カテゴリー: 取締役と監査役

  • 監査報告書の書き方

    監査報告書とは

    取締役は、作成した計算書類とその附属明細書を監査役に提出して、監査を受けなければなりません。

    監査期間は、原則として、監査役が計算書類をすべて受け取った日から4週間以内(または、附属明細書を受け取った日から1週間以内のいずれか遅い日)に監査報告の内容を取締役に通知しなければならないと定められています。

    監査報告書とは、監査役(監査役会)が監査を実施し、その結果、財務諸表が会計基準に準拠しているか、取締役は法令違反をしていないかなどの評価を行い、「適正」「不適正」等の意見を表明する書類のことです。

    会計監査人設置会社の場合

    監査役は、会計監査人の監査の方法や会計監査人の職務遂行が適正に関する事項が中心になります。

    会計監査人非設置会社の場合

    会計監査人非設置会社の監査役は、計算関係書類(各事業年度に係る計算書類およびその附属明細書など)が会社の財産および損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見を監査報告に記載します。

    なお、公開会社(譲渡にあたり会社の承認を有する株式を発行していない会社)でない場合で、かつ監査役会設置会社でない場合は、定款で監査役の監査の範囲を会計に関することを定めることができます。

    監査報告書のサンプル

    監査役会設置会社の監査報告書のサンプル

    監査報告書

    当監査役会は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの第〇〇期営業年度の取締役の職務の執行に関して各監査役から監査の方法及び結果の報告を受け、本監査報告書を作成し、以下のとおり報告いたします。

    1.監査役の監査の方法の概要

    各監査役は、監査役会が定めた監査の方針、業務の分担等に従い、取締役会その他重要な会議に出席するほか、取締役等からその職務の執行状況を聴取し、重要な決裁書類等を閲覧し、本社及び主要な事業所において業務及び財産の状況を調査し、必要に応じて子会社に対し営業の報告を求めました。

    また、会計監査人から報告及び説明を受け、計算書類及び附属明細書につき検討を加えました。

    取締役の競業取引、取締役と会社間の利益相反取引、会社が行った無償の利益供与、子会社又は株主との通例的でない取引並びに自己株式の取得及び処分等に関しては、上記の監査の方法のほか、必要に応じて取締役等に対し報告を求めました。

    2.監査の結果

    (1)会計監査人の監査の方法及び結果は相当であると認めます。
    (2)営業報告書は、法令及び定款に従い、会社の状況を正しく示しているものと認めます。
    (3)利益処分に関する議案は、会社財産の状況その他の事情に照らし指摘すべき事項は認められません。
    (4)附属明細書は、記載すべき事項を正しく示しており、指摘すべき事項は認められません。
    (5)取締役の職務遂行に関する不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められません。
    (6)取締役の競業取引、取締役と会社間の利益相反取引、会社が行った無償の利益供与、子会社又は株主との通例的でない取引並びに自己株式の取得及び処分等についても取締役の義務違反は認められません。

    3.監査役〇〇〇〇の意見

    4.後発事象
    特に記載すべき事項はありません。

    令和〇年〇月〇日

    〇〇〇〇株式会社 監査役会

    監査役〇〇〇〇 印

    監査役〇〇〇〇 印

    監査役〇〇〇〇 印

    監査役〇〇〇〇 印

    監査役複数の会社の監査報告書のサンプル

    監査報告書

    私たち監査役は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの第〇期事業年度の取締役の職務の執行を監査いたしました。その方法及び結果につき以下のとおり報告いたします。

    1.監査の方法及びその内容

    各監査役は、取締役会その他の重要な会議に出席し、重要な決裁文書や報告書を閲覧し、当社の取締役等から、職務の執行状況等について定期的に報告を受け、また、随時説明を求めるとともに、支店に赴き実地調査を行いました。

    当社子会社についても、取締役等から報告を受け、説明を求め、また、実地調査を行いました。 以上の方法に基づき、当該事業年度に係る事業報告及びその附属明細書について検討いたしました。

    さらに、会計帳簿又はこれに関する資料の調査を行い、当該事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表)及びその附属明細書について検討いたしました。

    2.監査の結果

    (1)事業報告等の監査結果

    ① 事業報告及びその附属明細書は、法令及び定款に従い、会社の状況を正しく示しているものと認めます。
    ② 取締役の職務の執行に関する不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められません。

