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採用の事務

反社会的勢力の排除について

Last Updated on 2023年10月22日 by

基本的対応

政府が平成19年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表し、日本経済団体連合会、全国銀行協会、日本証券業協会等の団体が、相次いで反社会的勢力排除の方針を明確化しました。こうした状況をふまえ、企業の社会的責任や企業防衛の観点から、企業においても反社会的勢力排除の姿勢を示し、反社会的勢力を採用しない、反社会的勢力になった従業員を解雇する、反社会的勢力との交際を禁止するなどの毅然とした対応が求められています。

採用時の対応

誓約書の提出

採用時に、採用内定者から、反社会的勢力関係者でないこと、将来も反社会的勢力に関与しないことを誓約する旨の誓約書を提出させる必要があります。 

関連記事:反社会的勢力の排除に関する誓約書

身元確認書類の提出

応募者から、反社会的勢力と関わりの有無を記した身元確認書類などを提出させることもあります。

このような書類は、個人情報保護等の観点から職業安定法5条の4に基く厚生労働省告示において、「企業が、求職者の社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想・信条に関する個人情報を収集することを原則として禁止」していることに留意して慎重に扱わなければなりません。

ただし、反社会的勢力からは自己の意思で脱退することができることから、「社会的身分」には該当しないとされ、また「思想・信条」とは思想、信念、そのほか人の内心におけるものの考え方を意味するので、反社会的勢力であることは「思想・信条」にも該当しないとされるのが通説です。詳細については専門家にご相談ください。

就業規則の整備

反社会的勢力との関係を理由に懲戒処分を行うには就業規則に規定がなければなりません。

(定義)第○条 本規則において、反社会的勢力とは、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなったときから5年を経過しないもの、暴力団準構成員、暴力団関係企業・団体、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ等、特殊知能暴力集団、その他これらに準じるものをいう。

(反社会勢力との関係禁止)第○条 
当社の従業員は反社会的勢力と一切の関係をもってはならない。違反した従業員については、本規則及び懲戒規程に基づいて懲戒解雇その他の懲戒処分に処するものとする。

判明したときの対応

採用時から反社会的勢力であった場合

いかに優秀な人材であるとしても、反社会的勢力であることが判明した従業員については、直ちに雇用契約の解除を検討しなければなりません。

反社会的勢力でない旨誓約書を提出しているにもかかわらず、採用時から反社会的勢力であった場合は、経歴詐称として懲戒解雇をすることが可能だと考えられます。また、就業規則の定めた服務規程違反として懲戒解雇することも可能だと考えられます。実務的には両方の違反ということになるでしょう。

採用後に反社会的勢力になっていた場合

直ちに雇用契約の解除を検討すべきことは採用時からそうであった場合と同様ですが、懲戒解雇処分の処分理由が少し違ってきます。

採用後に反社会的勢力となった場合は、採用時の経歴詐称を理由とする懲戒解雇はできないので、就業規則に社会的勢力を排除する旨の条項によって、服務規程違反により懲戒解雇することが可能だと考えられます。

誓約書に反したことも懲戒解雇の大きな理由にすることができるでしょう。

反社会的勢力との関係を断ち切ってから5年以上たっている者についても、従業員である在籍期間中に関係がありその事実を秘匿してきたのであれば、その期間について就業規則違反及び誓約書違反の状態にあったことから何らかの懲戒処分が可能と考えられます。

反社会的勢力と交際していた場合

企業の社会的責任や企業防衛の観点からは、反社会的勢力とは一切関係をもつべきではありません。季節の贈答、ゴルフ、会食等の接触も許されるべきではありません。

だだし、交際等については、1度限りだったのか継続したのか、やむを得ない理由があったのか、避けようと思えば避けられたのか、事情によって処分の軽重があってしかるべきでしょう。その態様に応じて処分し、反社会的勢力との関係を断ち切らせるところに重点を置くべきです。

処分の手続き

以上のように就業規則の整備は極めて重要です。また、誓約書も極めて重要なので、新たに採用するものだけでなく、古くからの従業員で未だ誓約書を提出させていない人がいれば、今からでも提出を求めるべきです。

そして、懲戒処分については、単に理由があればできるというものではなく、懲戒処分にいたる手続き面が大変重要です。手続きの瑕疵で懲戒処分が無効にならないように十分注意する必要があります。

関連記事:懲戒処分をするときの注意点

懲戒処分にもいろいろあります。懲戒解雇相当であっても状況や程度によって、諭旨解雇、自主退職の勧奨なども考えられます。

注意

このような問題を会社単独で対応することには危険がともなうことがあります。実際の対応にあたっては、就業規則や誓約書があるからと安易に考えずに、処分の前に地域の警察、暴力追放運動推進センター、弁護士などに相談しながら、慎重に対応することをお勧めします。


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