評価者面談のやり方

評価制度

自己評価提出後の上司面談(フィードバック面談)は、部下の成長と評価の納得感を高めるために非常に重要です。面談の進め方、反論への対処法、適切な時間配分、および留意すべき点を解説します。

面談を効果的に進めるためのステップ

面談は主に以下の3つのステップで構成されます。

1. 【導入】雰囲気作りと目的の確認

  • アイスブレイクと感謝の伝達: 緊張をほぐし、自己評価シートを丁寧に作成してくれたことへの感謝を伝えます。
  • 面談の目的の確認: 面談が「評価の言い渡し」ではなく、「評価の根拠を伝え、認識のズレを解消し、今後の成長につなげる対話の場である」ことを共有します。

2. 【本題】自己評価と他者評価のすり合わせ

  • 傾聴からスタート(自己評価の確認): まずは上司から評価を伝えるのではなく、「シートに書かれた内容について、特に伝えたいことや頑張ったことはありますか?」と問いかけ、部下の意見を最後まで聞く姿勢を見せます。
  • フィードバックの実施(他者評価の伝達):
    • 良い点から伝える: 成果や行動について、評価が高かった点、会社への貢献度が高かった点を、具体的な事実に基づいて伝えます。
    • 認識のズレを議論: 自己評価と上司評価で特にズレが生じている項目に焦点を当てます。「なぜその評価になったのか」を客観的なデータや行動事実を基に説明し、部下の解釈との違いを明確にします。
    • 改善点(期待)を伝える: 評価が低かった点や、次回に期待する行動については、人格を否定するのではなく、「改善の余地がある課題」として伝え、今後の具体的な行動について話し合います。
      • 例:「売上目標は未達だったが、新規顧客へのアプローチ件数は目標を上回った。次回はアプローチから契約に至るプロセス(能力)を改善していこう。」

3. 【クロージング】次への行動計画の設定

  • まとめと確認: 面談で話し合った内容、特に評価の根拠や次期に改善すべきポイントについて、部下が正しく理解できたかを確認します。
  • 次期目標に向けた合意形成: 評価を次期の目標設定にどう活かすか、具体的な行動計画サポート体制について合意します。
  • 激励: 最後に、今後の活躍への期待を込めた言葉で締めくくり、前向きな気持ちで面談を終えられるようにします。

納得してくれない場合の対処法

部下から評価に対する反論があったり、納得感が得られなかったりした場合の対応は、信頼関係を維持するために極めて重要です。

対処ステップ具体的な行動ポイント
1. 全てを受け止める部下の反論や不満を遮らずに最後まで聞きます。「そう感じていたんだね」「そう考えるのも無理はない」と、まずは感情に共感し、受け止めます。感情的な対立を避け、部下に「理解してもらえている」と感じさせることが重要です。
2. 事実の確認に徹する「なぜそう思うのか」を掘り下げ、反論の根拠となった具体的な事実や、上司の評価が依拠した事実を改めて共有します。感情論ではなく、事実ベースで議論します。「何をすれば評価が変わるか」という具体的な行動基準に議論を誘導します。
3. 評価を確定事項としない「この評価はあくまで現時点での評価であり、あなたの今後の成長を否定するものではない」と伝えます。その上で、「今回の評価は変わらないが、このズレを次期にどう活かしていくか」という未来志向の議論に切り替えます。評価を変えなくても、部下の成長への期待今後の支援を約束することで納得感を与えます。
4. 時間を空けて再調整その場で解決が難しい場合は、「一度お互いに頭を冷やし、事実を整理してから改めて話し合おう」と提案し、再面談の場を設けることも検討します。感情的な決着を避け、冷静に解決する機会を確保します。

適切な面談時間

面談の目的や内容によりますが、目安として30分から1時間程度を確保するのが適切です。

  • 30分: 評価内容の確認と次期目標設定の概要までを扱う場合に適しています。
  • 1時間: 部下の自己評価を丁寧に聞き、評価の根拠を深く説明し、具体的な課題解決策やキャリアプランまで踏み込んで議論する場合に推奨されます。

【ポイント】

  • 評価期間中に評価者と被評価者の間で日常的なコミュニケーション(1on1)が取れているほど、面談の時間は短縮でき、より本質的な議論に時間を割くことができます。

その他に気をつけるべき点

  1. 評価基準の再確認: 面談前に、上司自身が評価基準と、評価の根拠となる部下の行動事実を明確に整理しておきます。
  2. ダブルスタンダードの回避: 部下によって評価基準を柔軟に変えたり、他者評価との比較で評価を操作したりするような、ダブルスタンダード(二重基準)は絶対に避け、評価の一貫性を保ちます。
  3. 守秘義務の遵守: 面談で部下から聞いた個人的な情報や、他の社員の評価に関する情報などを面談外で漏らさないように細心の注意を払います。
  4. 記録の作成: 面談で話し合った内容、特にズレた認識の解消方法、次期の行動計画、約束した支援内容などを記録し、面談後に部下と共有して、認識違いがないように確認します。