    (2)計算書類及びその附属明細書の監査結果

    計算書類及びその附属明細書は、会社の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認めます。

    3.追記情報

    特記すべき事項はありません。

    令和〇年〇月〇日

    〇〇株式会社

    監査役(常勤)〇〇〇〇印

    監査役    〇〇〇〇印

    監査役一人の会社の監査報告書のサンプル

    監査報告書

    監査役〇〇〇〇は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの第〇期事業年度に係る計算書類及びその附属明細書を監査いたしました。その方法及び結果につき以下のとおり報告いたします。

    なお、定款第〇条に定めるところにより、当会社の監査役は監査の範囲が会計に関するものに限定されており、事業報告を監査する権限を有しておりません。

    1.監査の方法及びその内容

    監査役は、会計に関する重要な決裁書類等を閲覧し、取締役等から会計に関する職務の執行状況について定期的な報告を受け、また、随時説明を求めることにより、当該事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表及びその附属明細書について検討いたしました。

    2.監査の結果

    計算書類及びその附属明細書は、会社の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認めます。

    3.追記情報

    特に記載すべき事項はありません。

    令和〇年〇月〇日

    〇〇株式会社

    監査役〇〇〇〇印

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  • 取締役会議事録のサンプル

    一般的な取締役会議事録のサンプル

    取締役会議事録

    令和〇年〇月〇日(〇曜日)午前〇時〇分より当社の第一会議室において取締役会を開催した。

    取締役の総数〇名のうち出席取締役〇名
    監査役の総数〇名のうち出席監査役〇名

    以上の出席により本取締役会は適法に成立した。

    代表取締役〇〇が議長となり、定刻に開会を告げ、直ちに議案の審議に入った。

    報告事項

    1 第〇期第〇四半期の営業報告の件
    議長は、別紙資料1に基づき、第〇期第〇四半期の営業の経過と今後の見通しについて報告した。

    第1号議案 〇〇県への営業所開設の件

    議長は、近年、〇〇県からの受注が増え、これに対応するために技術並びに営業担当が出張する頻度も増加していることから、○○県〇〇市に営業所を設置するべきことを、別紙2に基づいて説明し審議を求めた。各取締役から異議の無い旨の発言があったため、その可否を諮ったところ、全員一致で承認可決した。

    以上をもって本取締役会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、午前〇時〇分に散会した。

    上記の決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長および出席取締役監査役がこれに記名捺印する。

    令和  年  月  日
    株式会社〇〇取締役会

    議長 代表取締役社長 〇〇 印

    専務取締役   〇〇 印

    取締役     〇〇 印

    取締役     〇〇 印

    監査役     〇〇 印

    株主総会を招集する取締役会議事録のサンプル

    会社は株主総会を毎年開催しなければならず、そのためには取締役会で招集に関する決議をしなければなりません。したがって、年に1回は、第〇期定時株主総会招集の件、という議案が入ります。以下、記載例です。

    取締役会議事録

    令和〇年〇月〇日(〇曜日)午前〇時〇分より当社の第一会議室において取締役会を開催した。

    取締役の総数〇名のうち出席取締役〇名
    監査役の総数〇名のうち出席監査役〇名

    以上の出席により本取締役会は適法に成立した。

    代表取締役〇〇が議長となり、定刻に開会を告げ、直ちに議案の審議に入った。

    第1号議案 株主総会招集の件

    議長は、第〇期定時株主総会を以下のとおり招集する旨を述べ、その可否を諮ったところ、全会一致で承認可決した。

    1 日時 令和〇年〇月〇日(〇曜日) 午前〇時から
    2 場所 本社会議室
    3 会議の目的事項
    第〇期(令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで)営業報告書、貸借対照表、並びに損益計算書及び附属明細書報告の件
    第〇期利益処分案承認の件
    取締役選任の件 〇〇、〇〇、〇〇を重任、〇〇を新任の候補者とする。

    以上をもって本取締役会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、午前〇時〇分に散会した。

    上記の決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長および出席取締役監査役がこれに記名捺印する。

    令和  年  月  日
    株式会社〇〇取締役会

    議長 代表取締役社長 〇〇 印

    専務取締役   〇〇 印

    取締役     〇〇 印

    取締役     〇〇 印

    監査役     〇〇 印


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  • 取締役会の招集手続き

    取締役会の招集手続き

    総務課長:今日は、取締役会の招集について勉強しよう。しっかり覚えてもらいたいから、どんどん質問してください。

    新入社員: まず、誰が招集できるか教えてください?

    誰が取締役会を招集するのか?

