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休職制度のあらまし

Last Updated on 2023年2月26日 by

休職制度とは

休職制度とは、病気などで出勤できない状態になったときも会社を辞めずに仕事を長期間休むことができる制度です。就業規則等に定められた期間は勤務を免除され、雇用関係が維持されます。

休職制度は法律に基づく制度ではありません。会社が任意に設計する福利厚生的な制度なので、休職制度が無くても法律違反ではありません。休職制度は会社が就業規則等において独自に制度の内容を決めることができます。

すでに休職制度を実施している会社が休職制度をやめたり内容を乏しくすることは就業規則の不利益変更になるので、簡単にはできません。

関連記事:就業規則の不利益変更

業務上のことが原因でケガや病気をしたとき、つまり労災による休業については、ここで説明している就業規則の定めによる扱いではなく、労働基準法等の法律に定められた扱いをしなければなりません。

休職制度を作る際のポイント

以下は休職制度を作る際のポイントです。現行の休職制度を改善したいときにも応用してください。制度を定めたら休職規程に反映します。規程例リンクは文末にあります。

休職事由を定める

どのような場合に休職できるかを定めます。

休職制度を使うケースとして一番多いのは、私傷病です。その他、議員などの公職への就任、出向、海外への留学、家族の介護などがあります。

会社によっては起訴休職を加えている場合もあります。従業員がが刑事事件の被疑者、被告人となった場合に休職を命じる規定です。

関連記事:起訴休職制度の意味とその必要性

休職できる期間を定める

休職期間も会社が自由に決めることができます。3ヶ月くらいから2年など様々です。また、多くの会社では勤続期間が長い人ほど長期間休めるような設計になっています。

私傷病で休んでいる間支給される傷病手当金の受給期間が、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月になっているので、私傷病を原因とする休職の場合はこれを目安にするのも一つの考え方です。

休職の手続きを定める

休職の手続きを定めなければなりません。

休職事由が発生すれば自動的に休職が成立するのではなく、使用者が休職を発令するか、休職の申出を承認する手続きを明確にしましょう。

休職中の賃金について定める

一般的には無給

休職中は労務の提供をしていませんので、使用者の責任による事由ではないので賃金は支給されません(一部支給する会社もあります)。支給しないのであれば誤解を生じないように規程に明記しておく必要があります。

私傷病による療養中であれば健康保険からの給付があります。

給与がゼロでも控除すべきものがある

休職で給与がゼロになっても社会保険料の本人負担分が発生します。年金機構への支払を減らすことができないので、一時的に会社が立て替えることになりますが、その分は本人に支払ってもらう必要があります。

休職期間終了後にまとめて請求すると金額が大きくなってかえって負担になってしまいます。毎月、請求書を発行して支払ってもらいましょう。

本人からの回収が難しい場合、会社が負担してやることがあるかもしれません。その場合は、会社が負担してあげた金額がその従業員に対する給与になります。その分の給与を支給したものとして社会保険や税金の計算をしなければなりません。

住民税も普通徴収に切り替えなければ差し引かなければなりません。休職期間が1ヶ月以上予定されるのであれば、普通徴収に切り替えるのが一般的です。

この本人負担分の取扱いは、事前に明確にし、説明する必要があります。

休職中の生活規制について

休職期間中の生活について何らかの義務も規定することもあります。例えば、休職期間中については、治療に専念する義務を課したり、一定期間ごとに症状の報告または診断書の提出を義務付ける等を定めた規定も見受けられます。

ただし、例えば、行動制限を付けられることで逆に治療に悪い影響がでたり、一進一退の状態のときに症状を細かに報告させることは本人にとって心理的負担が大きいものです。診断書も高額ですから、本人負担が度重なると負担が大きすぎます。このようなことは何でも厳しくすれば良いというものではありません。

関連記事:休業あるいは休職中の従業員に出勤してもらえるか

復職の手続きを定める

休職期間中に休職事由がなくなれば、つまり私傷病休職であれば傷病が治れば復職できます。復帰は特段の事情がなければ現職への復帰となります。

休職期間満了までに私傷病が治ったのであれば、それを確認して復職させることになります。この場合、初の休職事由と異なる事由を理由に復職を拒否することはできません。つまり、あらたに懸念される事情が生じても、従前の休職については復職を認め、その上であらたな事情に対して休職を命じるかどうかを検討することになります。

復職をさせるかどうかは、次の手順で行います。

1.主治医の診断書を提出させる
2.本人との面談をする
3.疑問がある場合は会社が別の医師を指定して診断を受けるように求める

以上で復職可能と判断した場合でも、いきなり通常勤務に就かせるのではなく、復帰プログラムを作成して、段階的に復帰させることも考慮しましょう。

関連記事:メンタル不調者への職場復帰支援

復職できない場合の対応を定める

治らないまま休職期間が満了すれば退職しなければならなくなります。

本来、雇用は通常の労務を提供できることが前提で成り立っています。予定された労務を提供できないということは雇用契約の打ち切り(解雇等)事由になります。

ただし、通常の労務を提供できないからといってすぐに解雇することは、社会通念上からも困難です。休職制度は、この即時解雇を避けて、一定の猶予期間をおく制度だとされています。

したがって、猶予期間が過ぎてもなお通常の業務を行えない状態であれば雇用契約の打ち切りもやむを得ないとされています。

会社としては休職期間が満了した場合は退職になる旨の規定を定めておき、例外なく適用する必要があります。人によって例外扱いをすることがあれば、せっかくの定めが実質的に適用されてないことを理由に満了即退職の規定が無効になってしまうこともあります。

なお、規程一般にいえることですが、定めてあっても裁判等になれば認められないこともあります。つまり、規定上は当然退職と定めていても、事情によっては否定される場合があることも頭にいれておく必要があります。

休職の繰り返しに対する対応を定める

休職期間が満了しても治っていなければ、その従業員は職を失うことになるため、治っていないのに無理に復帰を希望してくることがあります。治っていないのに無理に働けば傷病が悪化するおそれがあります。

また、制度上の問題としても、特に規定がなければ、長期間にわたって、何度も休職を繰り返すことが可能になります。

傷病でままならない従業員には気の毒ですが、福利厚生的な制度である以上、何らかの規制を定めるのが一般的です。

どのような決め方にするかは会社の考え方によります。例として、次のいずれか(複数でも可)が考えられます。

□ 復職後〇ヶ月(または〇年間)は再度の休職を認めない
□ 休職の期間は通算して〇年までとする
□ 休職の回数は通算して〇回までとする

規程や文書を整備する

以上のような点を決定し、その内容に沿って、就業規則を改定し、休職規程を制定します。

関連記事:休職|就業規則

関連記事:休職規程のサンプル

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