オフィスの清掃を外部業者に委託する際には、契約内容と日々の運用において、トラブルを未然に防ぐための注意点がいくつかあります。
契約上の注意点
契約書は、清掃業者との認識のズレを防ぎ、後々のトラブルを回避するための最も重要な書類です。以下の点を明確に盛り込むようにしましょう。
1. 業務内容の範囲と品質基準
「清掃一式」のような曖昧な表現ではなく、具体的な清掃範囲と内容を詳細に明記します。
- 清掃場所:床、トイレ、給湯室、会議室、窓ガラス、ゴミ回収など、清掃するすべての場所を具体的に記載します。
- 清掃頻度:日常清掃(毎日・週に数回)、定期清掃(月に1回、半年に1回)、特別清掃(エアコン、ワックスがけなど)の頻度を明記します。
- 清掃時間:作業を行う曜日と時間帯を明確にします。
- 清掃品質:ワックスがけの仕上がりや、窓ガラスの拭き跡など、求める品質レベルをできるだけ具体的に伝えます。
2. 報酬と支払い条件
- 料金体系:時間単価か、場所ごとの固定料金かを確認し、内訳を明確にします。
- 追加料金:特別な清掃や急な依頼が発生した場合の追加料金について、事前に確認しておきます。
- 支払方法・スケジュール:いつ、どのような方法で支払うかを明確に定めます。
3. 損害賠償と保険
- 破損・紛失の責任:清掃中にオフィスの備品や機密文書を破損・紛失した場合の責任範囲と、その対応について明記します。
- 保険加入の有無:万が一に備え、清掃業者が損害賠償保険に加入しているかを確認します。
4. 秘密保持義務とセキュリティ対策
- 秘密保持契約(NDA):清掃スタッフが業務中に知り得た情報(書類、PC画面、会話内容など)を外部に漏らさないよう、秘密保持義務を契約書に盛り込みます。
- 鍵の管理:清掃スタッフに鍵を預ける場合、鍵の取り扱いルール(施錠確認、紛失時の報告義務など)を定めます。
- スマートロックの導入:従来の物理的な鍵ではなく、ICカードやスマートフォン、暗証番号などで解錠できるスマートロックを導入する企業が増えています。これにより、鍵の紛失リスクをなくし、誰がいつ入退室したかをシステム上で記録・管理できます。
- キーボックスの活用:夜間清掃時だけ利用できるキーボックスを設置し、特定の暗証番号やQRコードなどで鍵を貸し出す方法も一般的です。これにより、鍵の持ち出しや紛失を防ぐことができます。
- 業務内容の明確化:「デスク上の書類には触れない」「鍵のかかったキャビネットには近づかない」など、清掃作業の範囲と禁止事項を細かく契約書に盛り込みます。
5. 契約期間と解約条件
- 契約期間:契約が自動更新されるか、更新する場合は何日前までに申し出る必要があるかを確認します。
- 解約条件:清掃の品質に問題があった場合など、途中解約が可能か、その際の条件や違約金について確認します。
日常的な注意点
契約を締結した後も、良好な関係を維持し、清掃業務を円滑に進めるためには、日々のコミュニケーションと準備が重要です。
1. コミュニケーション
- 担当者間の連絡体制:清掃業務に関する連絡窓口を社内で決め、清掃業者側の担当者と密に連携を取り合います。
- フィードバックの共有:清掃の仕上がりに対する要望や改善点があれば、その都度フィードバックを伝えます。
2. 事前準備
- 貴重品や機密情報の管理:清掃作業が行われる時間帯には、重要な書類やUSBメモリ、高価な備品などは施錠できる場所に保管するなど、セキュリティ対策を徹底します。
- クリーンデスクの徹底:従業員に退社時、机の上に書類や貴重品、USBメモリなどを残さないよう徹底させます。
- パソコンのロック:退社時には、パソコンの画面をロックすることを義務付けます。
- 障害物の除去:清掃しやすいように、床に置かれた荷物や椅子の配置を整えるなど、事前にオフィス内を片付けておきます。
- 清掃道具の確認:清掃業者によっては、清掃道具を自社で用意する場合もあるため、事前に確認し、必要なものを準備しておきます。
3. セキュリティ管理
- 入退室管理の徹底:清掃スタッフの入退室時間を記録し、誰がいつオフィスに入ったかを把握できるようにします。
- 入退室管理システムの導入:清掃スタッフが入退室する際に、IDカードやスマートフォンなどで認証を行うことで、日時と入退室者を記録します。これにより、万が一の際に「誰が」「いつ」入室したかを正確に追跡できます。
- 防犯カメラの設置:オフィスの入り口や重要なエリアに防犯カメラを設置し、夜間や休日の入退室状況を映像で記録します。
- 巡回警備の活用:警備会社と提携し、夜間や休日の清掃時間中に定期的な巡回や、緊急時の駆け付けを依頼することもあります。
- マナー教育:清掃スタッフが会社の従業員や訪問者と顔を合わせる機会がある場合、挨拶や基本的なマナーを業者に確認しておくと安心です。
これらの注意点を押さえることで、清掃業務をスムーズに委託でき、従業員が快適に働ける清潔なオフィス環境を維持することができます。信頼できる清掃業者を選定することはもちろん、契約書の内容を精査し、日々の運用ルールを従業員に徹底させることが重要です。
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