    課長: 通常、代表取締役が取締役会の招集権者として定款で定められていることが多いね。でも、もし定款に特別な定めがなければ、各取締役全員が招集権を持っているんだ。

    新入社員: へぇ、そうなんですね!じゃあ、代表取締役が招集する場合、どういう手続きになりますか?

    代表取締役による招集

    課長: 代表取締役が取締役会を開こうとする場合、開催日の1週間前までに、全ての取締役と監査役(監査役を置いている会社の場合)に、開催することを通知する必要があるんだ。この1週間という期間は、定款で短縮することも可能だよ。

    他の取締役による招集

    新入社員: もし招集権限を持っていない取締役が取締役会を開きたい場合はどうすればいいんでしょうか?

    課長: その場合は、まず招集権を持っている取締役、例えば代表取締役に対して、会議の目的を記載した書面を提出して、取締役会の招集を請求するんだ。

    課長: もし招集権を持つ取締役が、その請求があった日から5日以内に、請求の日から2週間以内の日を開催日とする招集通知を出さなかった場合は、その招集を請求した取締役が自分で取締役会を招集することができるようになるんだよ。

    監査役による招集

    新入社員: 監査役も取締役会を招集できるんですか?

    課長: そうだね。監査役は、取締役が会社の目的外の行為をしたり、法律や定款に違反するような行為をしている、またはする恐れがあると判断した場合に、そのことを取締役会に報告する義務があるんだ。

    課長: その必要があると監査役が認めた時は、招集権限のない取締役が招集するのと同じ手続きで、まず招集権者(代表取締役など)に招集を請求する。それでも応じない場合は、監査役が自分で取締役会を招集できるんだ。これは、会社のガバナンスを守る上でとても重要な役割だね。

    招集の方法

    新入社員: 招集通知は、必ず書面で出さないといけないんでしょうか?

    課長: 株主総会の招集通知とは違って、取締役会の招集通知は必ずしも書面である必要はないんだ。口頭でも有効とされている。

    課長: ただ、実務上は、通知したことの記録を残すためにも、書面(PDFなどをメールに添付する形も含む)で送付することがほとんどだね。メールに添付して送ることが多いのは、手軽で確実だからだよ。

    取締役役会招集通知のサンプル

    全員に通知する義務

    課長: 招集通知は、全ての取締役と監査役に送らないといけないんだ。もし、一部の取締役に意図的に通知しないで取締役会を開催した場合、たとえ会議が成立する最低限の人数(定足数)が満たされていたとしても、その決議は無効になる可能性があるから、ここは特に注意が必要だよ。

    通知を省略することもできる

    新入社員: 全員に通知しなければならないということは、通知を省略することはできなのですね。?

    課長: いい視点だね。実は省略もできる。しかし、これは特別なケースで、取締役と監査役の全員が同意している場合に限られるんだ。

    課長: 例えば、毎月特定の日に「定例取締役会」を開くことを全員が事前に合意して議決しておけば、その定例会については、毎回招集手続きをする必要はないんだよ。これも効率化の一環だね。

    議題の通知について

    新入社員: 議題も事前に通知するべきなんでしょうか?

    課長: 理論上は、取締役会は会社の業務に関するあらゆることを話し合う場だから、事前に具体的な議題を示さなくてもいいことになっているんだ。

    課長: ただ、これはあくまで法律上の建前だね。実務上は、充実した審議をするために、事前に議題や議案を通知して、関連資料も配布するのが一般的だよ。いきなり議題を提示されても、議論が深まらないからね。

    課長: また、会議の最後に「その他」という議題を設けることが多いけれど、これは「全般的なことが審議対象だ」という意味合いだ。もし「その他」という議題がなくても、各取締役はどんな議題でも提案できるから、その点は覚えておいてね。

    課長: だから、もし突然、代表取締役の解任決議の動議が提出されたとしても、「突然すぎる」という理由で、その審議や採決を拒否することはできないんだ。これは取締役会が、会社の重要な意思決定機関であることの表れだよ。

    課長: 取締役会は会社の経営に直結する重要な会議だから、招集のルールをしっかり理解しておくことはとても大切だよ。


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  • 取締役会付議事項について

    取締役会の権限を明確にする

    会社法362条「取締役会の権限等」においては、以下の事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできないとしており、取締役会で決定する必要があるとしています。

