休職制度の留意点

Last Updated on 2020年10月4日 by

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休職制度とは

休職制度とは、会社を辞めずに仕事を長期間休むことができる制度です。

就業規則に定められた期間、勤務を免除され、雇用関係は維持されます。

休職制度は、法律に基づく制度ではありません。

会社が任意に設計する福利的な制度なので、制度の内容は、会社が就業規則等において独自に決めることができます。

業務上のことが原因でケガや病気をしたとき、つまり労災による休業については、ここで説明している就業規則の定めによる扱いではなく、労働基準法等の法律に定められた扱いをしなければなりません。

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休職制度を作る際の注意点

休職制度を作らないとしてもそれは会社の自由です。以下は休職制度を作る際の注意点です。現行の休職制度を改善したいときにも応用してください。

なお、具体例については、当サイトの規程サンプルをご参照ください。

関連記事:休職規程のサンプル

休職事由を定める

どのような場合に休職できるかを定めます。

休職制度を使うケースとして一番多いのは、私傷病です。その他、議員などの公職への就任、出向、海外への留学、家族の介護などがあります。

会社によっては起訴休職を加えている場合もあります。従業員がが刑事事件の被疑者、被告人となった場合に休職を命じる規定です。

関連記事:起訴休職について

休職できる期間を定める

休職期間も会社が自由に決めることができます。3ヶ月くらいから2年など様々です。また、多くの会社では勤続期間が長い人ほど長期間休めるような設計になっています。

休職の手続きを定める

休職の手続きを定めなければなりません。

休職事由が発生すれば自動的に休職が成立するのではなく、使用者が休職を発令するか、休職の申出を承認する手続きを規定しましょうお。

休職中の賃金について定める

一般的には無給

休職中は労務の提供をしていませんので、使用者の責任による事由ではないので賃金は支給されません(一部支給する会社もあります)。

私傷病による療養中であれば健康保険からの給付があります。

給与がゼロでも控除すべきものがある

休職で給与がゼロになっても社会保険料の本人負担分が発生します。年金機構への支払を減らすことができないので、一時的に会社が立て替えることになりますが、その分は本人に支払ってもらう必要があります。

休職期間終了後にまとめて請求すると金額が大きくなってかえって負担になってしまいます。毎月、請求書を発行して支払ってもらいましょう。

住民税も普通徴収に切り替えなければ差し引かなければなりません。休職期間が1ヶ月以上予定されるのであれば、普通徴収に切り替えるのが一般的です。

この本人負担分の取扱いは、事前に明確にし、説明する必要があります。

休職中の生活を規制について

休職期間中の付随義務も規定することもあります。

例えば、休職期間中については、旅行などを届け出制にするなど、治療に専念する義務を課したり、一定期間ごとに症状の報告または診断書の提出を義務付ける等を定めた規定も見受けられます。

ただし、例えば、行動制限を付けられることで逆に治療に悪い影響がでたり、一進一退の状態のときに症状を細かに報告させることは本人にとって心理的負担が大きいものです。

診断書も高額ですから、本人負担が度重なると負担が大きすぎます。このようなことは何でも厳しくすれば良いというものではありません。

復職の手続きを定める

休職期間中に休職事由がなくなれば、つまり私傷病休職であれば傷病が治れば復職できます。復帰は特段の事情がなければ現職への復帰となります。

休職期間満了までに私傷病が治ったのであれば、それを確認して復職させることになります。

復職をさせるかどうかは、次の手順で行います。

1.主治医の診断書を提出させる
2.本人との面談をする
3.疑問がある場合は会社が別の医師を指定して診断を受けるように求める

以上で復職可能と判断した場合でも、いきなり通常勤務に就かせるのではなく、復帰プログラムを作成して、段階的に復帰させることも考慮しましょう。

関連記事:メンタル不調者への職場復帰支援

復職できない場合の対応を定める

治らないまま休職期間が満了すれば退職しなければならなくなります。

本来、雇用は通常の労務を提供できることが前提で成り立っています。予定された労務を提供できないということは雇用契約の打ち切り(解雇等)事由になります。

ただし、通常の労務を提供できないからといってすぐに解雇することは、社会通念上からも困難です。休職制度は、この即時解雇を避けて、一定の猶予期間をおく制度だとされています。

したがって、猶予期間が過ぎてもなお通常の業務を行えない状態であれば雇用契約の打ち切りもやむを得ないとされています。

休職の繰り返しに対する対応を定める

休職期間が満了しても治っていなければ、その従業員は職を失うことになるため、治っていないのに無理に復帰を希望してくることがあります。治っていないのに無理に働けば傷病が悪化するおそれがあります。

また、制度上の問題としても、特に規定がなければ、長期間にわたって、何度も休職を繰り返すことが可能になります。

傷病でままならない従業員には気の毒ですが、福利厚生的な制度である以上、何らかの規制を定めるのが一般的です。

どのような決め方にするかは会社の考え方によります。例として、次のいずれか(複数でも可)が考えられます。
・復職後〇ヶ月(または〇年間)は再度の休職を認めない
・休職の期間は通算して〇年までとする
・休職の回数は通算して〇回までとする

規程を整備する

以上のような点を決定し、就業規則等の規程に落とし込み、就業規則の改定、及び上述の「休職規程」制定の手続きをとります。

関連記事:休職|就業規則

休職者への説明文書を作る

文書例:休職者に渡す説明文書の例

パート労働者等の扱い

正社員に対する休職制度がある場合、パート労働者等に対して、一律的にその制度を適用しないという扱いはできません。

同一労働同一賃金ガイドライン案(平成28年12月20日)

病気休職の扱いは、無期雇用パートタイム労働者には、無期雇用フルタイム労働者と同一の付与をしなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約の残存期間を踏まえて、付与をしなければならない。

【例】

A社においては、契約期間が1年である有期雇用労働者であるXに対し、病気休職の期間は契約期間の終了日までとしている。

裁判例1

□ 期間雇用社員が多く採用されており、業務において不可欠の存在になっているとしても、その職務内容は、役割の違いや責任の軽重などから、正社員と自ずと異なる。職務内容の変更や、人事異動の有無についても異なる。
□ 期間契約社員については、反復継続して雇用契約が更新されることで、契約更新の期待に合理的な理由が認められる場合であっても
□ 使用者においては、休職制度によって長期的な雇用を図るべき要請は必ずしも高くない。

ということで、休職制度を期間契約社員に適用しないのは、不合理とは言えないという判決があります。

裁判例2

□ 病気休暇は、労働者の健康保持のために、私傷病により勤務できなくなったときに、療養に専念させるための制度である。
□ 長期雇用を前提としない時給制契約社員に対して、病気休暇を付与する場合、正社員と差異があることについては、不合理と言えない場合もある。
□ しかし、契約更新を重ねて全体としての勤務期間がどれだけ長期になっても、全く有給の病気休暇が付与されないことは、諸事情を考慮しても合理的理由があるとは言えない。

この裁判は、似たような状況ですが、認めるという判決です。

裁判は、細かな状況の違いによって判決が異なる場合があります。判例の要約だけをみて判断するのは危険です。