Last Updated on 2024年10月12日 by 勝
基礎単価を正確に把握する
残業手当などの時間外割増賃金の計算は、基礎単価(1時間あたりの賃金)に割増率を掛けて計算します。
基礎単価の対象となる賃金の範囲について正確な把握が必要です。基本給だけではありません。
賃金が時給の場合は、時給単価がそのまま1時間あたりの賃金になります。
日給の場合は、日給を1日の所定労働時間数で割った額が1時間あたりの賃金になります。
賃金が月給の場合は、1ヶ月の賃金を「月平均所定労働時間数」で割って1時間あたりの賃金を求めます。割増賃金の計算の基礎になる1ヶ月の賃金は、給料計算の月毎に算出しなければなりません。
月平均所定労働時間数の計算式
(365日-1年間のその会社の休日数)×1日の所定労働時間で「年間所定労働時間」を算出します。この年間所定労働時間を12で割ったものが、月平均所定労働時間です。
会社の休日数は、カレンダーなどを用いて慎重に算出してください。また、閏年は、365ではなく366になるのでご注意下さい。
割増賃金の計算から除外する手当等
割増賃金の計算の基礎になる1ヶ月の給与は、労働の対価として支払われる給与の総額をいいますが、下記のものは除外しても良いことになっています。(労基法第37条5項、労基法施行規則第21条)下記は例示ではなく「限定列挙」なので拡大解釈はできません。
1.家族手当
2.別居手当
3.通勤手当
4.子女教育手当
5.住宅手当(平成11年10月から算定対象外になりました)
6.臨時に支払われた賃金
7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
逆に言うと、これら以外を除外することは認められません。
支払い基準によって扱いが違う手当等
上記に列記した手当等は、手当の名称とは関係なく、実態で判断しなければならないので、その手当等の算出方法によっては、給与に含めて計算しなければならない場合があります。
手当の名称だけで割増賃金計算から除外していると、割増賃金を少なく計算してしまう場合があります。早急にチェックして誤りがあれば是正が必要です。
家族手当
家族手当は、扶養家族数に応じて支給される手当をいうので、家族手当という名称で支給していても、扶養家族数に関係なく一律に支給されている場合は、割増賃金の計算の対象となる給与に該当します。
住宅手当
住宅手当は、住宅に要する費用に対応する金額を支給するものは割増賃金の計算対象になりませんが、定額で支給すると割増賃金の計算の対象となる給与に該当します。
割増賃金の計算から除外できる例
住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給するものは除外できます。(賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持ち家居住者にはローン月額の一定割合を支給など)
住宅に要する費用を段階的に区分し、費用の増加に応じて額を多く支給する場合は除外できます。(家賃5~10万円に対して3万円、10万円超に対して5万円など)
割増賃金の計算から除外できない例
住宅の形態ごとに一律一定額を支給するものは除外できません。(賃貸住宅居住者には〇万円、持ち家居住者には〇万円と定額で決めている)
住宅に要する費用以外の要素に応じて支給するものは除外できません。(扶養家族あり3万円、扶養家族なし1万円など)
全員に一律支給するものは除外できません。
通勤手当
通勤手当は、通勤距離や通勤にかかる費用に基づいて支給されるものは除外できますが、通勤距離等とは別の基準で支給されるものは、割増賃金の計算の対象となる給与に該当します。
通常は割増賃金の対象にならない手当等
臨時に支払われる賃金
ここでいう臨時に支払われる賃金とは、結婚手当や出産手当などのようなものをいいます。
関連記事:臨時の賃金、臨時に支払われる賃金とは
1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は、賞与が代表的なものです。賞与は割増賃金の対象となる給与には含まれません。
ただし、支給額があらかじめ確定しているものは別です。例えば、年俸制で毎月支払い部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分については割増賃金の対象になる給与に該当します。
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