    一定の事項については、社長といえども勝手に決めることはできないということです。

    □ 重要な財産の処分及び譲り受け
    □ 多額の借財
    □ 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
    □ 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
    □ 募集社債の金額その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
    □ 取締役の職務執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして、法務省令で定める体制の整備(大会社である取締役会設置会社では、法定義務)
    □ 定款の定めに基づく取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人の会社に対する責任の免除の決定

    実際に取締役会規程あるいは内規で取締役会に付議する事項を定めるときは、上のままでは不十分です。例えば「多額の借財」とありますが、「多額」とはいくらかということは、会社の規模、収益の状況によって異なります。

    ですから、その会社ごとに、代表取締役に任せておいて心配のない金額を設定し、それ以上の借財について取締役会に付議することになります。「〇千万以上の借入金」「〇億円以上の借入金」などと具体的に定める必要があります。

    会社法362条以外で取締役会の決議が必要な主な事項

    □ 自己株式の取得株数、価格等の決定
    □ 株式分割
    □ 株式無償割当てに関する事項の決定(ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない)
    □ 公開会社における新株発行の募集事項の決定
    □ 一に満たない端数の株式の買取りに関する事項
    □ 公開会社における新株予約権の募集事項の決定
    □ 株主総会の招集の決定
    □ 取締役による競業取引および利益相反取引の承認
    □ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書の承認

    第三者に対する責任

    取締役会での決議が必要な事項であるにもかかわらず、代表取締役が、勝手に執行してしまった場合は、その行為は有効なのでしょうか。一概には言えませんが、代表取締役の独断による契約を無効とするという裁判例もあるようです。

    取引先に多額の貸し付けをしたり保証人になってもらうようなときには、取締役会の議決を経ているかどうかを確認するために議事録の写しを求めるなどの慎重な行動が必要です。

    規程にする

    取締役会付議事項を決定したら、取締役会規程に付属文書として組み入れておきましょう。

    関連記事:取締役会規程のサンプル


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  • 取締役や監査役に懲戒処分を科すことができるか

    就業規則を適用する懲戒処分について

    就業規則は従業員に適用するものです。その就業規則を取締役や監査役に適用することはできません。したがって、通常の意味での懲戒処分を取締役や監査役に科すことはできません。

    ただし、取締役部長のように、取締役と部長という従業員としての身分を合わせ持っている場合は、従業員としての行為に非違行為があれば、その部分について就業規則を適用して懲戒処分することができます。

    監査役は従業員としての身分を持たないので、就業規則を適用する懲戒処分はできません。

    解任することができる

    株主総会で解任する

    取締役や監査役は、株主総会を開かなければ解任することができません。

    解任の決議は普通決議ですから、過半数の賛成で決議することができます。ただし、当該取締役が株主であれば、その株主総会において反対することができます。したがって、過半数を持つ大株主を解任することはできません。

    また、解任できたとしても、正当な理由がない解任だと、解任によって生じた損害を賠償請求されるリスクがあります。

    裁判所に解任を請求する

    株主総会で解任できない場合でも、3%以上保有の株主は、取締役の職務執行に関する不正行為や法令・定款に違反する重大な事実の証明ができるのであれば、当該取締役の解任の訴えを裁判所に請求することができます。

    辞任した場合の手続き

    本人から自ら退任の申し出をしたときは株主総会の手続きはいりません。退任の意思表示が会社に到達したときに辞任の効力が生じます。直ちに役員の変更登記を行います。

    退任や解任によって取締役や監査役の定員を満たさなくなったときは、欠員を補充しなければなりません。

    関連記事:取締役や監査役に欠員が生じたときは

    代表権の解任は取締役会

    代表取締役の代表権の部分を解任することは、取締役会の決議で行うことができます。ただし、代表権がなくなっても、取締役としては会社に残ります。

    不法行為の差止め請求をする

    取締役や監査役の解任手続きを開始しても違法な不正行為をやめない取締役や監査役について、株主は裁判所に対して不正行為の差止めを請求することができます(会社法360条)。

    この手続きは具体的な不正行為を特定して請求しなければなりません。

    職務執行停止の仮処分

    会社の損害を防ぐための対応として、違法行為の差止めだけでは会社の損害を防止できない場合には職務執行停止の仮処分(民事保全法23条2項)という手段もあります。

    解任の請求、不法行為の差止め請求や職務執行停止の仮処分は、裁判所に提起するので、弁護士への依頼が必要です。

    刑事責任を追求できる

    取締役や監査役が不正行為を行い、その行為が会社法や刑法の規定に違反している場合には、法的な責任を追及することができます。

    例えば、会社において一定の権限を有する者が、自己若しくは第三者の利益のため、または会社に損害を加えるために会社の任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を加えた場合には、特別背任罪が成立します(会社法960条)。

