人以上の労働者がいる事業場では、産業医は衛生委員会の委員として選任しなければなりません。

    欠席することの問題点

    しかし、その委員である産業医が毎回(月1回以上開催)の委員会に出席することは、法律で義務付けられていません。出席することが前提になっているのですが、直接的に出席を義務付ける規定はありません。

    しかし、次の点に注意しなければなりません。

    法的要件の不履行: 産業医が委員会のメンバーとして選任されていながら出席しない状態が常態化すると、法律で定められた委員会の構成要件を満たしていないとみなされる可能性があります。

    専門的助言の欠如: 委員会の目的は、専門家の意見を聞き、労働者の健康と安全に関する具体的な対策を議論することです。産業医が出席しないと、この目的が果たせません。議事録の確認だけでは、その場の議論の背景やニュアンスを理解することは難しく、的確な助言を得ることは困難です。

    「名義貸し」の疑い: 委員会への出席や職務遂行が不十分である場合、産業医としての役割を適切に果たしていない「名義貸し」と判断されるリスクがあります。

    したがって、法律上、出席しないことへの強制力はないものの、企業の健康経営やリスク管理の観点から、産業医にはできる限り衛生委員会に出席してもらうことが強く推奨されます。

    解決策

    産業医の出席が難しい場合には、以下の方法で対応を検討してください。

    出席頻度の調整: 法律上、毎月1回以上開催することが義務付けられていますが、毎回必ず産業医が出席しなければならないとまでは定められていません。産業医と相談し、たとえば2か月に1回は出席してもらうなど、出席頻度を柔軟に調整することが現実的な対応策となります。

    オンラインでの出席: 遠方や多忙な産業医でも参加しやすいよう、オンライン会議システムを利用して委員会に出席してもらうことを提案してください。これにより、移動時間を削減し、出席率を高めることが可能です。

    衛生委員会の議題の事前共有: 委員会で議論する内容を事前に産業医に共有し、書面で意見をもらう体制を整えることも有効です。ただし、これは出席に代わるものではなく、あくまで補助的な手段とすべきです。


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