Last Updated on 2024年8月11日 by 勝
企業内での紛争解決
苦情の申出
従業員から苦情の申し出や改善の要求が出たときは、真摯に対応し、早期に紛争を解決するように努力しなければなりません。
労働者派遣法第四十七条の五 派遣元事業主は、第三十条の三、第三十条の四及び第三十一条の二第二項から第五項までに定める事項に関し、派遣労働者から苦情の申出を受けたとき、又は派遣労働者が派遣先に対して申し出た苦情の内容が当該派遣先から通知されたときは、その自主的な解決を図るように努めなければならない。
2 派遣先は、第四十条第二項及び第三項に定める事項に関し、派遣労働者から苦情の申出を受けたときは、その自主的な解決を図るように努めなければならない。
第三十条の三と第三十条の四は不合理な待遇の禁止等、第三十一条の二第二項から第五項までは待遇に関する事項等の説明、第四十条第二項は及び第三項は適正な派遣就業の確保等に関する規定です。
会社内で解決できればよいのですが、お互いが感情的になったり、主張が平行線をたどるなどして、話合いによる解決が困難になることがあります。そのような場合、都道府県労働局に援助を求めることができます。
労働局長の援助を求める
都道府県労働局長に援助を申し出ることができます。
第四十七条の七 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
前条に規定する紛争というのは、上に記した苦情の申出に規定されている事項と同様です。
次の記事は個別労働紛争解決促進法に基づく労働局長の助言・指導についての解説記事ですが、労働者派遣法による援助申出に対しても同様の対応をしてくれます。
紛争調整委員会の調停
都道府県労働局長は、紛争調整委員会に調停を行わせることができます。
第四十七条の八 都道府県労働局長は、第四十七条の六に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。
調停とは
調停とは、調停委員が当事者である労働者と事業主双方から事情を聞き、紛争解決の方法として調停案を作成し、当事者双方に調停案の受諾を勧告することにより紛争の解決を図る制度です。
労働者派遣法に基づく調停は、個別労働紛争解決促進法により設置されている「紛争調整委員会委員会」が、手続き的には男女雇用機会均等法の定めを準用して行います。
調停を利用する方法
調停制度を利用したいときは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナー(労働基準監督署内に設置されています)に、調停申請書を提出します。用紙は窓口にあります。また厚生労働省ホームページからダウンロードすることもできます。
労働者が申請するのが一般的ですが、事業主の側から申請することもできます。
調停は非公開で行われるので当事者のプライバシーは保護されます。
調停の進み方
労働局は申請を受け付けると若干の調査をして、調停の必要を認めれば、紛争調整委員会に調停を委任する書類を回します。
紛争調整委員会の委員は、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家がつとめています。
指定の日時に紛争当事者双方が出頭します。この場合、直接顔を合わせて言い合うのではありません。調停委員が個別に話を聞いて解決案を提示します。
その解決案に対してどちらかが不満であれば、強制することはできないので解決できないまま調停は終了します。
双方が合意すれば合意書を作成します。合意書には法的な拘束力があります。
紛争調整委員会の調停は、参加したくない相手方を強制的に出席させることはできません。その場合は調停を行うことができないので、申請した当事者は調停以外の方法である、裁判等を検討することになります。
制度の対象となる紛争
労働者派遣法による調停の対象となるのは、上の苦情申出のところに記載した事項です。
解雇、雇止め、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争については、個別労働紛争解決促進法に基づくあっせんの対象になります。
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