Last Updated on 2025年8月12日 by 勝
職能資格等級表とは、職能給制度で使う「社員の能力や役割を段階的に整理した一覧表」のことです。社員の能力レベルを等級に分け、その等級ごとに求められる能力や役割を明文化したものです。
職能資格等級表
職能資格等級表の目的
・能力評価や昇格の基準を明確化する
・社員に「自分が何を身につければ昇格できるか」を理解させる
・公平・一貫性のある賃金運用を可能にする
職能資格等級の構成の基本例
等級 | 呼称 | 主な役割・責任 | 必要能力・スキル | 代表職位 | 昇格目安 |
---|---|---|---|---|---|
1級 | 初級 | 指示を受けて定型業務を遂行 | 基本的な業務知識・技能 | 一般職(新人) | 入社1〜3年 |
2級 | 中級 | 業務を自律的に遂行 | 専門知識の習得、問題解決力 | 一般職(中堅) | 3〜5年 |
3級 | 上級 | 後輩の指導・業務改善 | 指導力、チーム調整力 | 主任 | 5〜8年 |
4級 | 監督 | 部署の目標管理・戦略立案 | 高度な判断力、マネジメント力 | 係長・課長補佐 | 8〜12年 |
5級 | 管理 | 部署責任者として全体統括 | 経営的視点、部門戦略策定力 | 課長以上 | 12年以上 |
運用イメージ
人事評価の際、この等級表と照らし合わせて「現在の能力がどの等級に該当するか」を判断。
等級が上がると職能給(基本給部分)が昇給する。
多くの企業では、この等級表を社員にも公開し、昇格の道筋を見える化しています。
等級表作成の注意点
基準が抽象的すぎると評価が曖昧になり、不公平感が生まれる。
時代や事業環境の変化に合わせて定期的な見直しが必要。
実務上は「実力より年齢で昇格」という運用になりがちなので、評価制度と連動させることが重要。
「等級」と「号俸」の関係
職能資格制度は「等級」だけで運用されることは少なく、多くの場合は「号俸」の二段階構造で運用されています。給与額をきめ細かくコントロールするための方法です。
等級:社員の能力レベル・役割の大枠を示す階層(1級、2級…)
号(号俸):同じ等級内での細かな給与段階(1号、2号…)
イメージとしては、「等級=大きな段」、「号=その段の上に並んだ細かいステップ」という感じです。
多くの企業は「等級昇格=昇格試験や昇格評価が必要」、「号昇給=年次評価で判断」という運用をしています。
人件費シミュレーションをしながら等級間・号間の昇給幅を決めるのが重要です。
なぜ号を設定するのか
昇給の柔軟性
等級を頻繁に上げると人件費の変動が大きくなるため、まずは等級内で号を上げて調整。
評価結果を細かく反映
年間の評価が「優」「良」「可」などの場合、優は2号昇給、良は1号、可は据え置き…と反映できる。
給与表が安定する
長期的に人件費計画を立てやすくなる。
運用例(サンプル)
例:職能資格等級表と号俸表を組み合わせた場合
等級 | 号 | 月額(円) | 昇給幅(円) |
---|---|---|---|
2級 | 1号 | 220,000 | – |
2級 | 2号 | 224,000 | +4,000 |
2級 | 3号 | 228,000 | +4,000 |
2級 | 4号 | 232,000 | +4,000 |
3級 | 1号 | 240,000 | 等級昇格で+8,000 |
昇給の例
年度評価「A」→ 2号昇給(例:224,000円 → 232,000円)
年度評価「B」→ 1号昇給(例:224,000円 → 228,000円)
年度評価「C」→ 昇給なし
メリット・デメリット
メリット
等級を大きく変えなくても昇給できるため、昇格ハードルを維持できる。
評価制度との連動がしやすく、モチベーション管理に使える。
デメリット
制度が複雑になりやすい(給与表の管理負担)。
社員が「何年経てば何号になる」と年功的に考える傾向が出やすい。
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