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労働紛争対応

障害者雇用促進法に基づく調停等の制度

Last Updated on 2023年10月19日 by

企業内での紛争解決

相談窓口

従業員から苦情の申し出や改善の要求が出たときは、真摯に対応し、早期に紛争を解決するように努力しなければなりません。

障害者雇用促進法第三十六条の四 
2 事業主は、前条に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

前条に規定する措置というのは「雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置(第三十六条の三抜粋)」のことです。

相談窓口の設置と運営

苦情処理機関

障害者雇用促進法は、事業主の代表と労働者の代表で構成される苦情処理機関に解決を委ねることを勧めています。

第七十四条の四 事業主は、第三十五条及び第三十六条の三に定める事項に関し、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。

条文によると苦情処理機関が扱う事案は次のようになります。

第三十五条は障害者に対する差別の禁止、第三十六条の三は雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置です。

苦情処理委員会の設置と運営

会社内で解決できればよいのですが、お互いが感情的になったり、主張が平行線をたどるなどして、話合いによる解決が困難になることがあります。そのような場合、都道府県労働局に援助を求めることができます。

労働局長の援助を求める

都道府県労働局長に援助を申し出ることができます。

第七十四条の六 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

次の記事は個別労働紛争解決促進法に基づく労働局長の助言・指導についての解説記事ですが、障害者雇用促進法による援助申出に対しても同様の対応をしてくれます。

個別労働紛争の当事者に対する労働局長の助言・指導

紛争調整委員会の調停

都道府県労働局長は、紛争調整委員会に調停を行わせることができます。

第七十四条の七 都道府県労働局長は、第七十四条の五に規定する紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。

調停とは

調停とは、調停委員が当事者である労働者と事業主双方から事情を聞き、紛争解決の方法として調停案を作成し、当事者双方に調停案の受諾を勧告することにより紛争の解決を図る制度です。

障害者雇用促進法に基づく調停は、個別労働紛争解決促進法により設置されている「紛争調整委員会委員会」が、手続き的には男女雇用機会均等法の定めを準用して行います。

調停を利用する方法

調停制度を利用したいときは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナー(労働基準監督署内に設置されています)に、調停申請書を提出します。用紙は窓口にあります。また厚生労働省ホームページからダウンロードすることもできます。

労働者が申請するのが一般的ですが、事業主の側から申請することもできます。

調停は非公開で行われるので当事者のプライバシーは保護されます。

調停の進み方

労働局は申請を受け付けると若干の調査をして、調停の必要を認めれば、紛争調整委員会に調停を委任する書類を回します。

紛争調整委員会の委員は、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家がつとめています。

指定の日時に紛争当事者双方が出頭します。この場合、直接顔を合わせて言い合うのではありません。調停委員が個別に話を聞いて解決案を提示します。

その解決案に対してどちらかが不満であれば、強制することはできないので解決できないまま調停は終了します。

双方が合意すれば合意書を作成します。合意書には法的な拘束力があります。

紛争調整委員会の調停は、参加したくない相手方を強制的に出席させることはできません。その場合は調停を行うことができないので、申請した当事者は調停以外の方法である、裁判等を検討することになります。

制度の対象となる紛争

障害者雇用促進法による調停の対象となるのは、上の苦情処理機関のところに記載した苦情処理機関が扱う事案です。

解雇、雇止め、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争については、個別労働紛争解決促進法に基づくあっせんの対象になります。


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