Last Updated on 2023年11月8日 by 勝
就業規則の規定
一般的な就業規則には、休職がいつどのように始まるかが定められています。
規定例:従業員が次の各号に該当したとき、会社は所定の期間、休職を命じることがある。
このような規定の場合には、就業規則に定められた一定の条件を満たせば、(従業員の意向にかかわらず)会社は休職を命令できます。
ただし、例えば、私傷病を理由に休職を命じる場合、根拠なく、会社の一方的な主観で休職を命じることはできません。就業規則の規定と、事実にもとづいて判断しなければなりません。
以下、私傷病に対して休業を命じる場合について解説します。
休業させる条件
欠勤などの事実
仮に、就業規則に「私傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき 」などと規定されている場合は、欠勤が1か月を超えた日から休職を命じることができます。
逆に言えば、この規定では、欠勤が1か月を超えなければ休職命令を出すことができません。
就業規則に「精神的疾患あるいは身体の疾患により、通常の労務の提供ができず、その回復に1か月以上の期間を要すると見込まれるとき」などと規定されている場合は、欠勤がなくても休職命令を出せる可能性があります。この場合は、医師の診断書が重要になります。
医師の診断書
本人から休職の相談があったときは、診断書の提出を求めます。本人からの意思表示がなくても、欠勤がちであるなど、あきらかに体調不調の状態が続いているようであれば、上司が面談して診断書を提出するように求めます。
就業規則に「欠勤が2週間に及ぶときは医師による診断書を提出しなければならない」などの記載があればそれが根拠になります。連続して2週間にならない場合、あるいは欠勤しない場合はこれに当たりませんが、必要を認めたときは任意での提出を求めることになります。
診断書が提出された場合は、その診断書に、「何日の療養を要する」などの記載があれば、休職を検討する根拠になります。むしろ、そうした記載がない診断書は休職の判断材料にならないので、取り直しを指示する必要があります。
なお、休職期間は、診断書に記載された療養期間にしなければならないわけではありません。療養が長引く可能性がある場合は、就業規則上休職が可能な期間の上限で休職を命じたうえで、途中で復職が可能になったときは復職させるという対応がよいでしょう。
また、診断書に記載された病名によって、今後の対応を考えることができます。
診断書を出さない場合
傷病によっては、傷病の影響で断続的な欠勤や、度重なる職場離脱、職務怠慢などの問題行動があっても、就業規則の休職条件に該当しないという場合があります。
そのようなケースでは、上司が面談して診断書の提出を求めても提出しないことがあります。本人が休職したくないと思っている場合です。
本人が休職したくないとしても、客観的にみて勤務を続けさせることが本人や職場、取引先の安全に影響を及ぼす恐れがあると判断されるのであれば、そのままにしておくわけにはいきません。
こういう場合は、職場の上司や同僚から事情聴取し、先の診断書、本人の希望、職場での様子、などを産業医に報告して意見をもらいます。
特に、産業医の見解は重要で、産業医から休職が必要だという勧告があったときは、就業規則に該当しなくても、あるいは主治医の診断書がないとしても、休職命令が妥当になるとされています。
労働安全衛生法第13条5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
このように、いろいろな状況証拠による判断、あるいは産業医の勧告にもとづいて休業させることは可能ですが、無理に休職させてもますますトラブルが拡大することもあるので、やはり納得してもらえるように十分に説明しながら進めましょう。
また、体調不良であっても、他の業務で就業させることが可能で、従業員も希望している場合は、休職を命じるのではなく、就業が可能な他の業務での就業を検討しなければなりません。
別の方法としては、問題行動について就業規則に照らして指導するべきところは指導し、改まらない場合は処分を検討するなど、休職にこだわらない問題解決も検討しましょう。
命令を出す手順
休職命令書の交付
上記の手順をふんだうえで、休職命令書を交付して休職を命じることになります。
休職命令書には、休職事由と、休職開始日と休職終了日を明記します。
書式:休職命令書のサンプル
休職命令書に記載される事項は、必要最小限の事項になるので、詳細については、面談して説明文書にもとづいて説明する必要があります。