    損害賠償を請求できる

    取締役や監査役が不正行為を行い、それによって会社に損害をもたらした場合には、損害賠償を請求することができます。


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  • 取締役や監査役に欠員が生じたときは

    欠員が生じたら株主総会を開いて補充する

    例えば、取締役会設置会社で、取締役が3名しかいないのに1名が辞任、または死亡したとします。この場合、会社は遅滞なく後任の取締役を選任しなければなりません。

    選任には株主総会を開催しなければなりません。

    怠ると100万円以下の過料になることがあります。

    遅滞なくとは、

    大阪高等裁判所判決昭和37年12月10日
    「すみやかに」は、「直ちに」「遅滞なく」という用語とともに時間的即時性を表わすものとして用いられるが、これらは区別して用いられており、その即時性は、最も強いものが「直ちに」であり、ついで「すみやかに」、さらに「遅滞なく」の順に弱まつており、「遅滞なく」は正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解されている。

    なお、株主総会の開催手続きは取締役会が行いますが、過半数の出席があれば取締役会が成立するので、3名中1名が死亡等で出席できない場合も取締役会を開くことができます。

    取締役や監査役は自由に辞任できるか

    取締役や監査役は、会社と委任の関係にあります(会社法330条)。受任者である取締役や監査役は、いつでも委任契約を解約して辞任をすることができます。

    会社の承認がなければ辞任できないという契約をしていたとしても自由に辞任できるというのが一般的な考え方です。

    ただし、欠員になってしまう場合には、その取締役や監査役は後任が就任するまで従前どおり取締役や監査役としての権利と義務を有します。

    辞任登記も、新たに選任された取締役や監査役が就任するまでは受け付けてもらえません。

    一時取締役または仮取締役

    また、欠員が生じたときは、利害関係人(株主、他の取締役、他の監査役、債権者、使用人など)は、裁判所に請求して、一時的に取締役の職務を負うべきもの、「一時取締役」を選任してもらうことができます。

    一般的には、定時株主総会の6ヶ月以上前に欠員が生じたときは、臨時株主総会を開催して後任取締役を選任し、定時株主総会前3ヶ月以内に欠員が生じたときは、欠員のまま定時株主総会を待って選任し、この中間の3~6ヶ月の時期であれば「一時取締役」を選任してしのぐのがよいといわれています。

    同様に、監査役や会計参与についても、一時監査役(仮監査役)や一時会計参与(仮会計参与)を置くことができます。

    補欠取締役または補欠監査役

    欠員に備えて、取締役や監査役の後任候補として補欠の取締役や監査役を選任しておくことができます。補欠取締役や監査役には、取締役の補欠である「補欠取締役」と、監査役の補欠である「補欠監査役」があります。

    補欠取締役や監査役は、補欠の代表取締役、常勤監査役、社外取締役、社外監査役として選任することもできます。

    補欠取締役や監査役の選任は通常の取締役や監査役の選任と同様に株主総会の決議が必要です。定款で補欠取締役や監査役の選任について定めていない場合でも、会社法の規定を適用して選任することができます。

    1人取締役が死亡したらどうなるか

    かつては株式会社は取締役会が必須だったので、取締役が最低3名以上いましたが、今は取締役が1人の会社もあります。

    1人取締役の会社で1人しかいない取締役が死亡したときは、株主総会を招集すべき取締役がいません。

    会社法には、取締役がいなくても、株主全員の同意があれば、株主総会を開催できる旨の規定があるので、これを活用します。

    株主全員の同意ですから、死亡した取締役が持っていた株式が問題になります。直ちに相続で株式の所有権を移す必要があります。相続がごたごたすれば株主総会も開けません。

    どうにもならなければ、利害関係者が裁判所に申し立てて、一時的に職務を行う取締役を選任してもらう方法があります。

    現実問題としては、全部ひとりでやってきた人が亡くなった場合、株式の承継ができても、仕事の承継ができず、事業廃止という流れになることが少なくありません。

    余裕のある選任を

    一般論としては、3人以上のところを3人ギリギリでやっていると上述の問題があるので、非常勤でもいいので余裕をみてもう1名選任しておくのが無難です。

    非公開会社で、定款で取締役会を設置しない会社の場合でも、1人は危険です。相談役のようなポジションでもう1名選任しておくのが無難です。

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